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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第2章 ―戦神のダンジョン編―
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第弐拾参話 槍と剣の決着

 練兵所の闘技場では、聖なる剣と槍の戦いが続いていた。


 エレーナが中段から下段に流れるように構えを変えて、意を決したように突進する。それに合わせるかのようにロイエルもやはり下段に構える。

 迎え撃つ気であろう。


「相手が侯爵のお嬢さんだからって、遠慮なんかせんでいいのにな。」とユーヤが呟いた。「「え?」」とマリオンとウテナはユーヤを見た。


 そしてエレーナが下段から剣を振ると、同じように構えていたロイエルはそれに合わせて払った。そして、態勢を崩したエレーナに石突きを向ける。

 しかし、エレーナは態勢を崩した勢いに任せて体を回転し、その石突きを払った。

 ロイエルも払われた勢いからそのまま槍を回転させて、今度は穂先を向ける。


 暫くはこの一連の動作が続いた。まるで剣舞でも見るかのように鮮やかで美しい。

 それを見ていたウテナが顔を赤くしながら溜息をついた。少し上気したようにユーヤの腕に顔をスリスリしている。


 正妻は…健闘する妹に夢中で気が付いていない。「今晩はお前の番なんだから今は我慢しろよ。」と正妻に聞こえないようにユーヤはウテナの耳元に囁いた。ウテナは目を輝かせながら無言でコクコクと頷いた。


 今日のウテナのドレスは目に毒であった。色は全体的に薄紫で、胸元がシースルーになっている。そして、スカートの下部も似たようにレースのシースルーだ。丈こそ踝まであるが、近くで見るとミニスカートに見えてしまうような出で立ちなのだ。


 そう、元くノ一隊筆頭は夜戦に向けて準備万端だったのだ。


 そんなアホな王様と側室を尻目に、一騎打ちはクライマックスへと差し掛かる。


 息が上がりだしたエレーナは上段に構えていた。やはり経験がものを云っているようで、ロイエルに押され始めている。

 それに対しロイエルはまだエレーナに比べれば余裕があった。後、三合くらいで決着が付きそうである。


 するとロイエルが鋭い目つきに変わったと思うや否や、中段の構えをとり穂先を青く光らせた。魔力添加したのであろう。それを見てエレーナも、自身の魔力を高めた。そしてその刃を赤く光らせる。


「え?!エレーナ様にはまだ魔力操作なぞ教えていませんよ!?」

 ウテナが驚いて立ち上がった。マリオンとユーヤも目を見開いていた。


 マリオンが言っていたように、エレーナは同じようなレア職適正を持つロイエルに、現段階での能力限界まで引っ張られているようだ。ロイエルもまた、同様のようである。

 ユーヤが「不味い!」と慌てて走り出す。


 ロイエルとエレーナは、お互いに魔力と気を込めた最後の攻撃を繰り出そうとしていた。エレーナの目の色が明らかに普段と違う。殺気を全開にしたような殺意と必殺の色に染まっていた。

 それを感じ取っていたロイエルも額に汗を流しながら、必殺の構えをとる。


「「ぜいやぁああ!!」」


 ガッ!


 二人は目を瞬いた。


 二人の間にユーヤが立ち、片手は剣を握るエレーナの手を押さえ、もう片手はロイエルの槍のけら首を掴んでいたのだ。


「双方、それまでだ。寸止めと言ったはずだぞ。」


 そう言ったユーヤのシャツは、二人の魔力衝撃によってボロボロになっていた。その双眸は二人を睨み付けている。


「に、義兄様…すみません。我を忘れました…。」

「へ、陛下、自分も加減を間違えそうになっていました。申し訳ありません…。」


 二人ともユーヤに止められ冷静さを取戻し、反省とともにガックリと項垂れてしょげてしまった。

 そんな様子を見て、ユーヤはニッコリと笑って言った。


「明日は戦神のダンジョンに挑む為の特訓を二人にしてやるから、心しろよ!」


 エレーナはバっと顔を上げると、驚いた顔で「え!?お義兄様自ら特訓してくださるのですか?!」と叫んだ。そんな義妹の頭を優しくユーヤは撫でてマリオン達の元へと導いた。


 事情の解らないロイエルは茫然としていた。


 それを見ていた練兵所所長シャウトは、ロイエルの傍に来ると衝撃の一言を告げる。


「ディマージュ男爵家長子ロイエル・ディマージュ!今より貴公はエレーナ・クレィル様側付きとなり、所属も我が国のロイヤルガードとも云える連合国軍王宮騎士団となる!これは陛下自らのお達しであるので肝に命じ精進せよ!」


 ロイエルの目は飛び出さんかのように見開かれ「は、はい~?」と、よく判らない返事を返してしまった。


 そんなロイエルに苦笑しながらシャウトは「いいから今すぐ寄宿舎に荷物を取りに行け。早くしないと陛下に置いていかれるぞ。」と優しい口調で告げた。

 そのやり取りを見届けてからユーヤは笑顔でロイエルに告げる。


「事情は聞いたなロイエル。半刻だけ所長室で待っててやるから早くしろよ。祝いに昼飯もいいとこに連れて行ってやるから。」


 ユーヤはそう告げると、そのまま回れ右をしてマリオン達の方へ歩いて行った。その後ろ姿にロイエルは「陛下!了解しました!」と大声で答えると、敬礼した後に寄宿舎のある方へと走って行ったのだった。







