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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第2章 ―戦神のダンジョン編―
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第参拾弐話 叙勲と継承

 フェルナンドの指揮の元、ダンジョン入口の丘に大きな国営宿泊施設が建設中である。その横では敷地権利を国から借りた者達が、商店街を構築していこうとしていた。


 丘の左下の小川付近は、王の別邸を中心に貴族や富裕層の別荘が建設ラッシュを迎えている。


 かつての五層への入り口は、旧一層…現在の二層への門となり、周辺も開発が成され、丘の商店街からの道を作っていたりする。


 丘の右下の区画は、初めは木材の伐採加工所として使われていたが、現在は更に奥に加工所の場所を移した上で、リンドバウム連合国軍全軍の共同練兵所へと開発が進められていた。




 建設中の宿泊施設をユーヤが視察しにやって来た。もう、六割方完成しているようだ。最上階である五階の部屋から丘の下を見下ろす。


「いい眺めだね。これなら結構儲かりそ…繁盛しそうだね。」


 ご満悦と云った表情でユーヤはフェルナンドに感想を伝えた。フェルナンドの顔にも充実感に溢れた笑顔が見える。フェルナンドにしてみれば、ダンジョン開発などと云う、夢にも見ていなかった面白い現実が目の前にあるのだ、その遣り甲斐も半端ではない。


 しかし実は、こんなお金をかける必要は本当はない。ダンジョンマスターであるユーヤがマナを使って弄れば自動で出来上がるのだが、それでは経済が回らないと思いユーヤは黙っていた。


 そんなユーヤの現在の楽しみの一つが、五層を入場制限をかけた上で改造した各種実験及び試験施設での作業である。

 ここには、自動でポーションなどを製造する工場なども配置しており、製造した商品は国の倉庫に保管したりしているが、余剰分は冒険者ギルド等に売りつけていたりする。工場で一定の品質で作られているので、売れ行きもいいらしい。


 そして、今ユーヤが夢中になっているのが、乗り物…特に飛行可能な乗り物の開発実験であった。

 魔導ギルドの者などが自由に出入りできるようにして、以前攻城兵器用に開発した魔導力炉型エンジンを小型化しようと、色々と実験を繰り返していたりするが、今のところ成功には至っていない。


 また研究員が自由に出来るようにと、五層と魔導ギルド及び錬金ギルドや、鍛冶ギルドとをゲートで繋げた。そのおかげで、リンドバウム連合国の全体的な技術の底上げが成されたのは、そこまで考えていなかったユーヤにとって拾い物であった。


 実際国民に対しては、個人所有の自動車はサイズ的に作れなかったものの、まだ試験運用にも入っていないが、魔導力炉と蒸気機関とを組み合わせた鉄道などの足が生まれる事になった。


 装備では魔銃の強化及び、魔力効率のアップが可能となった。攻城兵器もカタパルトの改良が進み、魔導砲撃や超電磁魔導砲などが完成した。





 そうこうしている間に二ヶ月ばかりの時が過ぎ、ガンプ夫妻には待望の男の子が生まれていた。それに続いてロンバルト家にも男の子が誕生。そう、王家以外は皆男子に恵まれたのだ。


 そして、遅ればせながらジード・ガンプには、今までの夫婦での功績を考慮し、又国が大きくなり国家最高騎士団である王宮騎士団のトップである彼に、箔を付ける意味もあって、『侯爵』への叙勲が成される事が決定した。


 同時に建設大臣フェルナンドも、商人上がりの初代としては異例の『伯爵』へと二階級の昇級が成される事も決まる。


 そして、このタイミングを見計らってヒューズとクーガーは退役し家督も息子達に受け継ぎ、トライデルとマジンゲルに計画中の軍学校の責任者として就任する事が決定した。これによってヨーンが参謀司令となり、ライガは獣王区区長に正式に就任する事が決まった。




「ジード・ガンプ卿!前へ。」

 ジードは名前を呼ばれると、トライデル城の大広間の絨毯の上を悠然と進んだ。


 しかし、内心は緊張で固まっており「落ち着けー落ち着けー。」と繰り返していた。なにしろ父からの家督相続の前に、国から父の持つ伯爵の地位よりも上の、侯爵を賜ってしまったのだから。

 しかも今までは伯爵号を箔付に使わせてもらっていた身である。それが、いきなり自身にその上の爵位が直接付されるのである。固まるなと言う方がおかしい。


 ユーヤが、それを察してニヤニヤしながら爵位賜与の言を述べている。それを下を向いて受けているジードは察知したらしく、背中がフルフルと震えていた。そんな姿を見て、ユーヤは尚更笑いを堪えていたのだった。


