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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第3章 ―ラウズ大陸動乱編―
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第四拾七話 帝国の玉璽

「―と云うわけでメルティ、このお方の補佐をお願いします。」


「え?え?ウテナ?いえ、どちら様で?」


 メルティは混乱していた。目の前にいるのはウテナそっくりなエルフのお嬢様で、その横にはウテナが下を向いて「メルティごめん。」と謝っている。そして補佐任命を下してきたエテリナも頭を抱えていた。


「こちらはウテナの実のお姉様で、皇国御三家令嬢サクヤ姫様です。こちらのツクヨミ家も諜報員の扱いに長けていらっしゃるとの事なので、国に戻るウテナの代理としてヴァルキュリア諜報隊に加わります。以上。」


「以上って…待ってください団長!?全然意味がわかりませんよ!」


 申し訳なさそうにウテナが頭を下げる。


「ごめんねメルティ。サクヤ姉様がどうしても協力したいと…。それで、今私が産後で空席になってる諜報隊隊長をやるってきかなくて…。」


「はあ!?陛下やお妃様は何と?」


「任せる。以上…。」


「待って待って!そんな御大層なご令嬢を補佐しながら戦えと!?」


 ウテナは真剣な表情でメルティの前に立ち、そしてグワシ!と両肩を掴んだ。


「貴女ならできるわ!メルティ。」


 ―待てこれ待て。ウテナがこんな表情するって事は、このお姉さんウテナよりヤバいんじゃ?


 メルティのそんな心配をものともせず、今度はサクヤがメルティの肩を掴む。


「よろしく頼みます。ニンジャマスターの称号はありませんが、影縫いや暗黒系魔法と火遁は得意です!」

「は、はひ。よろしくお願いします。」


 言葉の後にシャキーンとポーズを取るサクヤに、メルティはある意味更にウテナ以上の不安を覚えたのであった。


「安心しなさい。もう一人補佐は付けるから。元皇国ホージョー家のカジ・オータ殿を付けるわ。よろしくやって。ただ、その方も陛下の第三正室に内定している方だから気を付けてね。」


 エテリナにしては珍しく投げやりである。恐らくヴァルキュリアの陣に来るまでに、相当やり合ったのだろう。疲れが見える。

 おカジさんは、自身の荷物とサクヤの荷物をヴァルキュリアに搬送中である。


「そんな無茶な!第三正室も守れと!?…第三正室?…ん?第二っていませんよね?何故第三?」


 エテリナとサクヤがウテナに、ウテナは自身に照れながら指をさしている。


 しばらくメルティはボケラーっとした表情をしていた。しかし事の次第を呑みこむと、パーっと表情を変えた。


「マジ?マジなの?…第二夫人に…ミストになれたの?……お…お……お、お、おめでとう!!!」


 メルティは飛び上がってそのままウテナに抱きついていた。


「そうだよねそうだよね。お嬢様だってわかったんだもんね!グス。ウテナ頑張ってたもんね!グスス。」


 メルティは目から涙、鼻から鼻水を垂らして大いに喜んでくれた。そんなメルティを、笑顔でウテナは抱きしめ返した。そして自らのハンカチでメルティの目やら鼻やらを拭いてあげている。


「ウテナは良い友達を得ていたようですね。」

「そうですね。そんなウテナの大事な友を、困らせないようにお願いいたします。サクヤ姫。」


 エテリナとサクヤは、ウテナ達を離れた処から微笑んで見ていた。尤も、今回そんなメルティを一番困らせたのは、かく言うヴァルキュリア団長なのだが。






「では兄君!東征軍行って参ります!」


 サクヤに台詞を取られたエテリナが、手を宙に漂わせている。見送るユーヤとマリオン、そしてウテナはその姿を見て不安を覚えたが、引き攣った笑顔で送り出した。


 それを見送ったウテナも「旦那様、お早いお帰りをお待ちしています。」と、瞳をキラキラさせながらユーヤの手を握りしめた後に、ハンカチで()()()()を拭う仕草をしながら、聖都へと向かう馬車に乗り込んだ。聖都からは魔導列車でトライデルへ戻るようだ。


 続いてライガの獣騎士団が西へ旅立った。ライガは咆哮をあげ、それを挨拶とした。


 そして本隊であるユーヤ達が旅立った。


「さあ、ここからは後戻りできないぞ。我々も出発だ!!」


「「「おおお!!!」」」


 ユーヤ達の向かう先には、情報では壊滅してしまっている帝国の帝都ガリアンがある。カイザーブレード二人と皇帝ベルドの話しからも、恐らく焦土と化している事であろうと思われる。


