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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第2章 ―戦神のダンジョン編―
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第弐拾八話 戦神の箱庭

 封印の扉を開くと、そこには剣を模った巨大な柱が部屋の真ん中に建ち、柱の真ん中はくり抜かれていて下へと続く階段が存在していた。この部屋もどこからか照明によって照らされている。


 よく眺めると、天井自体が光っているらしかった。ここから先は同じように天井が光っているらしく、階段内も明るく見える。床も壁も天井も、全てが真っ白で、ユーヤは転移した際のあの真っ白な光に包まれていた『神の部屋』を思い出していた。


「神の部屋を模したダンジョンてところか…。」

 ユーヤは何気なしに呟いていた。


 ここから先は、試練を受ける当人のユーヤと、その補助人であるマリオンが先頭となって進む。サガの造ったダンジョンの最奥に進むための階段であるため、一行は足元や壁、天井に罠がないかを確認をしながらゆっくり進んだ。


 第四層に辿り着くと、そこは広大な一つの部屋であるようだった。恐らく上の層と同じ広さと考えられる。そこは木が生い茂り、草花が生え、普通に動物達も暮らしているようである。ユーヤ達の立っている場所は小高い丘と云った感じで、草原になっている。


 地下世界に広がる楽園と云った風景だ。


 この風景に一同は見惚れて、しばらくその場から誰一人動かず、只々景色を眺めていた。


「サガの箱庭。」

 ユーヤの言葉にマリオンと聖女が無言で頷き同意した。


 聖都と同じか、それ以上の広さがあるのであろうこの広い森や草原を一行は進まなければならない。そして、次の階層へと続く階段を見つけなければならないのだ。


「取り敢えず、昼まで狩りをしつつこのフロアのモンスターの強さを探ろう。ウテナと聖女ハンナは一旦残って、テントや窯の設営とかやれる事をやりながらででも休憩しててくれ。」


 ウテナはシャキーンと聞こえて来そうな勢いで敬礼し「了解であります!陛下!」と笑顔で答えた。

 ユーヤは小声で聖女に「ウテナが無理しないように見ててくれ。」と囁いて、一礼した。


「任せてください。」


 聖女もウテナに倣って笑顔で敬礼をした。


「さて、フロアが広大なんで二班に分けたいんだが…。そうだな。クレィル家と俺で一班。残りの脳筋男子諸君で二班だな。」


 詳しい内訳はこうなる。


 一班:ユーヤ、マリオン、エレーナ、ロイエル。(王とクレィル家班)


 二班:ライガ、ヒッター、ジード、ブラン。(脳筋ハンター班)


「陛下。この班のネーミングはどうにかなりませんか?」

 ジードは納得いかないようである。


「いや、お前ら実際早朝からハントしに行ってたろ。」

「しかし―」

「はいはい。くだらないくだらなーい。陛下の決定事項はそう簡単に覆りませーん。」


 ユーヤとマリオンに遮られ、ジードの意見は聞き入れられずに終わるのだった。


 王とクレィル家班は壁伝いに左側を、脳筋ハンター班は右側を探索する事にした。取り敢えずは昼までの二時間くらいは、食べられそうな獲物のハントをメインに探索する。


 連絡方法は、この階層に来るまでにマリオンがジードに風魔法と風の精霊の力を使った伝達魔法を教えて、それをジードが会得出来たので緊急の時はそれで連絡し合う事になった。


 ユーヤもマリオンに習ってみたが、イマイチだったらしい。ユーヤは魔力操作に関しては追随を許さないくらいの実力らしいのだが、何故か魔法となると全然才能がないらしい。


「不思議よね。相手の魔法を掻き消す事が出来るのに、その魔法自体は使えないって云うんだから。」

 と、奥方に言われて少しユーヤはむくれていた。


 壁伝いに左に進み丘を下ると、小川が見えてきた。その小川の先からは森林が続いている。今晩のテントはここに作るのが良さそうだと、一行は話しながら小川の中を覗き込んだ。