 そんな息子の雄姿を、ガンプ伯爵は誇らしげに法務大臣席より目を細めて眺めていた。同僚である他の大臣に、小声で「おめでとう。」などと声を掛けられたりしながら。




「ヨーン・ロンバルト卿!前へ。」


 ジードが席に戻ると次にヨーンが呼ばれた。

 まずは侯爵位の爵位継承の儀式として、ユーヤの傍に義父のヒューズが参謀司令席から歩み寄り、ユーヤに一礼した後に、ヨーンの方へ向き直した。


「我が息子ヨーン・ロンバルトに、父である私ヒューズ・ロンバルトから爵位を継承致します。場内の方々には、異議なき場合拍手を賜りたく存じます。」


 ヒューズがそう宣言すると、会場からは割れんばかりの拍手の音が鳴り響いた。ヨーンは涙を堪えているようだった。


 彼は元は帝国軍でも下っ端の士爵位であった。その彼が今、リンドバウム連合国の侯爵位を、師であり義父であるヒューズから継承される。彼にとって胸に去来するものが幾つもあったことであろう。

 観覧席では、妻であるエリザベスが既に涙を流し祝福している。


 会場が落ち着いたところで、そのまま参謀司令の交代式となる。ヒューズが片膝を付いてユーヤに参謀司令のメダルを返上すると、ユーヤは少し躊躇した。しかし、思い直しその手からメダルを受け取り「ヒューズ・ロンバルト卿、今まで大義であった。これからは後進の為に尽くしてくれ。」と告げた。

 ヒューズは無言で頭を伏せて、返礼とした。


 ヒューズから受け取ったメダルをユーヤは一度高く掲げた。そして宣言する。


 「これは我が連合国軍に於いて、余以外の者に対して命令を下す事の出来る役職の証である。これより、ヒューズ・ロンバルトより託されたこのメダルをヨーン・ロンバルトに預ける。」


 そう宣言して、ユーヤはヨーンにメダルを手渡した。


 心の中でヨーンは呻いた。「陛下め…。こんな宣言、式次第に書かれてないぞ!ハードル上げてんじゃねーよ!」

 ヨーンもまた、ジード同様に背中を震わせながら受け取るのであった。ユーヤがニヤニヤしていたのは言うまでもない。





 ヨーンが席に戻るとフェルナンドの名が呼ばれた。その時会場の一部がざわめいていた。平民の商人からの成り上がりであるフェルナンドを、良く思っていない連中であろう。ユーヤとフェルナンドは平静を装いつつ、式次第の内容にそこまでは準じていた。


「この成り上がりが…。」


 小声であったが、静かな会場に於いてその一言は反響して、本人の意図よりも大きく響きユーヤの耳に入った。ユーヤはそちらに顔を向けると怒気を孕んだ表情をし、恐ろしく冷たい声音で宣告した。


「誰だ。前に出ろ。王の意思に逆らうと言うのであれば反逆者として吊し上げるが、そのような覚悟を持って言ったんだよな?どうした?その覚悟を示せ。」


 シンと場内が静まり返る。今のユーヤの気配は、まるで戦神そのものと云った雰囲気である。


 そのままユーヤは言葉の聞こえた方向に体を向ける。手は聖神剣の柄の上に置かれていた。

 ユーヤの表情は冷たく、その方向に居た誰もが凍りついた。暫くの間沈黙が続く。


 やがて、それに耐えられなくなった当事者達全員が平伏した。


 ユーヤはそちらへ歩を進めようとしたが、それを見兼ねたフェルナンドがユーヤを決死の覚悟と表情で呼び止めた。


「陛下、お待ちください。ここはお目出度い席であります。ましてや、新築された城の大広間を自国民の血で汚す事など以ての外の行為であります。ご自重ください。」


 フェルナンドが平伏し、土下座の状態でユーヤに訴えると、ユーヤは怒気を抑え笑顔でフェルナンドに向き直った。


「余はこうしたフェルナンドの実直なところに惚れこんで、余の傘下に入ってもらったのだ。貴公らは今、フェルナンドに救われたと思え。」


 そう言ってユーヤは柄に乗せていた手を、フェルナンドの肩に置いた。


 その様子を見てヒューズとベルヌ宰相が手を叩くと、会場中が拍手に包まれた。

 暴言を吐いた者達は、平伏したままの状態で何度もフェルナンドに頭を下げていた。



 拍手の中、小声でユーヤはフェルナンドに礼を言った。「危なかったー、誰も止めてくれないかと思ったぜ。感謝するよ。」それに対してフェルナンドも「焦ったのはこっちですよ。脅かさないでくださいよ。」と笑顔で答えていた。


「兎も角、異例の出世だ。おめでとう、フェルナンド・ロータス伯爵!」

「ありがとうございます。陛下。」




 その後のライガの区長交代式では、クーガーがボロボロと漢泣きすると云う珍事はあったが、それ以外は何事もなく恙無く閉会となった。


 気付けば、秋も終わりに近づいていた。

ああ…やっちゃった。

感情の赴くままに打ち込んでいたら、やりたい事を羅列してるだけになってますね。


まあ、羅列した事の成果をなるべく少しずつ表現していけたらと思っています。


次の投下時間は17時になりますので、よろしくお願いします。

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