 しかし、どんな形であろうとも、帝都の状況をベルドに知らせねばならない。それが他国への干渉を始めてしまったユーヤの…新生リンドバウム連合国の義務であるからだ。



「真っ黒…だな。」


 まだ、遠目ではあるが確認できた帝都の王城は、焼け焦げた為か真っ黒な塊に見えた。焦げた匂いがまだまだ遠目であるにも関わらず漂っている。


「ここまでする必要が、いったいどこにあったと云うのだ?」


 ユーヤの問いに対して、その場に答えられる者もいるはずもなく、リンドバウム軍は重い足取りを無言で速めていた。


 そんなユーヤ達の後方部隊から連絡が入った。ベルド皇帝がカイザーブレードと聖都に送った帝国兵たちを引き連れて来たとの事であった。それならばと、ユーヤは焦土と化したガリアンに入る前に野営の準備をさせ、歓待用のテントを張らせた。


 明日にでも城の主本人に確認をしてもらった方が良いであろうと云う事であった。




「済まぬな、勇者王。ようやく戦線復帰ができる。我が一族の事であるからには、我自身が片を付けたい。」


 歓待用のテントの中で、ユーヤ達連合国軍とベルド皇帝達との歓談が始まっていた。カイザーブレードの二人も、包帯が取れ聖都で遭った時とは違い活力に溢れているようであった。


「生き残りの皇族方は、今現在我々も捜索しています。恐らく生きていらっしゃるとすれば、皇子の支配が薄い東側に逃亡されていると思います。そちらにはヴァルキュリアが向かっています。」


「ほう、あのヴァルキュリアが…。あれには正直我が軍のトップ共も嘆いていたぞ。せっかく育てた女性士官達が何人も…。」


 そう、ここ帝国に於いてもヴァルキュリアの名は知れていて、何故か帝国軍を抜けて募集に集まった女性士官を、ユーヤも何人か知っている。マリオンは当然把握していたし、ヨーンもその書類の山と格闘させられていたので、よくわかっていた。


 三人の額にそれぞれ一筋の汗が流れていた。


 当然把握していないジードとブランは、主家とその参謀の表情を見て不思議そうな顔をしていた。


「こ、皇帝閣下~!どうぞどうぞ、まずは一献~~。」

 ヨーンの声は裏返っていた。


「そういえば、お主も元は帝国軍人であったと聞き及んでおるな。確か…シュラウドの息子であったか。」


 その言葉にヨーンは固まる。そして目を伏せた。


「はっ。反逆の罪に問われたシュラウドの嫡男であります。」


 居住まいを正すと、敢えてヨーンは皇帝を前に告げた。皇帝は瞑目していた。


「あれには済まない事をしたと思っている。あれもまた、カリギュラスに唆された一人。そしてそれをを一身に被っていきおった…。」


 皇帝はグラスを片手に、どこか遠くを見るような瞳をしていた。


 ヨーンの父もまた、かつては皇帝の重鎮の一人であったと云う。しかし、皇子達の間で起きた後継者争いに巻き込まれ、第一皇子派であったヨーンの父は、第二皇子派の策謀によって反逆の濡れ衣を着せられたのだそうだ。


 ヨーンの父は特に弁解もせずに、これは派閥の争いに加わったが為の顛末、と逆に皇帝に頭を下げて自ら牢に入ったと云う。


 皇帝はヨーンの目を見ながら、ある物を懐から取り出してヨーンの手の中に納めた。


「ヨーンと言ったな?これをアレクソラス王に預ける。これを戦乱平定の後に王に渡す事を、今はリンドバウムの重臣の一人であるお主に託す。」


「か、閣下!?これは!」


「カリギュラスから守り通した物だ。元帝国士官であったお主が勇者王に渡す事に意味がある。今は黙って受け取れ。」


 それは金印であった。玉璽と云う物である。


「王以外の者には決して触れさせるな。これは我の罪滅ぼしと思ってくれ。我がお主に直接下す、最初で最後の帝国軍人としての命令である。」


 戸惑う表情を見せたヨーンであったが腹を決めると、右手を瞼の上で平手にして帝国式の敬礼をして答えた。


「畏まりました。確かにこの任、務めさせていただきます。」

帝国民としてのヨーンを皇帝に認めてもらいたくて

描きました。


じゃないとヨーンがただの変節漢に見られてしまいそうで…


皇帝も

あんなの裏切ってもどーってことないよ

みたいな態度に思えていたので

今回このような描写となりました。


まぁ、実際ぺーぺーの士爵如きが裏切ったところで

どーという事はないとは思うのですが。


※雑記


描き出して初めて気付きましたよ。

壊すよりも修復する方が面倒だって。

4章がどうしても終われないです。

どのタイミングでオーガ大陸行けばいいんだろこれ。。。

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