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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第3章 ―ラウズ大陸動乱編―
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第五拾六話 鳥獣王プテラス

 リンドバウムとその同盟軍は、カリギュラス軍の本拠ザンバードの街を包囲していた。そして、街門や外壁などは、全て魔導砲撃により破壊して丸裸同然に追い込んでいた。ザンバード城は入り江の上に建っていて、背面が崖となっている。カリギュラスに逃げ場はなくなっていた。


 そのような状況であるため、ベルド皇帝はカイザーブレードを伴なって上陸し、艦隊を旗艦カラシンの艦長に委ねた。

 上陸したベルドはユーヤと合流して、全軍による会議に出席する。


「ザンバード城への進入路は既に確保済みです。あとは攻め入るのみなのですが、厄介事が増えそうです。」


 ヨーンは獣騎士団とベルド艦隊の遭遇した鳥人魔族について語り出した。どれも撃退には成功しているが、捕虜は得られず情報がない事、捕まえようとしても皆自害してしまう事などだ。


「これらの状況を鑑みると、間違いなく皇子は魔王軍と繋がっています。これは同盟軍としては看過出来る事ではありません。故に今回最も優先すべき事項は、カリギュラス皇子及びその周辺の側近の捕縛であります。」


 鳥人魔族はあれから現れていない。かなりの数を倒している為、恐らく城内部にカリギュラスと共に立て籠もっていると思われる。


「それ故に、影の軍団並びにヴァルキュリア諜報大隊による逃走経路の調査を先に行いました。その結果、入り江に城からの抜け道を発見しました。また、他にも街の中にも幾つか発見しましたが、街の中の物は全て壊しました。」


 会議を行っているテント内がどよめく。


「何故入り江の抜け道は残したのだ?」


 ベルド皇帝が皆を代表する形でヨーンに質問した。


「はい、単純に経路を絞る事によって捕縛の確率を上げるためであります。ここしか逃げ場が無いのであれば、必ずここを通る事となります。しかし、だからと言って単純にここに待ち伏せの兵を置く気はありません。」


 更に会場がどよめいた。


「この入り江の経路から逆に、ダンジョン等の探索に慣れているレギオン軍に攻め入ってもらいます。そして、他の部隊は正面から攻め入り、そちらに追い込もうかと思います。」


「ふむ。リンドバウム参謀司令ヨーンよ。見事だ。元帝国軍人である貴公を我は誇りに思う。」


 誰ともなく拍手がヨーンに送られた。ヨーンは多少紅潮している。

 そしてヨーンは軽く咳払いをした。


「ただ、この作戦には穴があります。それは、敵側に鳥人魔族が居ると云う事です。彼らが背負うなりしてカリギュラス殿を連れ去る可能性は否めません。なので、鳥人魔族に関してはなるべく殲滅して頂きたいと思います。」


 クーガーは頷くと口を開いた。


「我ら獣人族は、連中に対し2000年以上の因縁がある。異論はない。」


 ライガも同意している。二人の瞳は闘志で燃えているようである。


「では、これより作戦に移ります。各々方の健闘を祈ります。」


 そう言うとヨーンは一礼して着席した。そしてユーヤに視線を向けた。しかしユーヤは首を横に振ると、ベルド皇帝に締めの言葉を譲った。あくまでリンドバウムは皇帝の手助けをしていると云う態度を示したかったのであろう。


「ふふ、アレクソラス十三世閣下は、そんなに奥ゆかしいお方であったかな?まあ良い。」


 そう言うとベルツ帝国皇帝ベルドは立ち上がって、テント内の皆の顔をグルリと見渡した。そして目を閉じる。


「これだけの英雄を揃えた合戦を我が国で行い、そしてそれを見て来た。これはわが生涯に於いて最高の出来事であったと思う。」


 ベルドはゆっくりと目を開ける。ゼフィールドとロンが泣いていた。ベルドはそれに気付いて微笑した。


「この合戦の後に我は引退を考えておる。」


 カイザーブレード以外の出席者達が驚きざわめいた。ユーヤは思わず立ち上がってしまった。


「リンドバウムの勇者王、アレクソラス十三世よ。お主にこの国を譲る。その証たる玉璽は、既に貴公の右腕、元我が国の士官であったヨーン・S・ロンバルト参謀司令殿に預けてある。」


