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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第3章 ―ラウズ大陸動乱編―
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第参拾八話 墜ちたカイザー

 帝国からの宣戦布告から二日。


 その日、突如ベルツ帝国皇帝ベルドが、供回りたったの七人ほどで新生リンドバウム連合国東の都市、聖都に来訪した。しかしその姿は武器鎧にいたるまでがボロボロで、初めはベルド皇帝一行と気付く者はいなかった。


 現在敵国である処の皇帝の来訪がリンドバウム連合の首都トライデルに知らされたのは、その日の夕刻であった。

 ユーヤは急いでジードとエテリナ、それにその部下達を引き連れて、練兵所にあるダンジョンの転移扉を使ってダンジョンから聖都に向かった。




「お疲れ様です。さすがお早いお着きで。皇帝閣下は治療室の方になります。」

 大教会に到着し聖女からかけられた言葉に、一瞬ユーヤは耳を疑った。


「聖女ハンナ、何がどうなっている?」

「付き従っていたカイザーブレードの方からは、クーデターだと聞き及んでいます。」

「バカな!?うちのような寄り集まりの国家ならいざ知らず、絶対君主制の帝国でか?しかも今は戦時中だぞ。」

「詳しい事は中で…。」


 通された先には包帯だらけで昏睡状態の皇帝と、同じように包帯だらけで項垂れているカイザーブレードの二人が待っていた。


「ポーションは既に限界使用量まで投与してあります。2~3時間もすれば皇帝閣下も目覚められるかと思います。それまではこちらのお二人にお聞き下さい。」

 そう聖女は告げると、一礼をして退室した。戦神のご加護を得る為に祈祷をしに大聖堂へ向かったようだ。


「久しぶりだな。剣聖の弟子のえーと…。」

「ゼフィールドです。陛下。それと、今は私も剣聖です。」


 顔の半分にまで包帯を巻かれ、腕や足、体も半身がグルグル巻きになっている。あまりにも痛々しい。その横に並ぶ武闘家ロンも同様の有り様であった。ロンも今では拳聖であるとの事だ。


「兎も角、何があったのか出来る限り詳しく教えてほしい。」

「心得ております。」


 シンとした空気の中、ゼフィールドとロンが事情を話し始めた。




 それは一週間程前の事であったという。

 ゼフィールドが帝国城内の巡回を済ませて自室に戻ろうとしていると、ゼフィールドの部屋の前で悪友とも云える男、ロンが待っていた。

 いつもなら陽気に酒瓶を片手に「おせーぞ!おら行くぞ。」とか言って来る男が、部屋の主の帰りにも気付かずに腕組みをして考え込んでいた。


「どうしたロン?何か悪い物でも食べたのか?」


 そんな言葉に悪友は笑いもせずに、真剣な表情で思案を続けていた。これは益々おかしいと思い、ゼフィールドはロンの両肩を掴んだ。


「んあ?済まない。どうにも府に落ちない事があったものでな。」


 ゼフィールドがどうしたのだと問うと、ロンがその晩担当していた地域の巡回をしていると大魔導師カスバドの部屋に、黒尽くめの男が入って行くのを見たとの事だ。「魔導師仲間なら黒尽くめなんて珍しくないだろ?」そう言うゼフィールドの問いに対してロンは首を振った。


「いや、黒尽くめうんぬんよりも、私はその男の気配をよく知っていて、しかもその方は本来今頃は、ご自身のご領地にいなくてはならないはずなのだ。」


 途中から黒尽くめに対する呼び方が敬語に変わった悪友に、ゼフィールドは眉を顰めた。


 ロンは元々平民の子であった。しかしそのロンの才能に逸早く気付いた彼の師匠は、その都市を治める領主に謁見して彼を推挙し士官をさせた。


 そしてその都市の領主カリギュラスは、ベルド皇帝の第二皇子であった。カリギュラスは長年に渡ってロンを支援し、帝国軍学校武闘科への推薦もしてくれた恩義ある方である。


 そのカリギュラスがカスバドの部屋を訪ねた黒尽くめの男ではないかとロンは疑っているようだった。


 しかし、それはあり得ないはずなのだ。何故なら三国協定によって中立地帯の防衛隊の交代任務が次に降ったのはカリギュラス皇子の軍であり、今頃は領地でその準備に追われているはずなのだ。



