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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第2章 ―戦神のダンジョン編―
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第弐拾九話 戦神サガの来訪

『勇者王よ。目を開け。そして我が声を聞け。』


 ユーヤにとって聞き覚えのある声だった。でも今はまだ自分の両側の温もりを感じていたいユーヤは、目を閉じたままだ。


『勇者王よ…。目を開けろ。』


 なにやら物凄いプレッシャーが襲ってきたが、ユーヤは目を開けなかった。


『目を開けろ!この小僧が!てめぇ、この戦神様が直々にお話ししてやろうって言ってんだゴラ!』


 神らしからぬ剣幕である。仕方がないので、ユーヤは目を開けることにした。

「わかったよ。目を開ければいいんだろ。ほら。」


 今回は戦神サガの顔が良く見える。前回は顔さえ上げる事ができなかったのにだ。


『おめえな、神を焦らすとかいい根性してるな。まあいい。今回は神威を押さえてあるから、じっくり顔も見えるであろう。良く拝め。』


 青い髪に碧眼で整った顔の青年がそこにはいた。髪は真ん中で分け、その長さは腰まである。そして、前回と同じ黄金の鎧を身に纏っていた。


『今回は、俺の端末である聖女が近くにいるし、俺の作ったダンジョンの中なのでな、以前のマリっぺの部屋よりは俺にとっては寛げる状態なのだよ。』


 ―いや、だからって寛ぎ過ぎじゃね?前回と違って話し方が砕け過ぎだし…。


『神の前では心も読まれていると心得ておけよ。ここでは部下やら面倒な連中にも聞かれないんでな。疲れない喋りを許せ。』


「はいはい。了解です。で、今日は何しに来たんですか?」

『ああ、なんかコアが欲しいみたいな事を言ってたんでな。』

「おお、で、どうなんですか?」

『かまわんよ。俺もこっち…神界に居なきゃならんし、放置って云うのもお前さん達的には勿体なかろう。だからくれてやる。』


 随分とあっさり『くれる』と云う戦神サガに、ユーヤは「え?いいの?」と逆に聞き返してしまった。


『ああ、これから先オーガ大陸には魔王達や魔神が待っているからな。兵を鍛えるには格好の場所であろう。』


「なるほど…ん?んん?今、何かサラっと変な事を言いませんでしたか?魔王達?それに魔神?魔神て言いました?」


 戦神は、しまった!と言わんばかりに目を大きく見開いた後に横を向いた。


「ねえねえ、何なんですか?魔神て?ねえ。ねえってば。ねえねえ!」


 ここぞとばかりに攻めて来るユーヤに、普段はSの字の戦神も耐えられなくなったのであろう、説明を始めるのであった。


 オーガ大陸には三つの国があって、それぞれを三人の魔王が治めているそうだ。今回侵攻して来たのはその内の北の魔王であるとの事。


 そして、更にそれを纏めているのが『魔神アスモデウス』であり、その力は魔王よりも格上で、恐らく亜神や勇者にも勝るほどだそうだ。そう、初級女神と同格かそれ以上の能力がある可能性があり、正に世界を滅ぼしかねない存在であると言うのだ。


「…ひょっとしてあの時、空間に小細工をしたのって…その魔神アスモデウスなのですか?そして、マリっぺを下界に降ろしたのも罰ではなく、アスモデウスの討伐に必要であったからですね?」


 今の話しを総合すると、魔神で女神と同等かそれ以上と云う事は、逆に言えば魔王如きにあのような小細工など出来ないと云う事に他ならない。そうユーヤは踏んだのだ。


『先に言っておくが、マリっぺはこの事実を知らん。三魔王の裏に奴は居た為に、その存在にマリっぺは気付かなかったのだ。アレ(マリっぺ)にはまだ言わないと約束してくれ。』


