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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第1章 ―転生・ガロウ獣王国編―
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第五話 国境の魔族

描き終えた後、何度もそれまでの話しを読み直して整合性を確かめていたりする為、気付くとチョクチョク修正してたりします。これを期日までにやっている作家さんや、出版社の人って凄いなぁと思います。

 東のジュディーアル聖王国との国境付近に魔族の襲来が報告されたその日、更にその南にあり、魔王の治めるオーガ大陸に隣接する一国、ガロウ獣王国に大規模な魔王軍の襲来があったとの報せも届いた。


 ジュディーアル聖王国からは、国境の魔族の掃討依頼が来ており、聖王国自体はガロウ獣王国の援護に注力したいとの事だ。


「膠着していた筈の魔王防衛線が、いつの間にか破られていたわけか。」


「はい。この二百年程は前線は停滞していたのですが、遂に破られたようです。」


 それ故の勇者召喚だったのだろう。チラっとユーヤはマリオンを見る。無言で彼女は頷いた。


 数年前に退役していたヒューズ参謀を呼び戻し、ヒッター、ジード、エテリナ、ウテナ、ジードの副官であるブラン、そして大隊級隊長職数名とベルヌ宰相とフェルナンドを含む文官数名で軍会議は執り行われていた。


 リンドバウム王国は戦線から最も遠い国家である為に、他国に比べて情報が遅れていた。


「ウテナ、影を引き連れてガロウ獣王国に赴き情報を集めてくれ。人選は任せる。」


「御意。任されました。」


 ウテナはちょっと嬉しそうな顔をしながら、スっと立ち上がると、その気配を消した。ウテナを良く知らない者達は、一瞬ギョっとした表情をしていた。


 ベルヌ宰相はうんうんと頷いている。彼はウテナのファンの一人なのだ。


 ガロウ獣王国は獣人王クーガー王が治める国家で、獣人達が人口の大半を占める。その一人一人の戦闘能力は通常の騎士三人分とも言われている。クーガー王に至っては、噂では騎士五人でも敵わないらしい。


 対して、ジュディーアル聖王国は法王又は聖女と呼ばれる神職が国を治めている。その戦力の大半は僧兵である。現在は聖女ハンナがその国政のトップとなっている。


「取り敢えず、依頼どおりに我々は国境付近の魔族を叩こう。こいつらの狙いがリンドバウムなのか聖王国なのかはまだわからん。ま、聖王国に対する搖動と見て間違いはないだろうけどな。」


 ヒューズ参謀をユーヤが見やると、彼は瞑目しながら頷いた。


 ヒューズ・ロンバルト侯爵は六十を過ぎた白髪のナイスミドルだ。


 前王の時代の全盛期に於いては、その名を知られた名軍師であった。しかし、アレクソラス王の二人の兄が亡くなってから、前王は活力を失い、それを見ているのが忍びなくなった彼は、王宮騎士団を去った。


 そんな彼をユーヤは直接訪ね、頭を下げた。


 初めは固辞していたヒューズだったが、論じ合う内に若い頃の嘗てのアレクソラス12世をユーヤに見て「仕方がないですな。この老骨でお役に立つのでしたら…。」と、王宮に帰って来てくれたのだった。


