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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第3章 ―ラウズ大陸動乱編―
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第四拾参話 ツクヨミ家の真実

 二日ほど経ち、ヨーンとマリオン、そしてエレーナ主従とテンプルナイツを送り出したユーヤは、戦争が長期化する危険を孕む前に、天皇ツクヨミに親書だけでも送りたいと思っていた。


 ヒューズとクーガーは遊撃任務中。聖女はベルド皇帝の傍付き。ヒッターはトライデルの守備。エテリナとて、いまだに皇国内で奮戦しているところだ。使える手駒がない事にユーヤは気付いた。


 カジは言ってみれば皇国を離反したばかりで論外。


 あとは…彼女しかいない。しかし産後間もない。子と離すのは忍びない…あ、同盟国なんだから双子と一緒に出掛けても平気か!


 などとユーヤは思案に暮れた結果、ウテナを天皇への遣いとして頼む事にした。傍にフェルナンドあたりを付ければ不思議トークも抑えられるだろうと。


 そうして、ウテナは子供達とフェルナンドではなくベルヌ宰相と、乳母達や侍女など総勢100名程で皇国の天皇の許へと向かった。途中でヴァルキュリアから諜報隊も数名駆け付ける手筈をして。


「メルティ!貴女が来てくれたのね。」

「そりゃ、私らは後宮近衛団よ。貴女も護衛対象なんだからね。こーの玉の輿が~。」


 皇国内の戦闘は、小康状態になったとは謂え戦時下である。そのような場所を走っている筈の馬車の中は、何故か和気藹々としていた。ベルヌ宰相も、そこに入れて嬉しそうである。


「ウテナ様、皇室へのご挨拶の際には、私に任せてくださいね。ウテナ様は微笑んで見ていてくだされば結構ですので。」

「はーい。宰相さんにお任せしまーす。」


 ローグ・ベルヌがウテナにニコニコしながらお願いをしている。そして彼のこの言葉は、エテリナやヒューズ達とは意味合いが違う。


 ヒューズ達であれば「余計な事は頼むから言わないでくれ!あんたは黙って笑っていてくれ!」と云う意味になる。

 宰相様となると「ウテナ様見ててくだされ~♪私いい仕事しますから~♪」になる。


 そう、ウテナファンクラブ会長は、何が何でも今回はウテナ様の御前でいい所を見せたくて付いて来たのだ。会長としてサロンで皆に自慢もできる!と。

 建前上、高度な政治案件と云う事で、大臣達も何も言えなかったようだ。


 不純な動機ではあるのだが、ベルヌはこれに付いて来た事によって、とある計画の実現に必要不可欠な情報を手に入れる事になる。


 彼には…いや、彼等には夢があった。それはウテナを側室から第二正室に引き上げる事である。実際に案件として今までに何度も『ウテナ様昇格計画』を議会に提出している。しかし古い王権に煩い連中が多く、本会議にまで行くことなく握り潰されて来ていた。


『なぜ皆にはわからない!このウテナ様の聡明(?)さと美しさを!』

 常日頃からベルヌはこうして戦っていた(?)のだ。


 ―せめてウテナ様が孤児ではなく、貴族とは謂わなくても普通の家庭の出であったなら。


 ただそれだけなのだ。ウテナが第二正室になれない理由は。しかし、これらを吹き飛ばす事実が皇国に眠っていようとは、この時誰も知る者はいなかった。




「天皇ツクヨミ陛下、お初にお目に掛かります。私はアレクソラス十三世の妻の一人、ウテナ・ハーゲンと申します。」


 防衛砦ナガサキにある謁見の間で、頭を下げて挨拶をするウテナを、天皇ツクヨミは目を見開いて見ていた。

「ウテナ…ハーゲン…。」小さくツクヨミは呟く。


 そして、顔に手を当てると側付きに「サクヤが来ていたな。これへ来るように伝えよ。」と告げた。

 ウテナとベルヌ宰相は顔を見合わせる。空気がおかしい。


「宰相さん。私がさっき『クノン・コンテ』付け忘れちゃったせいですかね?」

「いえいえまさか、そのような細事を気にする事はないと思いますよ。ちゃんと王の妻と仰っていたので略して大丈夫なはずです。…たぶん。」


 あまりにも空気がおかしすぎて、ベルヌ宰相にも自信がなかった。


「お爺様…いえ、陛下。お呼びと聞きサクヤ・ツクヨミ参上つかまつりました。」


 ウテナとベルヌの視線の先には、()()()()()()()()()()()。同じような薄紫のドレスを着た()()()()()()()()には、エルフの証である立派な尖った耳があった。