 ユーヤがヨーンの方を振り返ると、ヨーンは無言で懐から金印を取り出した。そしてユーヤに差し出す。


「な、これは…しかし!」


「黙って受け取ってくれ。神託のあった時より考えていた事だ。それ故にカリギュラスが暴走した事は否定出来ん。だが、既にここまで来てしまっているのだ。そして貴公はこの国の動乱を見事に平定しようとしている。なれば尚更その玉璽を以って貴国への賠償とせねばなるまい?」


 会場に沈黙が訪れた。ユーヤはヨーンの手の中の金印を見つめた。


 ―戦神め。あいつのシナリオの上で踊るのは癪だ。しかし、こんな状況では突っぱねられないじゃないか。畜生…。


「頼む。勇者王。」


 そう言ったベルドの瞳には、どこか悲壮感が漂っていた。


「…わかりました。新生リンドバウム連合国国主ユーヤ・クノン・アレクソラス・ゾル・サーティンは、確かにベルツ帝国より玉璽を賜り、この国の再建に努めます。」


 そう言うと、ユーヤはヨーンの手から玉璽を受け取った。ヨーンは深々と頭を下げ「陛下。申し訳ありません。騙すような真似をして…。」と詫びた。


「まったくベルド皇帝閣下。ヨーンに既に渡されていたのでは、突っ返すに突っ返せないではないですか。してやられましたよ。」


 その言葉を聞いたベルドは二ヤリと笑った。


「そうであろう、そうであろう。何しろ国の最高権威を示す品を既に最側近たる者が預かっているのにも関わらず、それを固辞なぞした日には、泥棒め!と罵ってやろうと思っておったわ!わっはっはっ!!」


 ―危ねー…。セーフだよセーフ。


 三人の遣り取りを茫然として皆は見守っていたが、ゼフィールドとロンだけは、真剣な面持ちで事の次第を見守っていた。そして二人は手を叩き「リンドバウム万歳!」と涙を流しながら叫んだ。それを皮切りに会議場のテントは拍手に揺れた。


「これで我の思い残す事はなくなった。ただ、隠居しても口は出すかもしれんがよろしく頼むぞ。」


「まったく、面倒くさい御仁だ!」


 二人が握手をしながら笑っているのを見て、リンドバウムの重臣達とカイザーブレードの二人は涙を溢れさせていた。カスバドは「これは面白い事になったわい。リンドバウムの魔導研究はうちを追い越していたが、そこにわしが参入出来ると云う事じゃな!ヒャッホー♪」と、ほくそ笑んでいた。


 ユーヤの手をとったまま、ベルドは皆に向き直り宣言する。


「これより我々は、新生リンドバウム連合国に仇成すカリギュラス元帝国第二皇子の捕縛に向かう!よいか!決して奴を逃すな!そして、この元皇帝ベルドの前に奴を跪かせよ!!」


「「「おお!!!」」」





 その日の午後、選抜された精鋭達とユーヤ等リンドバウム重臣達、元帝国皇帝ベルド率いるカイザーブレード、そして皇国四氏族とテンゴウ達がザンバード城に雪崩れ込んだ。


 既に城壁を失っているザンバード城に、彼等を止める手立てはなく、鳥人魔族と元帝国残党が壁となるしかなかった。


 先頭ではテンゴウ、ブラン、エレーナ、ロイエル、クーガー、ライガが道を開き、ジード、マリオン、サクヤ、ソーウン等が援護をした。


 エテリナはメルティ等を連れて残兵の確認と場内の探索を行う。

 ユーヤは、ベルドとカイザーブレード等とで切り開かれた中心を突き進んでいた。


 大広間まで来ると、そこにはカリギュラスとゼハルト、そして近習の者達と鳥人魔族が待っていた。


「ようこそ、リンドバウムの面々と売国奴達よ。」


 そう告げるカリギュラスの瞳の色は、灰色に見えた。それを見たベルドは哀しい顔をしていた。

 カリギュラスが軽く手を振ると、魔族達が一行に襲いかかって来た。


 しかし、テンゴウ、ゼフィールド、エレーナの三剣聖の前に彼等は無力だった。次々にその黒い羽根が舞って行く。


 カリギュラスの近習の者達が「ひ、ひぃっ!」と声にならない声をあげて後ずさりしたのを視止めたゼハルトは「今更何処へ行くつもりですか?皆の衆?」と告げると、彼の右腕は膨れ上がり、ゴワゴワと黒い羽毛に包まれていき、その指先からは凶悪な鋭さを持った爪が生える。