「陛下。魚がいますよ。昼か晩は焼き魚が食べられそうですね。」


 ロイエルはエレーナの従者になってから、こういう事に目ざとくなっているようだ。まだ、数日だと云うのに。


 小川の向こうに普通の大きさの鹿(・・・・・・・・)が、水を飲みに森の中から現れた。人が何百年も存在していなかったこの大地では、人と云う生き物は珍しいのであろう。鹿は小首を傾げながらユーヤ達を眺めている。


 平和である。このフロアにはモンスターなど存在していないのではなかろうかと誰もが思った時に、それは突然現れた。

 森の中を長い尾を引く影がサササと蠢いたかと思った刹那に、それは鹿を丸呑みにした。


 巨大な大蛇であった。マリオンが「魔力反応ありよ。あれはモンスターとか魔獣とかの類よ!」と声を荒げると、エレーナが黄金剣を、ロイエルが水晶の槍を構えた。ユーヤはいまだに抜刀する気配はない。マリオンは背中に背負ったギターと、手にはピックを構えた。


 大蛇は、無防備に見えたユーヤ目掛けて飛び上がった。雄に二十メートルほどもあろう巨体が、羽でも生えたかのように。

 それに対し瞑目してユーヤは姿勢を正しただけであった。思わずエレーナが「義兄様危ない!」と、叫んだ。


 次の瞬間ドン!と謂う音がして、ユーヤが踏み込む姿が見えた。


 空中に血飛沫と、大蛇であった肉の塊が舞った。気が付けばユーヤはまた先程と同じ姿勢で、いつの間にか抜いていた『聖神剣マリオネート』を2~3回振り鞘に納めるところであった。


「さ、さすが陛下…。」

「やっぱり師匠はお義兄様しかいないと思った私の見立ては…間違ってはいなかった…でしょ?ロイエル…。」

「は、はい。お嬢様。」


 エレーナ主従は茫然としながら、ユーヤの佇まいに見惚れていた。


 しかし、奥方はご立腹のようだ。

「ユーヤァア。なんで二人にやらせなかったのよ!!」

「あ、すまん。ついついやっちまった。でもまーこれで蛇の蒲焼きが食えるぞ。」

「大きすぎて、これじゃあたぶん大味よ。もう!仕方ないわね。二人共、これを皆で背負えるだけ背負って、上に一回戻るわよ。」


 どうやら結局、大蛇の蒲焼きが昼の献立に加わるようだ。




 一方右を行く脳筋ハンター班は、丘を降りるとすぐ森になっていた為、そのまま森の中へと入って行った。


「普通に森ですなあ。」

 ヒッターが誰に同意を求めるでもなく言った。


「ええ。獣王区の東の森によく似ているかもしれませぬ。」

 ライガが少しワクワクしたような表情になっている。


「先程捕れた猪は、非常に脂が乗っていました。このフロアは実に食性が豊かな証拠ですね。」

 団長殿はニコニコしていらっしゃる。


「しかし、モンスターの影が薄いと云うか少ないですな。四層と云うからにはもっと凶悪なモンスターが犇めいているとばかり思っていました。」

 背中に捌いた猪肉を背負った副団長殿も、どこかほくそ笑んでいらっしゃる。


 こちらでは特に何もなく、昼時には獲物を持って四層入口のウテナ達のところに戻るのだった。




「結局、どちらも食料以外は収穫なし、と言った感じね。」

 マリオンが、昼食を口にしながら各々の情報を纏めた。


「じゃあ、午後は丘の左側に全員で降りて、拠点作りをしようか。」

 ユーヤの提案に、皆食事しながらなので無言で頷いている。


「俺はね、ここのフロアに今のところ強敵が見当たらない事からして、たぶん逆に攻略に時間がかかりそうな気がしてるんだ。」

ひゃんれれすか(何でですか)?」

 エレーナが肉を頬張りながら質問する。


「それはな、このダンジョンの製作者がSSSだからだ。てかな、これだけオープンだと逆に何が何処にあるかさっぱりわからん。五層の入り口を見つけるのは相当骨だと思うぞ。」