「こ、これは!?」


 宰相は二人の姿を交互に見比べていた。ウテナと、サクヤと名乗った女性も互いに見つめ合っていた。二人は鏡を見ているかのような錯覚を覚える。

 そしてこの不思議空間と化した謁見の間で、ツクヨミが重々しく口を開く。


「よく来た我が孫ウテナよ。これに見えるはお前の姉、サクヤだ。」

「え?え?でも私には耳が…。」


 少しの間、ツクヨミは目を伏せる。


「すまぬ。それ故にお前をソレナ殿に託したのだ。」


 天皇がツクヨミ家の習わしを語りだした。

 それによれば、ツクヨミは御三家の中で月を心奉する家系であること。そして月は『死』を意味する事もあり、双子…即ち二つの月は非常に不吉であるとされ、双子のうち一人は消される事が決められていた。


 そして、双子のうちの妹…つまりウテナにはエルフの証とも謂える『高貴なる耳』がなかったが為に消される側に選ばれたらしいのだが、それを憂いたウテナ達の母はウテナと共に逃亡し、そして命辛々辿り着いた先が『ハーゲン救護院』であったそうだ。


「な!何故そのような!!」


 サクヤが祖父であるツクヨミを睨み付ける。彼女自身も今まで知らされていなかった話しだった。


「母者は私が生まれた時に病で死んだと、そう申しておられましたよね!これはどういう事でありますか!!」


 瞑目しながらツクヨミは天を仰いだ。そして「済まぬ。」と言うと涙を零していた。


 ウテナとサクヤの母は、ウテナを守る為に必死で抵抗し、救護院に手が回った際に「この子の命と私の命を引き替えにしましょう。」と自ら命を絶ったそうだ。それを止められなかった父は、ツクヨミに直訴し、ヒト族の耳であるウテナをせめて救護院に預ける事としたのだった。


 そして、その父も度重なる魔王軍との戦いで命を落としてしまっていたのだった。


「私に妹が居たと言う事を何故今まで仰ってくれなかったのですか?お爺様は酷すぎます!仕来りだからと妹を殺そうとして、母者を殺したと云うことですよね!?」


 ウテナは只茫然としているようだった。そしてベルヌ宰相は『これは、親書どころの騒ぎではない。ウテナ様の出生に関わる事…しかもこのような高貴な生まれであったなどと…。』と驚愕していた。


 そんなウテナの様子に気付いたサクヤは傍に駆け寄り抱きしめた。


「ごめんなさい!ごめんなさい!!貴女に今まで辛い思いをさせてしまって。本当にごめんね。こんなバカな一族で。」


 二人の頬には同じような透明の線が描かれている。ツクヨミはガックリと項垂れていた。そして、落ち着きを見せたサクヤは、ウテナの手を握り祖父に告げた。


「お爺様、この度はリンドバウムからの使者として妹は来たのですよね?では、今度は返礼として私が妹に付いて行き、こちらからの親書をお渡しします。」


「いや、しかしそれは…。」

「しかしもかかしもありません!もう決めました。旅の支度をして来ますので、それまでにリンドバウムの親書に眼を通した上で、ちゃんと返事をお書きください!そうですね。2時間ほど差し上げますわ。」


 そう言うと、ウテナから親書をサクヤが受け取り、ツクヨミに手渡した。そしてウテナに笑顔で振り向いて手招きをする。


「さあ、一緒に私の部屋でお話しでもしましょう。ええーと…ウテナ?で良かったですよね?」


「はい。姉様!」


「そこはちゃんとサクヤ姉様と言って欲しいです。」「サクヤ姉様。」「そうそう、それよそれ。」「うちの子供達連れて来てもいい?」「え!?貴女子供もいるの?凄い!!見せて見せて~。」



 謁見の間に天皇ツクヨミとベルヌ宰相を残して、姉妹は賑やかに姉の私室へと向かうのであった。

 あまりにも激動の時間であったためか、側近たちも傍観していた。そして、何処かオジサマ達だけの寂しい空間となっていた。


 ツクヨミはポツリと呟く。


「わしも曾孫が見たかったな…。」


「でしょうな…。可愛いですよ。ウテナ様そっくりでしかも双子…あ、こっちの仕来りではマズいんでしたっけ…。」

「かまわん!見たいものは見たい!そうであろう?爺として。」

「あ、ではこちらの会員証はいかがですか?ウテナ様のファンクラブなのですが?」

「おおお!素晴らしい!!わしも一枚噛ませろ!」


 おかしい…数話前の威厳はどこへ行ったのだ…御門様…。

さあ、これでウテナの第二正室計画は進められるぞー!


良かったね。宰相閣下。


※雑記


何やらいつの間にかブックマークが増えてました。

ありがとうございます。

とても嬉しく思います。


ええ『こんなに嬉しいことはない』です。

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