 近習達は首を横に振りながら、更に悲鳴をあげていた。ゼハルトは「ふん。」とその鷲鼻を鳴らしたかと思ったその刹那、爪をヒュンと目に見えるか見えないかの速さで振った。すると、近習達はスパスパと細切れになって無残な姿と化していた。


「貴様か?我が息子を籠絡した者は?何者か答えよ。」


 そうベルドが告げると、二ヤリとゼハルトは凶悪な表情をして応える。


「我は魔王軍七大幹部の一人、鳥獣王プテラス。」


 メリメリと音をたて、ゼハルトの顔が崩れると、その顔には大きなクチバシが突き出て鳥?なのであろうか、それに近い顔が顕わとなった。しかし頭頂部にしか羽毛は見えない。

 そして今度はバリバリと音を立てて服と胴の皮が破けると、背中と下腹部より下には羽毛が生え、ツルツルのお腹が現れる。


「名前からして一応プテラノドンの魔族なのか?」


 と、ユーヤが呟く。その言葉を聞いたプテラスは少し嬉しげに答えた。


「プテラノドンは我が祖先!勇者王よ、なんと博識な事か。そして我こそが鳥人魔族の長であります。」


 まるで臣下の礼でもとるかのようなプテラスの動作に、魔族と切り結んでいた三剣聖もポカーンとした顔をしていた。


「勇者王よ、そのプテラ…なんとかとは何なのだ?」


 ベルドがユーヤに小声で質問をしてきた。


「え、ああ、鳥の祖先である恐竜と云う生き物の中でも、より鳥に近づいた種族ですかね。確か。」

「ほうほう、キョウリュウとな?竜と云うからにはドラゴン族なのかそれは?」

「あー…似てるかもしれないですね。」


 戦場であるにも係わらず、皆もこの王族二人の遣り取りを聞き入っている。既に皇国軍も帝国軍も、リンドバウム流に慣れて来てしまっているのかも知れない。


「と云うか、陛下!七大幹部ですよ!ツッコむならそっちなのでは?!」

「あ、そっか。そうだね。」


 ブランに言われて皆も「そうだよね。」と変な納得をしている。

 何処か置いてけぼりを喰らった形となったプテラスのコメカミには青筋が見える。


「貴方がたは真面目に殺し合う気はないのですか!?」


 プテラスさんは怒っているようだ。


「すまんすまん。で、プテラスよ、何故貴様がこのベルツ帝国でも奥地とも謂えるザンバードに居るのだ。」


 ユーヤの問いに少し気をよくしたプテラスさんは、ペラペラと語ってくれるようだ。


「よく聞いてくださいました。我は十五年程前に、皇国の要請によって我が軍と熾烈な攻防をしていた帝国軍の陣に忍び入りまして、このゼハルトと云う者と入れ替わりました。あまり美味しくはなかったんですが、まあこれは身分的に使えるからとそのままカリギュラス殿の側近として影で操る事にしたのですよ。」


 プテラスは得意そうな表情で前肢を振るっている。そしてニターと笑いながら言葉を続けた。


「しかしこのカリギュラスと云う御仁を完全に操れるようになるのには苦労しましたよ。何せ父である皇帝閣下に対する忠義が高かったものでね。仕方がないので目の前で奥方やらお子さんやらをバリバリと食べて精神をぶち壊して差し上げて、今のようになった次第なのですよ。」


「な、何だと!?孫娘のエナを食ったのか?」


 皇帝の顔色が青へと変わり、やがて赤くなった。それをプテラスは楽しげに眺めている。


「やはり若い肉体は引き締まっていて非常に美味でしたよ。ゼハルトとは大違いに。」


 プテラスはカラカラと笑い声をあげ、翼?腕?その前肢を振った。ブオッと突風が大広間に吹き荒れた。


 ベルドはプテラスを睨み付けながら、風をものともせずに前へ突き進もうとしていた。

途中から調子が乗って

気付けば4千文字越えていました。


編集して次の話数にいくらか飛ばそうかとも思ったのですが

そのままにしました。


読み辛かったら、すみません。


※同時上映LINDBAUM's Encyclopedia NO.2は

9時から公開だよ。


良い子のみんな、待っててね!

(すいません。東映まんが祭りのノリです。生温かく笑ってください。)

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