「若、この度の戦は新生リンドバウム王宮騎士団初の戦となります。しかし、気負い過ぎぬように十分な用意をした上で御出立召されよ。何事も焦れば負けでございます。」


 ヒューズの言葉は、アレクソラス王だけに向けたものではない。この場にいる、若き次代の騎士達に向けたものだ。


 王宮騎士団団長であるジードはそれを汲み、肝に命じるように立ち上がると、ヒューズに対し右手を胸の前で屈して敬礼をした。


 続いてその場にいた全員が立ち上がり、やはりヒューズに対して敬礼をした。


 ユーヤもまた、自然に立ち上がり敬礼をする。それを見たヒューズは焦ったように「若までこの老骨に対して敬礼なぞ、お止めください。」と苦笑いをしながら立ち上がった。


 全員がそれぞれの顔を見る。


「どうやら皆の思いは一つになったようだな。それじゃあ、各々役割の下に準備に入ってくれ。これはまだ前哨戦にも入らない。どいつもこいつも死ぬんじゃないぞ!!」


「「「おう!!!」」」


 ユーヤの掛け声に、その場の者達全てが応える。


 その横で、優雅にマリオンはお茶を啜っていた。「紅茶も熱すぎるのはあんまり好きじゃないのよ。私、猫舌だから。」とか何とか呟いていたらしい。









 いつもの王宮テラス、ユーヤとマリオンの前にはヒューズがいる。


「若、この度の魔族退治がお済になりましたら、そのまま獣王国に行かれるおつもりですか?」


「ええ、よくお気付きになりましたね。流石です。」


 ヒューズに対して一目以上置いているユーヤは、他の者達への態度とは全く違った態度で接している。


「ウテナ殿と申しましたか?今彼女を国境ではなく、獣王国にやったのが不自然に思いましたもので。」


「今、このラウズ大陸の五国家のうち、一辺でも瓦解する事だけは避けたいと思ったんです。」


 ―ふむ。とヒューズは瞑目した。長い長い沈黙の後に口を開いた。


「若、いっその事ラウズ大陸を統一しませぬか?」


 ぶっ!と、思わずユーヤはお茶を吹き出した。その後ろに立って居たヒッターも思わず目を見開いた。因みに騎士団の準備が忙しい為、今日はエテリナはいない。


 マリオンは涼しい顔をしている。


「この数日騎士団の練度やら街の復興具合やらを見させてもらっていたんですが、何というか前王の全盛期以上の活気があるんですよ。」


「いやしかし、復興はまだ完全とは言えないと自分では思っているのですが?それに騎士達とて、経験は不十分かと思います。」


 目を見開きながら、ユーヤは反論した。しかし、ヒューズの目は鋭く光りユーヤを見返す。


「若、時代が動き始めているのです。それ故に勇者と女神様は降臨した。そうは思いませんか?」


 ―それは、自分も確信しているし、マリっぺも頷いていた。しかし、大陸統一なんて話しが大き過ぎる…。


「それに、まだ一度もお手並みは拝見していませんが、実の処我が国の最高戦力は、若と姫様で間違いないと思っているのですが。」


 暫くの沈黙が流れた。


「大陸統一ねぇ…。これは流石に女神様も戦神様もきっと見越してなかったわ。」


 マリオンが呟いた。そして、口元を緩ませている。


 ユーヤの中にある戦神サガの分け御魂は同意を示すかのように鳴動している。どうやら、神達の同意も得られているようだった。


 ユーヤの瞳の色が決意に染まるのを見て、ヒューズは口を開いた。


「この老骨、年甲斐もなくもうひと花咲かせたくなりました。若、何卒よろしくお願い申し上げます。」


 ヒューズは立ち上がると大きく一礼をした。ユーヤも立ち上がり、右手を差し出す。


 お互いに瞳を見合わせると、固く固く手を握り合わせた。









 国境付近の山脈。何処から集まって来るのか、続々と魔族が集結してきている。その先にある聖王国はどうなっているのだろうか。


 数は五百。対する騎士団は総勢三千。魔族の能力を考えれば、これで互角と謂ったところだ。


 鶴翼の隊形で軍を進める。


 右はユーヤ率いるガンプ隊を主力とした部隊、左はマリオン率いるクレィル隊を主力とした部隊。そして本来であれば王を配する中央の陣は、ヒューズが率いている。


 ―出来る限り引き付けよ。


 ヒューズの指示が飛ぶ。既に相手方は遠くから火球や矢を放っているが、ここは山の中、森林地帯。下手な鉄砲は当たらない。


 角を生やし、牙を剥き、或る者は翼を生やした魔族の群れは怒涛の如く進軍して来た。


 始めに接敵したのは、マリオン率いるクレィル隊だった。鬨の声を上げるアマゾネス達。


 マリオンがギターをかき鳴らすと、魔族達は頭を押さえながら倒れていく。そこへアマゾネス達が止めを刺すべく飛び掛かる。


 ―音撃波


 主に弦楽器を用いた魔楽器による攻撃だ。その音色に魔力を込め、相手に対して音波攻撃と精神攻撃を叩きこみ弱らせる。相手によっては、その音色を聴いただけでも即死効果がある。


