第四拾話 動乱を助長する者達
遂に40話到達しました。
SRWならようやくラストが見えてきた頃でしょうか?(ぉい)
私には未だにこの物語のクライマックスが見えておりません。
終わり方は決めていますが…。
リンドバウム軍の皇国への応援部隊が各所で働き、帝国に奪われた街のうちの三分の一ほどを奪回した頃、時勢を読めない不穏分子が動き始めていた。
五大老筆頭アシカガ氏と、同じく五大老の次席であるホージョー氏が帝国に寝返ろうとしていたのだった。
アシカガ、ホージョー共に五大老でありながら私兵の数二万以上を保有していた。そこへ更に帝国軍を抱き込み、己の荘園に迎え入れ両陣営合わせて五万を越えていたのだった。
彼等はリンドバウムを舐めきっていた。嘗て西の端で凌ぎを削っていた小国であったイメージから、今のリンドバウムを想像する事が出来なかったのであろう。ここまでの快進撃に対しても『たまたま偶然』程度の認識しかしていなかった。
帝国と共謀しアシカガ氏とホージョー氏は首都キョーにある本城ニジョー城を手に入れ、悦に浸っていた。怖いのは元獣王国の獣騎士だけであると。
しかし、入ってくる情報はどれも自分達の想定の上を行くもので、リンドバウムによって帝国軍が次々と敗退してニジョー城に逃げ帰って来る。
―なんだ!?なにが起きているのだ?
「ふん。引き籠りの老害共め、勇者王を舐めすぎだ。」
テンゴウはアシカガ氏とホージョー氏の謀反とニジョー城の占領の報告を聞き、歯軋りをしながら独り呟いた。
そしてこれらを、本隊に先んじて到着していたヴァルキュリア諜報隊に告げ「ニジョー城は老害共と一緒に焼き払って頂いて結構。それと自国の事であるのに動けぬ我らを許してくれと、ヴァルキュリアの大将に告げて頂きたい。」と付け加えて送り出したのであった。
諜報隊の一部が本隊に帰還し報告を受けた際にエテリナもまた呟いた。
「苦渋の選択であった事でしょうに…。」
既にライガと合流し、ヴァルキュリア隊はニジョー城が見える位置にまで来ていたのだ。キョ―の街から幾つかの煙が見える。帝国による略奪の跡であろう。住民のうちの幾らかはキョ―から逃げ延び、既にヴァルキュリアの庇護下にあった。
「ライガ様、如何致しましょう。テンゴウ殿より城は焼いて構わぬとの下知は頂いていますが…。」
エテリナは逡巡していた。敵国に占有されたとは云え同盟国の本城である。焼くに偲びないのであろう。これがトライデルであった時に、自分にそのような選択が出来るであろうか?と。
「テンゴウ殿からの下知があったのならば議論の余地はないでしょう。我々獣騎士隊がキョ―の街から敵を城に追い立てます。合図の後に魔導戦車4機によって、速やかに…。」
ライガが少し悲しい表情をしながら答えるのを見て、エテリナは後悔していた。
―しまった。この方もかつては我々と共に自身の城を焼いた身であったのだった。私とした事が軽率だったわ…。
「申し訳ありません。斯様な事を聞いてしまって。うっかりしておりました…。」
エテリナは心から謝罪した。それに対してライガは「過ぎた事です。」とだけ答え、笑顔を見せた。そのやり取りを見ていたミハイルが、真摯な瞳でエテリナに訴えた。
「義姉上。此度のライガ殿の申された作戦、私に引き受けさせていただきたい。ライガ殿は義姉上と共に後陣にてお待ちください。」
「しかしミハイル、貴方の率いるのは冒険者の集まりであるレギオンです。相手がモンスターならいざ知らず、人を相手に矢面に立っては…。」
エテリナの言葉を遮るようにミハイルは更に訴える。
「いいえ。だからこそです。現状、キョ―の街には住民がまだ多く取り残されています。それを我々冒険者集団であるレギオンが放置できると御思いですか?出来る訳がないのです。我々はリンドバウムを根城にはしていますが、この大陸中の各国に於いて活動してきているのです。それ故に我々レギオンにとっては、どの国のどの街も故郷と云える場所なのです。その街が焼かれているのです。黙って見ていられる同胞など一人もおりません!!」
凛とした義弟の瞳にエテリナは、夫であるジードの顔を思い浮かべた。そして少しの思案のあと、エテリナは承諾する。
「わかりました。なるべく被害は抑えるようにお願いします。あくまで帝国兵を城に追い立てる事と、住民の避難を最優先に。」
「承知しております、義姉上。戻ったら義姉上の淹れた紅茶を所望いたしますのでよろしく。」
「お安い御用です。怪我のないように。」
会話を終えるとミハイルは微笑みながら身支度にかかった。
少し浮かれているような大将の様子を見て、『鋼の魂』のメンバーが揃って首を傾げる。「ここのところ書類の山に埋もれてツンツンしてた大将が、ついにおかしくなったのか?」と。
そして身支度を終えたミハイルは、同胞達に向かって檄を飛ばした。