「まあ、森によって自然の迷宮になってると言っていいですね。」

 聖女が答えた。こちらはお茶をすでに飲んでいる。



 皆昼食を終えると、それぞれ荷物を持って丘を下り例の小川へとやって来た。そして、ライガとヒッターの提案によって男性陣とエレーナは木を切り倒し、小屋を作る事になった。


 切り出すと言ってもノコギリなぞ持ち合わせていないので、それぞれのスキルの鍛錬を兼ねてスキルでぶった切っていった。


 加工などの細かい仕事はユーヤとヒッターがナイフや小剣などで行い、残りの女性陣は各々の魔法を駆使してこれらを組み上げた。建築系魔法の研究が進んでいる聖都の重鎮たる聖女が居てくれたおかげで、案外女性陣は簡単に建築魔法を覚えられたのだ。


 これには元々魔法槍士であるロイエルも、聖女に習って参加している。


 そうして、恐らくダンジョンの外が夕闇に染まり出した頃、この四層も薄暗くなってきていた。ちゃんと夜があるらしい。


 すっかり辺りが暗くなった頃に、なんとか外側は完成した。女性陣が建築魔法で頑張っていたので、その晩は男性陣が料理番となった。

 お坊ちゃん育ちのジードは物凄く苦戦をしていたようであるが、味の方はヒッターとライガが調整をしたので、なかなかワイルドでありながら繊細な風味となっていた。


「大将。たまには姐さんに、料理を作って振舞うとかすればポイントが上がると思うんですがねぇ。お子さんも生まれるんですし、もう少し勉強すべきだと俺は思いますよ。」

 などとブランに言われ、明日の昼も調理にトライする事をジードは誓った。どんなに尻に敷かれても、エテリナ命である事は揺るがないのである。


 食事は小屋の外に設けられた、巨大な木をほぼ真っ二つにしただけのテーブルと、切り株の椅子に座って食した。


「ログハウスっていいなあ。暖炉なんかも作りたかったな。」

「いいですな坊ちゃん。明日私が留守番をして制作しましょう。」


 既にダンジョン探索と云った雰囲気は皆無である。マリオネート妃も「ああ、シアも連れて来れば良かったわ。」などと云う始末である。


「五層クリアが出来たら、ここも一般開放出来ればいいのですけどね。」

 聖女の目には$マークが浮かんで見える。

「出来ると思うよ。」

「「「え?」」」


 ユーヤの一言に全員が全力で振り向いた。ユーヤは森の奥を見据えながら笑みを浮かべた。


「恐らくゴールはこのダンジョンのコアだと思うんだ。つまり、ゴールさえすれば、このダンジョンを自由に弄る事が可能になると思わないか?」


 あくまで仮定でしかない話しではあるが、皆どうやらダンジョンクリアに対しての火が更に燃え上がったようだ。

 そしてどこか不純な理由で燃え上がった一行は、次の日から三班に分けて探索をする事に決めた。少しでも探索効率を上げるためだ。


 やる事が決まった一行は、外装だけはしっかり出来た小屋の中で、寝袋に包まった。小屋周辺には聖女が施した結界が張られているし、昼と夜があるダンジョンフロアと云う事で、今日は火の番もなしに皆グッスリ眠れるのだ。

 

 その晩ユーヤは寝袋越しにではあったが、二人の嫁に挟まれて、幸せに熟睡したようだった。

海も山もある田舎に生まれ育った私は常々思っていたのです。

下手な人工の迷路なんかより、遥かに人の手の入っていない自然の迷路の方が


難解だと。


人工物と違って天然自然のものは、明日には姿を変えるものなのです。



そして、こういった自然の迷路で人が生き死にするのを

幼少から私は体験して来たのです。


なので、四層の設定はこのようなオープンフロア設定にしました。


*お知らせ*

弐拾八話と弐拾九話の投下時間をずらしました。

次の投下時間は17時になりますので、よろしくお願いします。


以後数日、そんな感じになります。m(_ _)m

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