 戦神サガは一旦目を閉じるとゆっくりと目を見開きながら告げて来た。

『心せよ。さもなくば、お前の娘達の代にまで影響を及ぼす。だが、今は焦るな。ここでしっかり仲間達を鍛えて行け。』


 そう告げると、戦神サガはゆっくりと体の向きを変えて歩き出した。その背中を眺めて居たユーヤだったが、心に僅かな引っ掛かりを感じて丁寧な口調で呼び止めた。


「戦神様…。本当は違う用事があったのではないのですか?それはもういいのでしょうか?」


 戦神は足を止め、暫く身動ぎもせずに立っていた。そしてまた歩き出しながら、ユーヤに一言だけ告げた。


『久能佑哉。アレ(マリオン)に母としての幸せを与えてくれた事に礼を言う。それが俺の現世(うつしよ)での悔いであった。ありがとう…。』


 戦神はそのまま光の中へと消えて行った。ユーヤは複雑な気分で見送った。そして、『必ずこれからも幸せにしていきます。』と誓って目を閉じたのであった。




 目を再び開けると、傍らには二人の妻の寝顔があった。


 ユーヤは寝袋から手を出すと、紅の髪を愛おしげにゆっくりと撫でた。紅の髪をした妻はちょっとくすぐったそうに身動ぎをしたが、まだ目覚める様子はなかった。


 ふと見ると、銀色の髪のもう一人の妻がじっとユーヤの顔を見ていた。以前よりもその髪は伸びて、今は肩まである。

 ヒイキはいかんよな、とユーヤはそちらにも手を伸ばして、優しくお腹の辺りを撫でた。銀髪の妻は、嬉しそうに微笑んでいた。





 起床後、小屋の庭のテーブルでユーヤが寛いでいるとロイエルが「おはようございます。」と言いながらお茶を淹れて、王室夫婦三人の前に並べた。

「ありがとう。」とマリオンが笑顔で返すと、この新米従者は嬉しそうに頭を下げる。


 次に聖女がいつもよりも寝惚け顔で現れた。無理もない。今朝はそうとも知らずに戦神サガの受信端末となっていたのだから。


「ふあぁ。陛下。おはようございます。何か長い夢を見ていた気がするし、今朝は体が異常にダルいんですよね。。。」

 ユーヤは「へ、へぇ、そうなんだ。」と、引き攣った笑顔で答えた。


 続いて起床して来たエレーナが、寝袋を抱えながらユーヤの膝の上へ。慣れっこになりつつあったユーヤは、エレーナの頭を撫でるとそのまま普通にお茶を飲んでいる。


 そして、森の中から脳筋ハンターズが「捕ったぞー!」と雄叫びを挙げながら帰って来た。彼らは朝の習慣にするつもりなのだろうか。



「さて。」とユーヤは言うと、エレーナをマリオンに渡して立ち上がった。


「皆、聞いてくれ。戦神様よりダンジョンコアの取得の許可を頂いたぞ。」

「「「ええ!?いつの間に!?」」」


 聖女だけは「やっぱり…。」と呻いていた。そんな聖女を見て、苦笑いをしながらユーヤは話しを続けた。


「まあクリア後の取得にはなるんだけれども、取得後は好きに使っていいらしい。オーガ大陸での戦いの為の訓練施設として、大いに使ってくれとの事だ。」


 魔神に関しては戦神との約束でもあった為、敢えて言わない事にユーヤはした。


「おお!やりがいレベルが上がりましたな、坊ちゃん。」「どんなレベルだそりゃ?」「王宮騎士団も、これで帝国や皇国にも劣らない精強さが持てます!」「姐さんとこのヴァルキュリアも練度が上がりますな!」「獣騎士団も使わせてもらいますぞ!」


「で、手に入ったら、この層を第一層に組み替えれば観光資源になると思うんだ。初級冒険者にも丁度良さそうな環境だしね。」

「いいわね。シアも気軽に連れて来れそうじゃない。」

「はい。私の子供や、エテリナの子供も連れて来られますね。」


 すっかりウテナも母としての言葉になっている。


「そういうわけでね、戦神様も焦らずに攻略してくれとも言っていたよ。なので、エレーナとロイエルはライガ殿と共に鍛錬をしながら探索する事。いいね?」

「「はい!」」


「あとは、ウテナは必ず聖女ハンナと行動をする事。大事な体なので文句は言わせないよ。」

「はい。旦那様の仰せのままに!」


 そう言いながら、ウテナは顔を赤らめていた。恐らく『旦那様』と云うフレーズが言いたくて仕方なかったのであろう。久しぶりに両手を組んでイヤンイヤンしている。


「ジードとブランは更に連携を高める事。まあ、これは言われなくてもやってくれるだろうけどね。」

 ジードとブランが無言で頷いた。


「ヒッターは、ちょっちこの小屋を…いや、ちょっちじゃないな。もっと本格的なものにしてもらえるかな?将来的に宿か何かに出来るような…あ、でも思い出の場所として独り占めしたいか…。」

「坊ちゃん。注文が多すぎます。」

「わかったよ。じゃあ別荘としてもっとマシに増築なり改築なりしてくれ。」


「承りました。聖女様とマリオネート様に魔法で手伝って頂ければ助かります。」


 そうヒッターが言うと、二人は微笑みで返した。


「こうなると、探索班が二班編成で開発班が一班てとこか。俺は人数的にジード達に付いて行くかな。」


 こうして班編成を済ませて、それぞれに行動を開始した。


 ライガ率いるクレィル家主従は、モンスターや大型獣を見つけては鍛錬のために逃さず退治して回った。そのおかげで二人の連携は、目を見張るものへとなっていった。既に王宮騎士団の上位の者達数人でも敵わないレベルになりつつある。


 ジードとブランも技と連携の研鑽を積み、ユーヤも二人の連携に舌を巻くような事が、度々あるレベルに達して来ていた。


 しかし、ユーヤ自身も技を極めようと鍛錬し、高速移動の『瞬光』の上位スキル『瞬絶』をモノにしようとしていた。

 その動きはまるで、瞬間移動でもしたかのような加速度で、対象物との相対速度を計るのが非常に困難なため、これを完全にマスターできる者はほぼいないと言われている。


 そして女性陣は、ヒッターの手伝いで建築魔法の連発をする事によって、高い魔力と繊細な魔力操作を身に付けていった。


 そうこうしているうちに、気付けば四層に到着してから五日が過ぎて行った。小屋は立派に進化して三階建ての別荘に生まれ変わった。


 探索自体も外周の調査を終えて、それぞれがローラー作戦で地図を埋めて行くこととなった。

遂に戦神様本来の出番の回でした。

最初の構想とはかなり違った形にはなってしまってはいるのですが

最後に言わせた台詞は、構想した時とそれほど変わっていません。


そして、今まで魔王の名前を考えて…いやいや、明かしてこなかった理由としては

ご覧のとおり、ただの中ボス設定であったためです。

ただの雑魚には名前なんて後付けで充分だと思っていますので。(ぉい



次の投下時間は明日の朝8時になりますので、よろしくお願いします。

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