 昼食は聖都でも一流どころのレストランに来ていた。そしてここには、ダンジョンに挑むメンバー全員が揃っていた。故に、ロイエルはガチガチに固まってスプーンとフォークを三度も落とした。


「そんなに緊張しなくてもいいですよ。食べることに専念してても誰も文句など言いませんから。」

「そうだぞ、トライデルに行ったらビシビシ鍛えてやるから、食える時に食っておけよ!」


 ―ジード・ガンプ王宮騎士団団長にブラン・ゴルド副団長が目の前にいらっしゃるるる。ど、ど、ど、どうしたらいいんだろう?

 そんな状態である。更にロイエルの左隣りには、あの獣王区副区長ライガ獣騎士団団長もいらっしゃる。


 ―ひぃ!なんでライガ様がこんな自分の隣りなんて末席に?


 そして、陛下の隣りには奥方二人に混じって、元聖王国国家元首聖女ハンナが、それによくよく奥方のお一人のお話しを聞くと、かのくノ一隊筆頭であったりする。ロイエルは白目になりかけていた。


「おいおい、誰かロイエルをなんとかしてやれよぉ。頭から煙が出てるぞ。」


「そっとしておいてあげた方が良いと思うわよ。ここにいるメンバーの大半が余所者にちょっと傷つけられただけでも、国際問題に成りかねない人達なんだから。緊張するなって言う方が無理よ。」


「そうでございますよ坊ちゃん。まだ騎士二年生の彼には、この面子は気が重いはずです。」


 と、ゴチャゴチャした感じで食事会は進んで行った。そして、ほぼコースが終わった頃にライガがちょっとした疑問を口にした。


「陛下、この度のダンジョン攻略に関して、なぜこのような人選をとられたのでしょうか?」

「ああ、話してなかったか。」


 ユーヤは紅茶を手に取り、一口飲むと人選の理由を話した。


 まず、ヒッター以外の人選はこれからの連合を負うべき若い世代を選んだ。しかも戦闘面において将来有望そうな人材をだ。それは何故か。それはこの先オーガ大陸にこちらから攻め込む過酷な戦いが待っている。それに対応出来得る人材を育成したかったからだった。


「そういう意味では、ダンジョンは育成に向いているんだ。だから今回、ジード、ブラン、お前達には更なるレベルアップを期待してるし、ライガ殿にはお父上を越えてもらう。」


 ライガが思わずお茶を吹き出した。あの父を越えろだって!?と言いたげな顔だ。


「そしてエレーナ、君には剣聖の能力を発現し、獲得してもらう。ロイエル、君も槍聖になってもらうぞ。」


「「え、えええええ!?」」


 二人が同時に叫んだ。これから主従としていいコンビになるかもしれない。


「どちらも普通は何年も何十年も獲得にかかる事は知っている。しかしだ、俺はそんなに気長に待たない。それは俺が勇者などと云う面倒くさい使命を帯びているからだ。」


 ユーヤは両脇にいるマリオンとウテナの手を取った。


「そしてそんな面倒くさい使命の為に、こうして嫁さん二人までも危険な場所に連れて行こうとしているんだ。そんな俺のやり方について来れないと云う者は今のうちに言ってくれ。すぐに他を探す。別に拒否したからと云ってどうこうしない。」


 ユーヤは全員の顔を見回した。誰も動かずにユーヤを見つめ返していた。皆、付いて行くと云う事であろう。


「そんじゃ、同意とみていいな。あ、エレーナとロイエルは午後から装備品をちゃんとした物に買い揃えるから、昼寝とかするなよ。」


「義兄様。レディーに昼寝とか失礼です。」「あはは、悪い悪い。」「へ、陛下、自分はその…持ち合わせが…。」「気にすんなロイエル。今回は強引にダンジョンに攫って行くんだ。それくらい必要経費としてこっちで出す。」


 そうして、その日は楽しい(?)ショッピングをし、傍に付いて会計をしているヒッターに渋い顔をされながら、大教会の来賓施設に寝泊まりする事となった。




 夜、イソイソとウテナを伴なって出かけたユーヤを見送って、エレーナは姉に問いかけた。「姉様、お義兄様は何故あんなにソワソワしながらウテナ様とお出かけに?」「今日はウテナの日だから。」ソファーで寝転びながら、お茶とお菓子を頬張り姉は答えた。「?」「あんたには判らなくていいことよ。」マリオンは少しだけイラついているようだった。


 どうやら昼間の会話は聞こえてらっしゃったようだ。

ツインテエレーナお嬢様を描いていると

シア抜きマリオンが、とても汚れた大人に見えるのは

作者の気のせいなのでしょうか?

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