「何故このような時機にあのお方が…?」

 ロンは独り呟いている。


「考えすぎだろ?たまたま何かの用でも―」

 ゼフィールドの言葉が言い終わる前に事態は動いた。


 ズドドーンと云う爆発音が、件のカスバドの部屋の方から響いた。そこは魔導ギルドの中心部とも云える場所にあたる。


 ロンとゼフィールドは嫌な予感を胸に、今は何も考えずに魔導ギルド施設区へと走った。周りからは悲鳴や驚愕の声が聞こえる。そしてバチバチと燃え上がる施設を目撃する。


 カスバドは!?と、ゼフィールドが倒れている一般兵に問いかけるが、既に彼の息はなく、ロンが更に奥へと走り出した。ゼフィールドも後を追う。


 ギルド施設中央部にほど近いその部屋の前に着くと、扉は燃え尽き壁は消し飛び中は豪炎に包まれていた。ロンが気を纏って中へと飛び込み、ゼフィールドは水飲み場にあった水を被ってその後に続いた。


 そこには、灰と化した大魔導師カスバドの遺骸が転がっていた。どうやら斬りつけられた後に魔導書か何かで火をかけられたのであろう。カスバドであった灰は二つに分かれていた。

 その光景を確認したゼフィールドが何かに勘付いたように表へと走り出る。ロンもその意図に気付いたようで、そのまま二人はある場所を目指した。


 そこは王宮のベルド皇帝の私室。普段ならカイザーブレードである二人でさえも、その区画に立ち入る事を躊躇するのだが、今はそんな場合ではない。どこも彼処もが炎上しているのだ。今この時に皇帝をお守りせずに何時するのだと云う思いが、二人を突き動かす。


 恐らくカスバドの部屋を始めとした魔導ギルドの爆破は、搖動であると二人は確信していた。


 皇帝の私的な区画でさえも、やはり炎に包まれていた。石積みさえも焼くこの炎は、恐らくカスバドを焼いた物と同じ魔導書の類の仕業であろう。


 ―確かカリギュラス様は、イフリートの炎を呼び寄せる魔導書を、家宝として皇帝陛下に賜っていたはず!いやしかし、なぜこんな事を!?


 ロンの心は嘗ての恩人と皇帝陛下との間を逡巡していた。


「迷うなロン!!今は兎に角、皇帝陛下の元へ馳せ参じる時だ!」


 炎の中を直走りながら、ゼフィールドがロンに向かって叫ぶ。ロンは何度か首を横にブンブンと振ると、決意の表情でゼフィールドに追従した。




 皇帝私室に着いた二人が最初に目撃したのは、皇帝陛下の盾となって潰えたであろう同僚ラドクリフの無残な姿であった。

 首元から大量の血を流し、鎧の隙間には幾つもの刺し傷があった。足の腱も断ち切られていたようだったが、それでも彼は踏み止まって立ったまま絶命していた。


「「ラ、ラドクリフ…。」」


 またも同僚の死を目にして動揺を隠せない二人であったが、今成さねばならない目的を思い出し、二人は周囲を見回した。

 皇帝の姿は何処にもない。しかし、床を見ると引き摺ったような血の跡があった。二人は目を合わせ頷くと、その血痕を辿り走った。


 ―間に合え!間に合え!!