 続いてユーヤ達が接敵した。しっかり射程(・・)に入ったところでユーヤは日本刀を大上段に振りかぶった。


 直後、大きな光の波が周辺の木々ごと魔族を数名断ち切った。


 ―閃光斬


 剣に光の属性魔力を溜めて、一気に解き放つことにより広範囲攻撃を可能とする勇者の固有技だ。


 ガンプ隊以下右先鋒部隊は、ユーヤの討ち漏らした魔族一体に三人以上で飛び掛かる。ジードは魔銃で確実に敵を仕留めながら、部隊に号令をかける。


 左右からの砲撃のような挟撃に、残りの魔族は逃げ惑う。が、待ったはない。追いついて来たヒューズ率いる中央部隊が、雨のように矢と魔法を降らせた。


 呆気なかった。ほんの一時間程で、殲滅戦に移行した。確かにヒューズの言っていたとおり、練度も士気もユーヤの思った以上に高くなっていたようだ。


「若、お見事です。」


 笑顔でヒューズが声をかけた。


 佑哉(・・)は初めての殺傷であるのに、まったく動じていない自身に自ら驚いていた。恐らく戦神サガと、この世界で生きてきたユーヤ(・・)の記憶を共有している為であろうと、一人納得する。


 遠くから大きく手を振りながら、マリオンが駆けて来る。


「ユーヤぁ!完勝だよーー!」


「姫ー!お待ちくださーい!」


 その後ろをドレスアーマーを着用したエテリナ嬢が、必死に追いかけている。何処か微笑ましい。


 リンドバウム軍の中に、死傷者はほぼいなかった。軽度の傷を負った者は数名いたが。


 その報告を受けるとユーヤはヒューズと顔を見合わせて、更に東の聖王国の国境警備隊の元まで進軍を指示した。


 収穫期の後だったので、兵糧はまだまだある。


 目指すはガロウ獣王国。その為に聖王国を通らなければならない為、国境警備隊を通して通行の許可を得ようと云うのだ。



「なんと!アレクソラス王閣下も、この度の戦にご助力して下さると云うのですか?」


 報せを聞いた聖女ハンナは、即座に通行の許可を出した。ただし、ガロウ獣王国に赴く前に、聖都に寄って欲しいとも付け加えて。





「ヒューズ卿、どう思う?」


「それが条件であるならば仕方がないでしょう。同盟国ですので罠とも思えませんし。ただ、全軍で聖都に入るのも失礼かと思いますな。」


 魔族討伐後、リンドバウム軍は後詰めにしていた本国の兵員一万五千のうち五千名を加えて、現在約八千になっていた。


「では、本隊をヒューズ卿とジードに預けて、マリっぺとクレィル隊で聖都に顔を出して来るよ。」


「そうですな。それが最良かと思います。」


 魔族討伐戦から五日、リンドバウム王国軍は聖都の西南一キロ程の場所に駐留し、聖都に向かった主の帰りを待つ事となった。

新登場国家


ガロウ獣王国:見たまんまの雰囲気です。獣人が主に暮らす、力こそが正義!な国です。それ故にその長たるクーガー王は呂布の如き強さです。


さて、この話数になってようやくラウズ大陸の国家数が五ヶ国である事が判明。実はここまで、5にしようか7にしようか悩んでました。あんまり多くすると後々大変なので、最終的に「君に決めた!」と云う乗りです。因みに、各国の名称は懐かしいバンド及び、現存するバンド名をモジっています。リンドバウム=リンドバーグ、ベルツ=B`Z、ガロウ=ガロ、ジュディ―アル=ジュディ―アンドマリー、そして未登場ですが愛理須皇国=アリス。

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