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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第3章 ―ラウズ大陸動乱編―
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第五拾壱話 召喚の札

「さあ、どうした?これだけで済ます気じゃないだろうな?化け物。」


 ユーヤに気圧されジリジリと後ずさる鵺であったが、相手が武器を腰にぶら下げたままの状態で、構えもしていない事に怒りを覚えたようだ。グルルルルと唸っている。

 そしてその怒りをぶつけようと咆哮をあげて跳び上がった。しかし、ユーヤは鵺を睨み付けたまま動こうとしない。


 そして、ユーヤの眼前まで鵺が迫ると、サクヤがその前に立って九字を切った。


「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!!」


 鵺の鼻っ柱で轟々と炎が燃え盛り、その顔面を焼く。鵺は思わず奇怪な叫び声をあげていた。そこへマリオンの召雷波が鵺を襲う。


 あぎゃぎゃぎゃ!と悲鳴をあげる鵺に、更に追い打ちをロンとゼフィールドが仕掛ける。


 火傷を負った鵺の顔面にロンが気を纏った一撃を加えると、ゼフィールドが鵺の腹部を斬り裂いたのだ。夥しい血の雨を降らせる鵺であったが、どうしてもユーヤに一撃を入れたいらしく、執拗に飛び掛かって行こうとしている。


「どうも気にいられてしまったようだな。んじゃ、仕方ない。」


 それまで聖神剣マリオネートに魔力を溜め続けていたのであろう、鞘から抜かれたその刃先は白い光に包まれていた。


 ―次元断裂斬


 スっと眩い光が鵺の身体を通り抜けて行くと、鵺の身体は悲痛な叫びと共に縦に分断されていく。そして裂かれた空間が元に戻ろうとする音であろうか、周囲に耳鳴りが響いた。


 ドサっと云う音が、魔獣との戦いの終焉を知らせる。その様子を窺っていたのであろう、街の防壁から白旗が揚がった。


 そして、程無く魔獣を召喚した魔導師が自首して来た。ゼハルト・ブリュッセンに謂われ、戦況が危うくなったら使えと魔法陣の描かれた札を渡されていたのだと云う。

 しかし、まさかその魔法陣から現れた魔物が、味方までも襲う危険な物とは知らされずに居たとの事で、非常に悔いているようであった。


 報告を聞いたユーヤは、ゼハルトと謂う男の在歴を皇帝に聞くが、皇帝も詳しい事を知らないらしく、ただ「そ奴の名を聞くようになってから、カリギュラスの様子が変わっていった。」と教えてくれた。


「今回の動乱の黒幕は十中八九、そのゼハルトと謂う男でしょうね。」


 ヨーンが神妙な眼差しでユーヤに告げた。ヨーンからすれば、仇と謂う事になる。その心には熱い炎が滾っていた。


 ロンもまた、ヨーンの言葉を聞き「カリギュラス様を変えた男…許せん。」と呟いていた。





 その頃クーガーとライガ親子は北上を続け、やはりカリギュラス領に隣接するダイタンの付近に到着していた。そして説得をしようと試みたが、街からは兵達が陣形を組みながら行軍して来た為、已む無くライガも応戦した。


「ライガ、気に病むな。これは戦争だ。やる時はやらねばならん。」

「わかってます。」

「ならば将たる者がその様な顔をするな。」


 そう言われて自身が如何に悲壮な表情をしていたのかを、ライガは初めて気付く。父に比べてまだ未熟な自分を思い知ったようである。


「そうですライガ様。そんなリンドバウム内で帝国を蹂躙していた際に閣下がしていたような表情をされては、我々の士気が下がってしまいますわい。」


 と、老練のクーガーの傍付きが発した言葉に、ライガは思わず「え!?父上が?」と聞き返した。クーガーはばつの悪い顔をして「余計な事を言うでない。」と傍付きを肘で突いた。戦闘直前の状態であるのに陣内に笑いが起きる。


「我らもすっかりリンドバウム流になったものですな。」


 と、笑いながらライガが言えば「当たり前じゃ。我はシア様の指南役になるのだぞ!」とクーガーが答え、更に笑いが起きた。この笑い声に敵陣は飲まれたようで、クーガー親子の陣とは真逆に動揺が広がっていた。


「さて、いつまでも相手を待たせるのは失礼です。父上、久々に親子揃って暴れましょう。」

「うむ。獣騎士団団長殿の命に従おう。さあ!リンドバウム流の真髄見せてくれようぞ!」

「「「おおおおお!」」」


 と、笑顔で兵達も応え、進軍を始めた。笑顔の零れるリンドバウム軍の姿に、カリギュラス軍は怯えを見せていた。


 ―なんだこいつらは!?バーサーカーか!!?


 獣人族の猛者達が、満面の笑顔で武器を持ち進軍して来る姿は、確かに異常であろう。恐らくゴブリン達も逃げ出す異様な光景だ。カリギュラス軍の中からも、一人二人と戦闘前に逃げ出す者が続出した。


 こうなると指揮もへったくれもない。怯えた剣や槍が相手に届くわけもなく、獣騎士達に次々と薙ぎ倒されていく。笑顔で「どうする?降参するか?まだやるのか?」と、薙ぎ倒した兵達に問えば、「し、従います!降伏いたします!!」と泣いてしがみ付いて来た。


 指揮官はこれは戦にもならないと、青い顔をして街へと引き返して行く始末であった。


「これは、あまりにも何ですな。」

「そうだな。可哀想に思えて来た。」


 そう親子は相談し合うと、ユーヤから一台だけ借りて来ていた魔導戦車を前進させた。


「出力は外壁を壊す程度でいい。街を打ち抜くような事にならんように発射せよ。」


 ライガの難しい注文に砲手は少し困った表情をしていたが、狙いを戦車から見て外壁の端にする事で対応する事とした。


 外壁の物見台に立つ兵士の顔が強張った。


 ―あれは、リンドバウムを強襲する際に見た奴と似た物だ!!


