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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第2章 ―戦神のダンジョン編―
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第弐拾五話 ウテナの告白

 ―なんだろう?この厳かな空気は?

 何故か来賓であるはずのユーヤの方が緊張している。



 ハーゲン救護院は孤児であったウテナの育った施設であり、クレィル家に出仕するまでの間、長い時間を過ごした場所である。そして、今日はそこにウテナとマリオンそしてユーヤ、おまけの聖女様と四人で来訪しているのだ。


母様(かかさま)にはお手紙で、マリオネート様には直接お話ししてありますが、皆様、そして陛下。本日はウテナ・ハーゲン・クノン・コンテが大事なお話を致します。」


 ウテナがいつになくとても真面目に真剣に、それでいてどこか優しげに語り出した。皆、今日の主役であるウテナを中心にして席に座っている。救護院の子供達も行儀良く座っている。


「私がマリオネート様にお仕えしたのは、十の頃のことだったと思います。それまでに私を育てて頂いた母様(かかさま)や救護院への御恩は、決して忘れ得ぬ大事なことです。そして勿論、私を騎士として育てて頂いたクレィル家にも感謝の念しかございません。」


 ウテナは目を閉じ胸に手を置いて動悸を押さえるような素振りをし、落ち着きをみせると目を開いて話の続きをする。


「それ故に今日のご報告は、どうしても救護院の皆には私の口から直接したいと、マリオネート様にお願いしてこのような運びとなりました。」


 ウテナは一人一人の顔を見ると、深呼吸をした。


「今日この日、救護院の皆に話すまではと旦那様であられる陛下にも内緒にしていた事です。その陛下には晩のお食事の際にでもお話ししようと思っていたのですが、予定がちょっと変わってしまって今は緊張しています。」


 マリオンとジャンヌが「がんばって!」と声をかける。ウテナはそれに対し頷き、意を決した。


「私、この度、懐妊致しました!三ヶ月となります!」


 ユーヤの目が見開かれた。―そ、そうか。ここのところ妙にウテナが甘えてくるとは思っていたがこれだったのか!?

 そして、驚きの表情は喜びと慈しみの表情へと変わる。


 マリオンとジャンヌは、ウテナを抱きしめて三人で喜びと安堵から泣きじゃくっていた。母様(かかさま)…マザーソレナもハンカチを片手に涙を零していた。


「陛下、この度のダンジョン攻略では心ならずも多少足を引っ張ってしまうかもしれません。しかし不肖ウテナ、全力で御供致します。ダメだと言われても、ついて行きますのでお覚悟を。」


 その場の皆が心配そうな顔をする。そんな中、マリオンがウテナを抱きしめたままで補足する。


「ウテナは私が主として、また義姉(あね)として守ります。もしも旦那様が置いて行くなんて言った日には殴り飛ばしてさしあげますわ。」


 この一言に、皆に笑顔が灯った。

 ユーヤは少し顔が引き攣る。

 そして皆がユーヤを見た。


 じーーーーーっと。


 ユーヤの表情が一層強張る。

 そして周りのプレッシャーに耐えられなくなったユーヤが吠えた。


「わ、わかったよ。わかりました!ウテナは俺も守るから安心してくれ。だからみんな俺を見るなーーーーー!!」


 そしてユーヤは照れながら「母君、ウテナは必ず幸せにします。正妻であるマリオネートと同じく愛し続けます。」とマザーソレナに告げたのだった。


「陛下、大丈夫ですよ。このソレナはわかっておりますので。」

 ユーヤの言葉にソレナが笑顔で返した。まだソレナの目の端には涙の雫が窺える。ユーヤはそれを自身のハンカチで拭った。


 ウテナは院の子供達に囲まれて「ウテナおねえさんおめでとう!」と祝福を受けていた。よくわからずに子供たちはウテナの周りを駆けまわっているようだ。


 そこへ、聖女ハンナがゴホンと一つ咳払いをした。


「それでは、私聖女たるハンナが、ウテナ様のご出産の為の安産祈願を致しましょう。このまま空気になるのは嫌なので。」

「え、聖女様!?」


 さすがに「居たんですか?!」と云う言葉をジャンヌは飲み込んだようだった。そしてようやくマザーソレナも含めて、救護院のスタッフ全員が今更になって聖女に気付いた。…元国家元首であるはずなのに。


 皆のその表情を見た聖女は「やっぱり…やっぱりそうなんだ…。お付きか何かと思われてるとは思ってはいたんだけど…。」とブツブツ呟いていたが、「安産祈願、お受けします。」と云う明るいウテナの声に正気を取り戻して準備を始めた。