「諸君!我々は本来冒険者であり、戦争に直接関わるものではない筈であった身分の者達である。しかし、あのキョ―の街を見よ!帝国軍に荒らされ蹂躙され泣き叫ぶ子供らや老人の姿が見える筈だ。あれで良いのか?否!我々こそがあの惨状を、日頃冒険や探検の際にお世話になって来たあの人々を救うべきではないのか?さあ武器を取れ!そして一般市民の底力を軍に見せてやる時だ!!」
「「「うおおーーー!!!」」」
ミハイルの檄に応え、レギオン軍の怒号が木霊した。
「行くぞ!突撃ーーーー!!!」
号令と共に街の外壁にレギオン軍が殺到した。いまだに街の中は混乱していた為か、街門は開いたままであった。
「いいか!間違えるなよ!我々の任務は殲滅ではない、敵をニジョー城に追い立てる事だ!逃げる者には目もくれるな!!」
城下からの怒号を聞きつけ、アシカガとホージョーは天守からその様子を窺っていた。どう見ても押されている。あの弱小国家であったリンドバウムの軍にだ。何を間違えたのだ我々は?と後悔の念をアシカガ頭領タカウジは、その額に落ちる汗で語っていた。ホージョー頭領トキムネもまた、顔を引き攣らせていた。
「これは完全に相手を読み違えましたな。タカウジ殿、トキムネ殿如何いたすおつもりで在らせられるか?」
二人はホージョー家次席とも云えるソーウン・ホージョーの問いに答える事が出来ず、只々汗を垂らして城下を見つめていた。
「拙者は初めからお待ちなさいと申しておりました。しかし、主君であるトキムネ殿に従いここまで来ました。ですがこれ以上は見ておれませぬ。」
そう言うと、ソーウンは自身の配下を連れその場を退席して行ってしまった。それを止める者はおらず、ただトキムネの手が宙を彷徨うばかりであった。
その姿を見ていた他の両家の家人達も、また一人また一人と退席して行った。
「まさか、ご両人共に今更引くおつもりか?」
帝国軍カリギュラスの側近の一人、ゼハルト・ブリュッセンは冷たい眼光を二人に向けた。二人を焚きつけた張本人である。
「し、しかしゼハルト殿。これほどの差を見せつけられては…。」
トキムネの言葉にフンとゼハルトはその鷲鼻を鳴らす。
「私は極秘ルートで脱出させて頂きますよ。もし宜しければお二人も御同道ください。」
その言葉の後にゼハルトは足早に退出した。トキムネが追従するが、城下を眺めたままタカウジは動かなかった。
「誰かがこの責任を負わねばならぬのだろう…。それがたまたま私だったと云うだけの事だ。」
既に自分以外誰も居なくなった室内で、タカウジは独り呟いた。そして、辞世の句でも詠もうかなどと筆を手にしていた。五大老筆頭たる、彼なりのケジメなのであろう。
城下を見渡すと、ミナモトを筆頭にフジワラ、トクガワの紋の入った旗印が見えて来ていた。その動きはリンドバウム軍に同調する構えをみせており、タカウジはそれをどこか遠い世界の風景のように眺め続けていたのだった。
昼を過ぎて三時近くに、エテリナの許に連絡が入った。
「五大老筆頭タカウジ・アシカガ殿自刃せり。これを以ってニジョー城からアシカガ及びホージョー氏族が投降して参りました。しかし、ホージョーの頭領であるトキムネ殿は消息を絶っております。」
使いの者の言葉を聞いて、エテリナは内心安堵していた。城を焼かずに済んだのである。ライガが横からエテリナの肩をポンと軽く叩いた。『ご苦労様』と云う意味であろう。
「気掛かりは逃げたトキムネ・ホージョーのみ。ですな、ヴァルキュリア団長殿。」
そう言うと、ライガは皇国のダンジョンの地図を広げた。
「皇国にあるダンジョンなのですが、ここのダンジョンに関しては戦神のダンジョンのようなコアルームは未だに発見されてはいません。しかし、古い歴史のダンジョン故にこのような詳細な地図があるのです。」
エテリナは首を傾げる。何故今この時にこれを?と。その表情を見てとりながらライガは続けた。
「このダンジョン、恐らく陛下と同じ事を考えた者が過去にマスターをしていたのでしょう。ニジョー城内に、同じようなゲートがあるとの噂を聞いています。ここまで言えばおわかりか?」
ライガが二ヤリと笑う。エテリナは地図を見ながら、すぐさま使いの者をアシカガとホージョーの生き残りの氏族の者と、味方に付いた五大老三氏族にも送った。
「考える事は皆一緒と云うことですね。」
手筈を整えた後に、ようやくエテリナはライガに微笑した。
王様を主人公にして戦記物をやってしまうと
主人公の描写が少なくなりますね。
なんだろ、主人公なのに出番があんまりないよ。
命令すると周りが動いてくれちゃうもんなぁ。
さて、そんなこんなで40話までこられました。
ここまで読んで頂けた方々に感謝致します。
某SF大河漫画のように、これからも作者の独りよがりに突っ走ります。
そして、突然の設定変更とかで振り回したりするかもしれません。
でも私自身が心臓病で、いつお空のお星さまになるのか判らない身なので
どこまでも我儘にいきたいと思っております。
June.3.2020




