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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第3章 ―ラウズ大陸動乱編―
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第四拾九話 サクヤ、無双

 ライガは、一先ず西へ西へと進路をとっていた。多少の小競り合いはあったが、ベルド皇帝を保護している事を説くと、大概の部隊は武装解除して投降してきていた。


 ベルツ帝国内部における戦闘に於いては、リンドバウム内とは違いなるべく捕虜、もしくは保護する事を前提として行っていた。今攻めているのは帝国ではなく、リンドバウムであるからだ。後の世に憎しみなどの禍根を残す事は、なるべく避けたいがためである。


 そうして進んで行くと、幾つもの帝国部隊が戦闘を行う前に、向こうから降って来るようになっていた。


 我々は皇帝陛下の敵ではない。これらは本意ではない。と。


 そして、帝国内のトライデル北部地域にあたる辺りまで来たところで、ライガは父クーガーとヒューズの部隊に無事に合流する。

 クーガーとヒューズはゲッタの街から東へ進んで来たとの事で、ライガ同様途中で投降してきた帝国部隊を幾つも連れていた。その為、この二部隊が合流した際には優に10万を越える大部隊となっていた。


 そこで兵糧が心配に思えたヒューズが別働隊を編成して、補給部隊として動く事とした。


「若とヨーンには私から早馬を出しておくので、あとは親子で北上をお願いいたします。」


 そう言うと、ヒューズはトライデルへと進路をとった。ヒューズなりに気を回したようである。またそれとは別にヨーンへの気回しでもある。司令塔がいくつもあっては混乱しかねない事もあるし、退役した身で以前のように出しゃばる気はないようだ。





 一方、早くもアクエリオスに到着していたヴァルキュリアと四氏族連合は、西のライガ達以上に小競り合いもなく、やはり途中で帝国部隊と合流を続け同じように10万以上の軍勢になっていた。


「さすがにここまでの規模の運用なんてしたことがない…。どうしましょう。」


 と、エテリナが珍しく弱音を吐いていた。その横でサクヤ姫は「なるようにしかならないでしょ。さあ、とっとと兄君達の方へ戻って合流しましょう。そして私はウテナの代わりにハグしてもらうのです。」と、エテリナを急き立てていた。


「お待ちください皇女様。何を仰っているのでしょうか?妹君の旦那様に何を期待しておいでです?」


 戦の間はサクヤの側付きを命じられている第三正室内定済みのおカジさんが、目を吊り上げている。


「だから言ってるじゃないですか。ウテナの代わりに褒めてもらってー、ウテナの代わりにギューっとギューっと抱擁してもらうのです。何か変ですか?」


 同じように皇女側付きを命じられていたメルティが頭を抱えた。おカジさんも溜息を吐いた。


 ―無理。これ無理。この人抑えられる人なんかいないってば!


 二人はそう言いたげであった。そしてヴァルキュリア団長も、ツッコむ事を諦めていた。


 寧ろ…「気にしない気にしない。ウテナ以上に厄介な人がいる気がするけど、私には見えない。見えてない。」と、自己暗示を懸命にかけていらっしゃるようだった。


 なにしろ今のエテリナがこの方(・・・)に対して何か言える立場にはない。寧ろ感謝をせねばならない対象なのだ。それは、彼女がリンドバウム閣議会に於いてウテナを擁護してくれたと云う事だけではない。





「ほうほう?リンドバウムでは隣国の姫を娶っているにも関わらず、その姉がこうして来訪していても、隣国の姫を不当な扱いのままでうやむやにするおつもりのようですね?」


 ウテナ正室昇格決議の際に議員の一人が「証拠もなくそのような事、認められるわけがない。」などと言ってしまったが為に、サクヤのハートに火が点いてしまったようである。サクヤは本来、ここで弁舌する立場にはなかったのだが。


「既にツクヨミ家からは私がこうして出向き、クレィル家とハーゲン救護院に礼の金品なぞも渡しています。にも関わらずそう仰るのですか?」


「い、いやしかしですな…。」


 議員の口調がシドロモドロになっている。それでも、あーでもないこうでもないと言っている者が居た。


「よーーーくお考えください。これは内政問題では既になく、外交問題に発展するべき内容だと云うことを。」


 議員の全てが黙った。


「そして、貴方がたは非常に恥ずかしい現状にあるのですよ?隣国の姫を育ててきたハーゲン救護院とクレィル家に対して、あなた方は何か恩賞をお考えですか?私の目にはそのように見えませんね。両方をお取り潰しにでもしたいようにも見受けられますが?」


