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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第3章 ―ラウズ大陸動乱編―
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第五拾参話 戦時の大敵

 ユーヤはジードから届いた伝文に首を傾げていた。それを不審に思って覗き込んだヨーンも首を傾げる。


「男二人でなにやってんのよ?」


 と、同じように覗き込んだマリオンも首を傾げた。そこで、これは嫁に翻訳してもらおうと、エテリナを呼び見てもらう。




「…陛下。なんかすみません。」


 と、王宮騎士団団長の嫁はユーヤに謝った。


「えーと、要はですね…。戦場で弾けちゃって、今物凄く反省しているらしいのですが、落ち込み過ぎて文章やら文体やら字やらが滅茶苦茶になっていると思われます。ちなみにダンガイオは制圧完了したみたいです。」


 思わず伝文を読んだ全員が拍手をする。さすが嫁!と。エテリナは顔を真っ赤にしている。色んな意味で恥ずかしいのであろう。


「わかった。仕方がない…。カリギュラス領ザンバードに入ったら、ヴァルキュリアは西進して王宮騎士団と合流してくれ。偶には旦那を甘やかしてやれ。」


「全く以って申しわけありません…。」


 ユーヤへの伝文にも関わらず、所々に『エテリナ』だとか『エクステリナ』と書かれていそうな箇所がいくつもあり、ユーヤも心配になったようだ。それ故にエテリナも顔を赤らめているのだった。


 暫くしてからヨーンが一人呟いた。


「不味いですね。」


 これをユーヤは聞き逃さずに居たようで「どうしたヨーン?」と問いかけた。


「ここに来て、兵の中にホームシックに掛かりだしている者がいないかチェックした方がいいかも知れません。戦時に於いては魔物より怖い敵かと思います。」


 一同は顔を見合わせた。確かにそれは不味いと。


 次の日の朝、医療班と各上官に命じて、配下の聞き取り調査を行った。やはり三分の一の兵員に、それらしい兆候が見られた。ユーヤはこの報告を聞くと、ライガとジードの許へと早馬を走らせた。全師団での聞き取りが必要であると判断したのだ。


 結果は、ヒト族とエルフ族に多く見られた。戦闘民族とも云える獣人族は、返って充実していたようであるが。


「ザンバードを前にして、これは…どうするヨーン。」


 二人の表情は深刻そのものであった。


「いっその事、兆候が見られた兵員を補給部隊に回して後衛をやらせてはどうなの?」


 マリオンの案に、二人は同意する。


「そうですね、ここまで来て引き返すわけにも行きませんし、今はそれしかないでしょう。」


 そう云うとヨーンは、新たな命令書を書き始めた。ジードに関しては、ヴァルキュリア…エテリナに今から合流してもらい何とか持ち直してもらう事にした。


 エテリナは出立の際に、再度ユーヤに「申し訳ありません。」と頭を下げていた。それをマリオンが「気にしてはダメ。これも軍務だと思ってくれればいいの。優しくしてあげるのよ。」と、声を掛けていた。


 そんな状態なのでヴァルキュリアの一部はユーヤ達の許に残す事とした。一部とは、言わずもがな諜報大隊である。サクヤのお守りをしながらでは、旦那のお守りもままならぬであろうと残したのだった。


 これを聞いたおカジさんはスキップを、サクヤに至っては「兄君兄君、そんなに私の傍に居たかったのですね?」と喜んでいたが、メルティは「わ、私までなんで?」と、半ベソ気味であった。


 ユーヤはメルティに「国許に帰ったら必ず恩賞を弾むから、今は耐えてくれ。」と直接伝えて励ましたのだった。平民であるメルティは陛下からの直接のお下知であったので、大変喜んでいた。


「じゃ、トライデルに家屋敷をお願いしますね。うちってば兄弟姉妹が多いので♪」

「わかった。必ず用意する。本当にすまん!」

「わーい♪これでリンドバウム市からおかん達を呼べますよ。陛下!私、命懸けで頑張ります!!」


 しかし、SSSの化身たるユーヤがそれで終わらせるわけがない。後日、メルティが腰を抜かす事態に陥るのはまだ秘密である。





 こうして、ユーヤはエテリナがジードに合流するのを待って進軍する事とした。その間になるべく兵員に休暇をとらせた。国許には帰れないが、ダンコウガの街でのショッピングや港での釣りなど、出来得る範囲内での休みをとらせたのである。