 辿り着いた先は王城の謁見室で、そこには血塗れで玉座に座らされたベルド皇帝の姿があった。


 恐らく、その出血と燃え盛る炎で息絶えるものと、止めを刺さずに置いていかれたのであろう。皇帝は既に虫の息であった。急いでロンが気功である程度の止血を施し、ゼフィールドが己の着衣を斬り裂いて包帯の代わりに皇帝陛下に巻いていった。


「陛下!生きてらっしゃいますね?我々が肩を貸します!今すぐ脱出しましょう!!」

 ゼフィールドは大声で皇帝陛下に呼びかけた。皇帝は痛みからか、ただただ声も出せずに無言で頷いていた。


 そして二人は皇帝を助け、命からがら王城を脱出する。その際に生き残った部下二百人余りと合流したが、途中で脱出された事に気付いたカリギュラス軍に追われ、気付けばゼフィールドとロンを含めた今いる七人だけとなってしまったようだ。




「恐らくカリギュラス様は、数日後にはリンドバウムに本隊を投入して来るものと思われます。ご迷惑をおかけ致します。」


 項垂れながらも、まだ活きた目でゼフィールドは謝罪した。そんな彼にユーヤは「気に病むな。今は静養しろ。」と優しい目をして答えた。




 暫くすると一報を聞いてヨーンと共に、ヒューズもやって来た。そこで二人に事情をユーヤが説明した。カイザーブレードの二人は既に、安心感からか気を失って眠っている。


「若、以前に言っていた大陸制覇を本当にやるようになりそうですな。」

 不躾にヒューズがユーヤに告げた。


「義父上!今はそんな―」

「ヨーン。貴様もリンドバウムの参謀であるなら、冷静に時勢を見よ。感情では時代は動かん。」


 義父を諭そうとしたヨーンに、ヒューズは睨むような目で息子の言葉の全てを待たずに言い返す。


 これこそがかつて名軍師と呼ばれた男、ヒューズ・ロンバルトである。そこに一切の情けはない。寧ろ情けをかける事こそ相手に対して無礼であると、ヒューズは思っている。


「親子でこんな場所でいがみ合うなよ。ヨーン、お前の本心は帝国に居る姉を助けたいんだろ?なら次の行動はわかっているのだろ?お前はそれに向けて動けばいい。この大陸を制覇云々はその後について来る。だろ?ヒューズ卿。」


 ヒューズはユーヤの言葉に、参ったなぁと云うような表情をしながら頭を掻いた。一方ヨーンは、ユーヤの言う言葉の意味を噛みしめていた。


「陛下、わかりました。私は私のやり方を貫きます。そして姉上を救い出したく思います。」


 ユーヤは深く頷くと「それでいい。お前はお前だ。」と言ったあと、ヒューズをチラっと見た。ヒューズは困った顔をしながら「そうだな。俺と同じ道を行っても俺は越えられん。ならお前の信じた道を行け。」とヨーンの肩を師匠として叩いた。



 それから一時間ほど経った頃、ようやくベルド皇帝が目を覚ました。皇帝の証言に因ると、この度の宣戦布告はベルド皇帝の知らぬ処である事と、第二皇子により他の皇子とその家族全てが滅ばされたとの事であった。


 それらを聞いたユーヤは、ベルド皇帝に告げる。


「取り敢えず、お宅の馬鹿息子をひっ捕らえてきますよ。」

この話はひたすらユーヤのラストの台詞を書きたくて

ただひたすらそこだけを目指して描きました。


その割にはちゃんと私なりに纏まって描けたかと思います。


勢いって大事ですね!(開き直り


●ミツクラ雑記


三章に入ってから戦闘の連続で疲れてきてます。

そして物語を綴りながら思ったのです。


うん。次を描くなら戦闘のない物語を書こう!

恋愛モノとか?

うーん。冒険活劇とかもいいかも。

学園ラブコメも捨てがたい。


そんなジャンル描けるのか?と、問われれば

知らん。

描いてみなきゃわからん。


と、答えるよりなし。


そんなミツクラの好きな言葉は

『明日は明日の風が吹く』

であります!閣下!


※本日は急に決めたので17時からの投稿ですが、明日からは8時になります。


気まぐれでごめんなさいm(_ _)m

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