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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第2章 ―戦神のダンジョン編―
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第参拾四話 魔導列車

 日本で謂えばクリスマスイブの日、新生リンドバウム連合国ではアルテイシア姫の一歳の誕生日のお祝い式典と共に、首都トライデルと聖都とを結ぶ鉄道の開業式典が執り行われていた。


 ボォオオオと、お披露目用に蒸気機関による煙を噴き上げながら、魔導列車がトライデルステーションに到着すると、その日無料で入場可能になっているトライデルの駅の構内には、たくさんの子供達の歓声が上がった。初めて見る乗り物に、大人達もまた歓声を上げている。


 そこへ王室一家と、護衛として各騎士団のトップとまだ年若い剣聖と槍聖が入場する。剣聖と槍聖はこの日初めて公の場にて紹介され、二人共ガチガチに固まっている。その二人の後ろには、それぞれ王宮騎士団団長と後宮近衛団ヴァルキュリア団長…ガンプ夫妻が控え、ニコニコ微笑みながら二人の肩を揉んでいる。


「緊張しすぎですよ。エレーナ様。ほら、陛下と貴女のお姉様が笑っておいでです。」

「は、はい、エクステリナ様。しかしこの衣装はなんとかならないのでしょうか?」


 そう云うエレーナは、まるでヴァルキリーのような羽のついた兜と、青と赤そして金色の光沢のある豪華な装飾の付いたドレスアーマーを着させられ恥ずかしそうにしている。


「一応式典用の装備なので、恥ずかしがってばかりいないでください。陛下がダンジョンで貴女用に製作したらしいので、戦闘にも耐えられるようですけどね。」

「え!これを戦場でも着る事になるんですか!?」と、エレーナが目をいっぱいに開いて、抗議の視線を送っているが、ユーヤはまったく気にせずに観衆に笑顔で手を振っている。


「まあ、陛下にご加護を与えているのが戦神様なので、諦めてください。」

 エテリナは苦笑しながらエレーナを諭した。その言葉の意味に、エレーナはダンジョン三層の罠の多さを思い出し納得した。お義兄様もSなのだと。


 一方その横のロイエルは、ジードに慰められていた。

「君の気持はわかりますよロイエル。あの方は本当に部下の困った顔を見るのがお好きで、私も何度そのような目にあったか…。」

「ならこれ着替えさせてくださいよ団長!こんなキラキラした装備は嫌ですよ。」

 こちらも派手な装飾と色の装備を装着させられている。緑色をメインに扱い装飾部は金色で、兜には前面にペガサスの彫像が付いている。


「今日一日の我慢です。たぶん。」

 最後の「たぶん」の一言にロイエルは嫌な予感を覚えて、背筋に悪寒を走らせていた。そう、この装備もまた、ダンジョン製の特別品で戦闘に耐えられるのだ。


「さあ、いつまでもごねてないで、観衆に手を振ってください。これも仕事のうちですよ。」

 ジードに言われて、仕方なく諦めたように肩を落としながらロイエルは手を振った。そして、ユーヤにジトーっとした視線を送るのだった。



「ふふふ。あの二人相当恥ずかしそうだな。俺だけこの戦神の鎧で目立つのは嫌だったんでな。許せ。」

 ユーヤはとても悪そうな顔で独り言を言っていた。その横ではマリオンがシアを抱えながら「あんた段々師匠(戦神サガ)に似て来てるわよ。」と引き攣った笑みを浮かべている。


 そう彼等は、ユーヤの巻き添えを喰らったと言っていい。戦神の鎧はサガのイメージ色である青を基調に装飾部は赤いのだが、光の当たり具合によっては黄金色に染まるのだ。それこそまともにその黄金の光沢を見ようものなら、思わず「眩しっ!」と目を両手で覆いたくなるほどである。

 恐らく戦闘中に相手への威嚇や牽制をする為の仕様なのであろうが、着ている本人にとっては式典とは言え多大な羞恥心に晒される諸刃の剣であった。


 そして駅のホームには、更に後ろからライガを先頭に獣騎士二名が入場し、その後方からテンプルナイツの団長、副団長が入場した。これに続いてベルヌ宰相以下大臣達と他にも有力貴族五名程が入場する。