 そうして皆に祝福されながら、ウテナの安産祈願は笑顔の中で執り行われたのであった。





 夜になり大教会にウテナ以外の全員が戻り、ダンジョン内での各々の役割分担の確認と、ジードとブラン、そしてヒッターの集めて来た情報の精査が行われる。


 なんでも、第一層に居るモンスターは平原や森に居る魔獣と大差ない強さで、二層のモンスターはそれに毛が生えたくらいの亜種らしく、三層に至っては獣王国で魔族に引き連れられていた中でも中クラスくらいのモンスターが出るとの事だ。


「そうなると、四層辺りからキメラとかそう言ったクラスが主になるのかな?」

「そう思われます。陛下。」

 ジードが相変わらず生真面目に屹立して答える。


「そう謂えば聖女ハンナ、三層から先には行けないはずなのに、何故全五層だとわかるんだ?」

「あーそれですか?三層にある封印の扉に、古代文字でそう書かれていたのです。あと三層の封印扉までは教会の探索員が詳細な地図を描いてあるので、ご安心ください。」


 案外簡単な答えであった。しかも三層までとは謂え地図まであるとは、攻略本片手に行くようなものであろうか。


「取り敢えず、三層まで地図を元に最短距離で進んで、そこから先は主にウテナとライガ殿の気配察知に頼って進むようかな?」


「そうなりますな。ん?で、そのウテナ様は?」


 ヒッターが今更気付いたらしく周囲を見回した。ユーヤは頭を掻きながら答える。


「あー実はな、おめでたい事があったんで…今日は実家にお泊りだ。」


 ユーヤの態度から、ヒッターは何かを確信したらしく「ほぉー、おめでたい事ですかぁ?フムフム。」とほくそ笑んでいた。


 ジードはエテリナから聞いているらしく、ヒッターの視線から逃げるように「自分はちょっと…トイレにでも行ってきます。」と告げて退室しようとしたが、「では、私もお供しましょう。最近年をとってきたせいか近いもので。」とヒッターが追いかけて行った。


 ユーヤはやれやれと云ったように俯いた。ダンジョン攻略までは皆が気を遣ってはと思い、秘密にしておこうとしていたのだ。

 空気を察した大人達は敢えて聞いては来なかったが、エレーナはそうもいかなかった。


「お義兄様、ウテナ様に何かあったのですか?」

「お嬢様、空気を読まれた方が良いかと思うのですが。」


 ―うん。ロイエル正解!5ポイント進呈。

 と、ユーヤは心の中で謎のポイントをロイエルに進呈していた。



「ジードとヒッターが戻って来たら教えてあげるわ。それまで楽しみになさい。」

 エレーナのお姉様、マリオネート・C・クノン・プリスティアがニヤニヤしながら宣った。



 その晩は、ダンジョンの試練突破の祈願と、ウテナの懐妊の祝杯でこの後、主役もなしに大いに賑わうのであった。そして『王の酔拳』が相変わらず健在である事を、皆はこの晩実感するのであった。






「さあ良い子のみんなー、ちゃんと装備に抜かりはないかなー?おやつは三百円までだよー。大丈夫かなー?」


 今朝の陛下は大変おかしなテンションである。


 朝、起きるとベッドの上は戦場のようであった。それを朝食の知らせに来たロイエルに見られ、そのロイエルは「し、ししし失礼いたしましたーーーーー!!」と、どこか最近ではお目にかかれなくなった懐かしい反応を見せてくれた。


 ヒッターには鼻歌混じりに朝食時に「昨夜の坊ちゃん達のデュエットは、実に素晴らしかったですな。私も早く帰って妻の顔が見たくなりましたよ。」などと云われた。

 この際、ライガとジード、ブランの三人は王家夫妻と目を合わせないように下を向いていた。


 聖女は何故か目の下に隈を作って、チロチロと二人を見ていた。

 盗聴でもしてらっしゃったのだろうか?


 更にはエレーナに「ねえ、姉様達は昨晩喧嘩でもされてたのですか?唸り声のようなものが…」と聞かれそうになったところへ「お嬢様!!お茶をどうぞ!!!」とロイエルが裏返った声でガードしてくれた。

 やはりここでユーヤは、心の中で彼に謎ポイントを送るのだった。


 そんなこんなで羞恥心に苛まされながら、ユーヤはウテナの合流を待ってダンジョンへと向かうのであった。 

今回はウテナ愛が溢れてしまってすいません。

完全に第三の主人公枠に入ってしまってます。


私にとって、可愛い愛娘となってしまっているのです。



そしてようやくダンジョン突入です。

さあ、ここからは戦闘シーンを描かなくてはならないぞ!


ああ…どうしよ。


*お知らせ:同時投稿で『LINDBAUM"s Encyclopedia』発行。

ちょっと先の話数の分までの(更にその先のもあるけど)設定及び用語解説(?)などの辞典です。作者メモを多少修正しただけの物ですが、興味があればどうぞ。


抜け等気になる事があれば、メッセージででもよろしくお願いします。

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