 そしてユーヤもマリオンとサクヤ、そしておカジさんを連れて街を徘徊した。これは自分達が楽しむだけでなく、オイタをしている者がいないか見張る為の巡回の意味もあった。


 酒場などが集中する歓楽街でテンゴウとソーウンに出くわす。二人もユーヤと目的が一緒だったようで、お互いに情報交換などをしながら適当な喫茶店に入って、共に往来を眺めながら歓談した。


 おカジさんは非常に居づらそうにしていた。何しろ目の前には元の国の皇家の者が二人、そして主家のソーウンがいるのだ。


 ただ、ソーウンは非常に喜んでいた。おカジさんのおかげでユーヤとのパイプが出来た事もある。そしてこうして、正妻同伴とは謂え連れ出されている姿を見る事が出来たのだ。将来に於いてホージョー家とオータ家は安泰である、と笑顔を漏らしている。


「そういえば、今回の内乱でアシカガがお取り潰しと聞きましたが、五大老に関して今後はどうされるのですか?」


 ユーヤがテンゴウに質問した。この質問にソーウンも身を乗り出して聞き入る態勢をとった。ホージョー家頭領となったソーウンからすれば、正に我が身の事である。


 これに対してテンゴウは、お茶を啜りつつ語ってくれた。


「五大老と云うシステム自体は撤廃致すが、その権威自体は残そうと御門は考えておられる。現行の四氏族を以って、四奉行とでも名付けようかと。」


「おお、有り難い!私の代になった途端に権威の喪失などとなった日には、ご先祖様方に枕元で何を言われるかと心配しておりました。」


 喜ぶソーウンの顔をテンゴウは複雑な気分で見ていた。それらを残そうと確かに天皇は動いてはいる。しかし、天皇及び御三家は既にリンドバウムに国譲りをする準備に入っていたのだ。つまり本当に今後の事を決めるのはリンドバウムの王、アレクソラス十三世であるユーヤなのだ。


 それを知らないユーヤも、ソーウンに対して「良かったですね。」と笑顔で酌をしていたのだった。テンゴウは二人の笑顔を見ながら胸に痛みを覚えていた。





 夕刻、ベルド皇帝指揮の元、帝国艦隊が出航した。五隻の艦艇によって皇帝は海洋からザンバードに攻め入る。これらの艦は、アクエリオスから回してきたらしい。対魔王用の切り札として製造していたらしいが、皮肉な事に自国での運用が初陣となってしまったようだ。その為、訓練を兼ねて早めの出航となったらしい。


 機関は、以前ユーヤが技術供与した、旧型の魔導エンジンを三基積んでいるらしい。その恩恵として、両舷に三門ずつカタパルト式魔導砲を搭載している。ただ、あくまで旧型エンジンである為、リンドバウム軍の戦車より一基一基の出力が劣っている。


「最新型を渡しておけば良かったかな…。」

「ユーヤ…。フラグになりそうな事は言わないで欲しいわ。」

「そうですよ兄君。フラグをへし折るのって発言した人物よりも、周りの人物の方が苦労したりするんですよ。」

「サクヤ様。言ってる意味がよくわかりません。」


「ウテナに貸してもらった『転移者名鑑・名言の章』に書かれていました。兄君も読んでみると良いと思いますよ。」


「双子だけに、興味を示すものが良く似ていらっしゃるのですね…。」


 ユーヤの言葉に、引き攣りながらマリオンも頷いている。


「ちなみに私は『転移者名鑑・金言の章』を持っています。」


 ビシィっとサムズアップをされている皇女様。『その二つに章にどんな違いが?』と、マリオンはツッコミたかったようである。ユーヤは、イズナとハヤテの将来が心配になっていた。


 そうしてリンドバウム軍全軍が動き出したのは、それから三日ほど後であった。

今回は切りのいいとこで切っちゃいました。

このまま無理に話を広げようとしても

ダラダラしそうだったもので…。


正直、暑さに負けております。


※雑記


500ユニーク突破しました。

有難うございます。

折れずにこれからも続けていければと思っております。

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