 駅のホームの先頭には聖女ハンナが待っていて、祈祷の準備を終え真剣な表情で来賓各位の表情を窺った後、一礼をして祈祷を始める。

 シャンシャンシャンと月桂樹の枝に付けられた鈴の音が、その一振り毎にホームに木霊する。そして祝詞のような言葉を聖女は紡いでいった。


 やがて祈祷も終わりユーヤ達に酒瓶が配られ、魔導列車に清められた酒を各々振りまいた。そしてこれらは、本来は船舶の処女航海時に行われる儀式である事を、ユーヤは後から知った。


 魔導列車への搭乗は聖女を先頭に、一両目に王家とその護衛として騎士団と他二国から来た特使など来賓が、二両目に閣僚及び貴族達が搭乗した。それらのお偉い衆が乗り込み終わったところで、ようやく一般客の搭乗が始まる。ホームを走りまわっていた子供達も、我先にと押しかけた。


 汽笛の音と共に、サービスで蒸気機関から煙が上がる。魔導力エンジンの性能が向上した為に、本来はいらなくなった蒸気機関であるが、車両の先頭から立ち上る煙は演出として相当にインパクトがあったようで、乗れなかった観衆が一斉に声を上げながら拍手をしていた。


 ホーム二階を見れば、瓦版の記者が一所懸命にメモをとり、その横ではその専属の絵師が事細かなスケッチをしていた。恐らく一般車両にも数名乗り込んでいる事であろう。


 シュッシュッシュと蒸気の音と、フィーーーンと云う魔導機の音を響かせながら列車は走り出す。聖都までの間には三つほどの駅が作られていて、各駅までの所要時間は十五分前後である。つまり、今まで最短で二日の行程を要したトライデル~聖都間が、駅での乗降や積み荷の積み下ろし時間等を含めて約一時間半から二時間ほどで結ばれた事になるのだ。


 この日は各駅でのセレモニーの開催があった為、聖都に辿り着くまでに五時間を要する事となった。


 しかし乗り心地は快適であった為、一歳のシア様でさえも乗り物酔いもなく元気に燥いでいた。

 それは各車両が外側と内側とでフレームを別構成し、魔導力によって車両の内側のフレームを浮かせているおかげで、揺れがほぼない状態であるからであった。





 聖都に着くと『歓迎!アルテイシア様!お誕生日おめでとうございます!』と書かれた横断幕が、駅にデカデカと掲げられていた。トライデルのみならず、こっちでも誕生日パレードを聖女が画策していたようだ。そうする事によって、少しでも『女神マリオン』の傍に引っ付いていようと云う魂胆がまる判りである。

 しかし、一応善意からの催しであると受け取る事にして、ユーヤ達は馬車に乗り込んだ。


 駅から大教会までの道すがら、民衆が手を振り声を上げて祝福している。そして、救護院前まで来ると、マザーソレナが救護院の子供達と手を振っているのが見えた。それを見つけたウテナは身重であるにも係わらず、『くノ一筆頭ここに有り!』と謂わん勢いで馬車を飛び下りて「母様(かかさま)!」とマザーの許へと走って行った。


 これには流石のエテリナも慌てたが、相手がウテナの育ての親である事に気付くと、逆に周りの騎士達を制止して、事が終わるのを笑顔で見届ける事にしたらしい。そしてユーヤ達も馬車を降りて、ウテナのあとからマザーに挨拶をした。


 マザーとの会話のあとにジャンヌと言葉をいくつか交わしたウテナは、エテリナを呼びマザーとジャンヌに「騎士団での私の姉です。」と紹介した。それに対してジャンヌは「私は救護院でのウテナの姉になります。よろしくお願いいたします。侯爵夫人様。」と挨拶をした。


 エテリナもジャンヌに対して最大の敬意を払った形での挨拶をし、救護院前には非常に和やかな空気が流れたのであった。




 大教会に到着してからは広間を貸し切り、ゆっくりと一行は寛いでいた。皆がリラックスして歓談する中で、それは突然に起こった。


 シアをアンジェリカ夫妻が見ている間に、聖女はマリオンの傍にやって来ていつも通りに「ねえ、女神様~。」と纏わりつこうとしていた。


 だが、突然聖女はマリオンに右手を差し出した格好のままで動かなくなった。マリオンは「おや、これは?」と、目を細めて聖女を…いや、さらにその向こうを見ている。そして恭しく聖女に頭を下げた。