「照準誤差修正マイナス4。発射角よし。」

「ってぇーい!!」


 ズドドドドーと云う轟音に、物見台の兵士が驚いて櫓から転げ落ちて行く姿が見えた。カリギュラス軍が騒然としている事が窺える。

 魔導砲の照射を十秒も受けた外壁は、跡形もなく消失していた。


 その数分後には、櫓の物見台の上で必死に白旗を振る兵士の姿があった。街内のカリギュラス軍は、こちらから呼びかけるまでもなく、外壁を潜った時には既に皆武装解除して両手を上げていた。


 この状況にクーガーは「なんじゃ。せっかくやる気になっておったのに。」と呟いていたが「これもありと云う事だな。」と、一人納得しているようだった。


 そして、この街の指揮官から押収した物の中には、やはり例の物があった。魔法陣の描かれた札である。これをライガはすぐにユーヤの許へと届ける使いを出した。


 この札を見た瞬間に、嫌な気配を感じたからであろう。これはマズイ物だと。






 ユーヤ達本隊は、ダンコウガ郊外にて補給と休憩に入っていた。


 多方面の状況を見てからカリギュラス領ザンバードに入ろうと云う事である。そして他からの連絡待ちと云う事もあり、皇帝閣下と共にダンコウガの街を見て回る事となった。


 別にユーヤ達一行だけでも良かったのだが、ヨーンに諭されて皇帝達と回る事になったのだ。


「我々だけで回っては、まるで征服軍の臨検か何かだと思われてしまいます。ここは皇帝閣下達に先導される形をとった方がよろしいかと思います。」


 この言に、ユーヤ達も尤もだと納得している。しかし、ベルド達の街の要所要所の紹介の仕方に、ユーヤは内心困っていた。


「ここの港は主に漁の為の物であるが、軍船も着けられるようにはしておる。平定後には軍港に改良するのも良かろう。」


 とベルドが云えば


「あれに見えます塔は、普段は時計塔として民衆に親しまれていますが、いざとなれば砲台に換装する事も可能となっています。今回のような内戦が起きた際にはお役に立つかと思います。」


 とゼフィールドが言う。


「なあ…まるで臨検か何かだよなこれ?」

「…そうですね。観光案内くらいのつもりでお願いしたのですが…。」


 ユーヤとヨーンが苦笑いを浮かべているのを尻目に、サクヤとマリオンは、ロンとカスバドに名産物などを聞いていた。


 こちらもこちらで「このムーア貝は大変おいしゅうございます。現在は鮮度などの問題で他への出荷はされておりませんが、リンドバウムの鉄道を持ってすれば何処ででも食べられるようになるかと思いますよ。」


 とか


「海苔と云う物を現在開発中なのですが、今のところ我々の技術では良い品質の物が作れずにいますが、リンドバウムの技術力があれば可能となるでしょう。」


 と紹介されていた。


 サクヤも「そうですね。リンドバウムの力を持ってすれば、このような海産資源を存分に有効活用できるでしょうね。」と、笑顔で答えている。


 それを横で聞いていたマリオンは、慌てて遮るようにサクヤを諭そうとしていた。


「待て。いえ、お待ちくださいサクヤ様。我々は身内ではありますが勝手に適当なご返答はお止め頂きたいのですが。」


 と止めたが


「いいじゃないですか、身内なら家族。家族なら全て共有されるものでしょ?」


「だからマズイのよ!」


 とマリオンが青筋を立てる始末であった。




「なあ、これはどういう事なんだろうな?ヨーン。」


 既に金印を渡されているヨーンは脂汗を掻いている。


 そう、ヨーンは言い出せずにいたのだ。事が事である。それにベルド皇帝も『戦乱平定の後に王に渡す事』と言っていたので、こんな素振りを見せて来るとは予想外だったのだ。


 ヨーンがベルドをチラっと見ると、皇帝陛下は二ヤリとされた。どうやら以前獣王国での取引の際に、ヨーンが元国許を脅して来た事を根に持っていらっしゃったようである。


 ―そうだ!そうでした!このカリスマ皇帝閣下も、うちの陛下に負けず劣らずのSでした!


 後悔先に立たずとは正にこれであろう。ヨーンは青い顔で皇帝閣下の視線から逃れる事を選ぶが、わざとらしく皇帝はヨーンを捕まえて「参謀司令よ、あれもいざとなれば使える筈だ。存分に使うといい。」と肩を掴まれていた。



 ヨーンは心の内で「王族ってこえーよ。本当にこえー。」と涙するのであった。

戦場なのに軽いノリってどうなんだろう?

とは思いながら描かせていただきました。


笑いながら突撃して来る軍隊…。

ああ、周りから見たら

ヒャッハーな人達にしか見えないじゃん!


クーガー辺りに、立派なトゲトゲ兜でも被らせておけば良かったかなぁ?(ぉい)

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