「そ、そんな事は!わ、我々もそれに関しては現在考慮しているわけで…。」


「では、今お決めください。このツクヨミ家を代表して来ている私の前で。」


 議会は騒然となった。しかし、皇女の言う事に理がある為に議会は全会一致を持ってウテナの昇格と、クレィル家とハーゲン救護院への恩賞を出す事を決定した。この際、救護院は今まで特に公的支援を受けていなかったのだが、それさえもサクヤは盛り込ませた。


「これほど有名で有り、国の為に働いているとも云える立場の者達に、リンドバウムでは何も手を差し出そうとしないのですね。」


 このサクヤの一言に、頭の固い連中もやられてしまったようである。宰相閣下は笑いを堪えておいでだったようだ。


 こうして事実上は公爵に近い扱いを受けていたクレィル家も、準公爵家として公に認めさせられる流れとなった。サクヤの議会での無双は、国内に残していた影達がユーヤに知らせてきており、サクヤをヴァルキュリアに預ける際にエテリナはユーヤから聞かされていた。


 ウテナの義理の実家双方、ましてや片方は自身の実家の主家である。その双方への恩がエテリナを黙らせている要因の一つなのだ。


 尤もウテナは、目をキラキラさせながらサクヤの武勇伝を語る宰相から話しを聞いて「サクヤ姉様やり過ぎです!これは内政干渉ですよぉ!」と、泣きそうな顔で怒っていたようである。そこまでしてくれた実の姉に対する嬉しさもあったようではある。


 これらはサクヤからしてみれば、当たり前のウテナへの罪滅ぼしであるらしい。


「ウテナ、この程度はまだ序の口なのです。私は貴女ともっと仲良くなりたいのです。」


 と半ベソの妹の肩を掴んでのたまったそうである事からも、お判り頂けると思う。





 エテリナはユーヤに早馬を出す。

「東側はどの貴族達も敵対意思なし。故にこれより陛下の応援に向かいます。到着は3~4日を見て頂きたく思います。」


 その文面を横で見ていたサクヤが問う。


言伝(ことづて)は陛下にだけで良いのですか?王宮騎士団団長殿には?」

「今は任務中です。わたくしごとはいいのですよ。皇女閣下。」

「つまらないですね。もっともっとリンドバウムは自由だと思っていたのに。」


「陛下と御正妻を見て仰っているのでしょうが、そのおかげで我々は大変な思いをしているのですよ。」


 少しサクヤに対する皮肉も混じったようであるが、気付いていてもサクヤは動じたりしない。


「では、その早馬の知らせよりも早く到着して兄君を驚かせましょう。メルティ、諜報隊全軍に告げよ。これより陛下の応援に向かう、と。」


「え!?皇女閣下、無茶な…。」


「はい、復唱。私は上官ですよ。」


「は、はい!我々諜報隊はこれより全軍をもって陛下の応援に向かいます!さーいえっさー!」


 さーいえっさーと云う掛け声は、サクヤが諜報隊に教え込んだもので、前任者よりも変な拘りを見せるサクヤに、メルティも複雑な表情である。


 そして、この状況はどうやら「さあみんな競争よ~私に追いつけるかしら~ついてらっしゃ~い」を、地でやろうとしていらっしゃるようだ。


 事の次第に気付いたエテリナが顔を青くするが、既に遅かった。走り始めた諜報隊を見た各部隊が一斉に動き出す。四氏族も、これは遅れてはならんと走り出していた。


 先頭を走る早馬の隊員は、何が起きているのかわからずも、自分の後を駆けて来る大軍勢に脂汗をかきながら馬を急がせていた。


 ―早馬が本隊よりも遅れたら一生の恥!!


 彼女は必死だった。入隊三ヶ月の彼女にとって、今までで最大の危機的状況と云えるだろう。

 しかも自身の部隊の部隊長代理が、その先頭を笑顔で駆けてくるのだ。彼女からすれば「なにこれ?どういう試練なの?」と云ったところだ。


 エテリナとおカジさん、そしてエテリナの側近達は取り残され、茫然としている。エテリナは「あれ?私が師団長だったわよね?そうよね?あれ?あれ?」とブツブツ呟いていた。


「あ、えっと…取り敢えず…私達も荷物を持って急ぎましょう。」


 茫然としている部下達に、今のエテリナが掛けられた言葉はこれだけだった。見事に師団を乗っ取られたエテリナの思考は、ショートしてしまっているようだ。


「お気持ちお察しいたします…。」


 部下達とおカジさんからそう告げられたエテリナは、騎乗しながら下を向いてしまっていた。


「ありがとう…。私達はゆっくり行きましょう。」


 そう言うのがやっとのようであった。

おかしいな…

サクヤの演説を入れる事までは予定してたんだけども…


何故最後競争させた!?


すいません。記憶にございません。(爆)

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