「お師匠様、お久しゅうございます。この度は如何様(いかよう)なご用向きであらせられるのでしょうか。」


 マリオンが聖女に向かって丁重な挨拶をすると、それに気付いたユーヤが、面倒くさそうにマリオンの横に並び、二人で揃って膝を附いた。そして、周囲の者達もそれに倣い膝を附くと、聖女の声でそれは徐に語り出す。


『久しぶりである、我が弟子よ。そして勇者王よ。』



 窓から広間に一陣の風が吹き込む。風の精霊が神託の祝福に来たのであろう。燭台の火も炎と化している。こちらは火の精霊か。テーブルに置かれたカップの飲み物もユラユラと誰も触れてもいないのに揺らめき、広間に置かれた草花もザワザワと蠢いているようだった。


 いまだに立って見ていた貴族達や来賓達も何事が起ったのかを悟り、広間内の全員が平伏した。




『我が名はサガ。戦神サガである。』





  広間内の一同が一斉に顔を上げる。中には感動に打ち震えている者もいる。


 そんな大人達を無視してシアが覚束無い足取りで、ヒョコヒョコと聖女の前へと歩いて行ってしまっていた。アンジェリカが慌てるが、シアの母であるマリオンがアンジェリカを止める。


 そのままアルテイシアが聖女の…戦神の足元まで辿り着いた時、ようやく戦神が口を開いた。


 『よく来たアルテイシア・クノン・クィーネ。未来におけるラウズ大陸の女王よ。』


 そう言うと、聖女の姿をした戦神はシアを優しく抱き上げる。シアはニコニコしながら聖女の顔を小さな手で摩った。


 広間が一瞬ざわめいた。


 戦神がシアに対して大陸の女王と呼び、そして何よりも、女王を示す『クィーネ』の称号名を付けて彼女を呼んだからでもあった。これはつまり戦神から『この子こそがこの国の次期王である』と云う宣言が成された事に他ならないのである。


 クレィル家筆頭であるアンジェリカは平伏し、戦神よりのこの神託に涙を流した。


 『今日これへ来訪したのは、アルテイシア姫への祝福と共に一つの未来を告げに来た。これよりどれ程(のち)の事になるかは言えぬが、ラウズ大陸は戦乱に見舞われる。その時に備えよ。ラウズの女王たるこの子の為にもな。勇者王よ、健闘を期待するぞ。』


 そう告げると、聖女は光に包まれ、広間に静寂が訪れた。


 やがて光も消え去った後に、聖女が目をパチクリしながら腕の中のシアを見つめ「未来の女王陛下、万歳。」と呟いた。

 それに呼応して一斉に騎士達が「女王陛下万歳!」と声を上げると、続いて臣下の者達も声を上げ、広間には「万歳」の声が轟いた。


 その時、ベルツ帝国の特使達と愛理須皇国の特使達は、ただただ青い顔をして茫然とその光景を見つめていたのであった。

はい。

私自身がダンジョン編を引き摺る事に飽きてきました。


だけれども、あともうちょい続きます。



雑記


人様の作品を読みながら色々と勉強をしているのですが

私の最大の欠点を見つけました。

それは、非道な人物や無頼な人物を描ききれない


と云うより描けない事です。


ヤザ○大尉大好きです。サー○ェスも嫌いじゃないです。

ル○ーシュのようなキャラクターも描いてみたいです。

故大藪春彦先生は素晴らしいと思っています。


でもダメなんです。私が描こうとすると皆性格が甘くなってしまうのです。

キャラクター達の非道なマネも、私自身が行なっているような気がして

忌避感に囚われてしまうようです。

(そういう意味では、ZZの頃のヤ○ン大尉なら描けそうですが。)



こんな時、石ノ森章太郎先生を手塚治虫先生以上に崇めるミツクラは


本○猛ならきっと許さない。

島○ジョーなら哀しい顔をしてしまう。


そんな想いがどこかに過ってしまうのです。(爆)

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