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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第2章 ―戦神のダンジョン編―
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第弐拾弐話 次代の聖戦士

 戦神サガのダンジョン探索の人員は、今の処ヒッター、ウテナ、ライガ、ジード、ブラン、聖女ハンナは決まっていた。


 クーガーは暫くシアにかまけた罰として、区長の仕事に専念してもらうので連れて行かない事にした。ハンナに関しては戦神サガに関する古文書のエキスパートであり、治癒系魔法のエキスパートでもあるのでマリオンへの付き纏いに関しての罰は保留にするしかなかった。


「あともう一人は欲しいかな…。」


 誰かいないかとユーヤが思いを巡らしていると「お義兄様!失礼致します。」とテラスに元気な声でエレーナが鎧を着たままやって来た。


「おや、今日はエレーナもお茶会に参加するのかい?」

 と笑顔でユーヤが迎えると、エレーナは頭のツインテールを揺らしながら鼻息荒く答えた。


「お義兄様!何故に私をダンジョンにお誘い下さらないのですか?私もヴァルキュリアの試験に先月合格して、立派な騎士の一員ですよ?」


「え、いや、まだエレーナは研修を受けてる段階だろ?まだ騎士としての勉強をしてる最中じゃないか。」


 尤もらしい理由を言ってエレーナに聞かせたが、彼女の瞳が訴える「そんな言い訳はききません。」と。

 そこへシアを寝かしつけたマリオンがお茶とお菓子を持って現れた。


「あら、エレーナ、鎧を着たままでどうしたの?今日はもう訓練は済んだのでしょ?」


 そう言った姉の方を向いて、エレーナは真剣な眼差しをしたまま言葉を紡ぐ。


「姉様、私は姉様をお守りする為にヴァルキュリアに入隊しました。しかし、この一ヶ月間勉強し、訓練を重ねて知りました。経験に勝る武器はないのだと。」


 そしてエレーナはユーヤに向きなおす。


「なので、お願いいたします、お義兄様!私は早く姉様の盾に、そして剣になりたいのです!!」


 ユーヤに対して深く深く頭を下げて、エレーナは懇願してきたのだった。可愛い義妹にこうまで頼まれても、危険が見えている場所においそれと成りたての新人騎士を連れては行けない。でもしかし、とユーヤは悩んだ。


「ダンジョンの事でしょ?連れて行ってあげなさいよ。」


 マリオンの一言は、ユーヤにとっては意外だった。


「マリっぺ何を言うんだ。あのSSS(トリプルエスレア)神が作ったダンジョンだぞ?しかも十人パーティー制だぞ?どんな危険があるのかわかったもんじゃないんだぞ?そんなピクニックにでも連れて行くみたいに簡単に…。」


「なら、尚更よ。エレーナにとってはこれ程良い体験が出来る環境はないわ。何しろ一緒に行くメンバーの大半は歴戦の強者よ?それに勇者たるユーヤが居て、妻の妹一人も守れないとでも?」


 マリオンの援護射撃にユーヤはたじろいだ。更に後ろで聞いていたウテナが、珍しくユーヤを睨むようにして援護する。


「陛下。エレーナ様はマリオネート様の妹君です。その戦闘に於ける才能は、姉君であられるマリオネート様に比肩いたします。そして計ったかのようなこのタイミングでのダンジョンの出現です。これは陛下への試練ではありますが、次期クレィル家当主となられるエレーナ様への試練でもあると見受けられます。」


 ユーヤは固まった。あのウテナがまともな事を言っている。しかも真面目な顔で。いや、それ以上に周りの者全員がエレーナの味方のようで、良識のあるヒッターさえもが頷いている。


「ウテナの云うタイミングに関しては私も同意よ。何故ウテナまでがこうまで言うかちゃんと訳があるのよ。」


 マリオンも真剣な面持ちである。ユーヤは固唾を飲んで次の言葉を待った。


「新人騎士の入隊の際にはスキル検査が実施されるのだけれども、ヴァルキュリアではそれ以外に、未発現である才能や称号の検査もしてるのよ。そしてエレーナには未発現ながら、ある称号が見つかっているの。」


 マリオンはエレーナの方を向いて頷いた。自分で言うように促したのだ。


「お義兄様、私に秘められた称号は…剣聖でした。」


「な!?」


「そうよ。この世界に於いては同時に四人しか発現しない貴重な称号よ。剣聖ブライの急逝があった事もあって、現在空席は二つ。その内の一つにエレーナが食い込むチャンスなのよ。」


 この場で何故皆がエレーナの味方をするのかがようやく理解できたユーヤは、溜息をついた。これは確かにクレィル家への試練でもあるようだ。


「わかった、連れて行こう。ただしエレーナ、出来るだけ自分の身は自分で守りなさい。これはどうやら君の姉君の言うとおり、エレーナへの試練でもあるみたいだからね。」


 ユーヤが微笑みながらエレーナに告げると、彼女は嬉しさから頬を赤くして、実の姉の次に大好きな義兄に飛びついた。


「ありがとう、お義兄様!ありがとう、みんな!」


 その後は感極まったらしく、十四歳の次期クレィル侯爵家当主はワンワン泣いていた。大好きな姉の胸の中で。


「あ、因みに私も行くから。」

「はい?でもシアが…。」

「貴方への試練と云う事は、私への試練でもあると云う事よ。転生した時の事を忘れたの?」

「あ、なるほど…。」


 完全に今回は嫁無双であった。ユーヤはグーの音も出なかった。

 この際であるから、最後の一人も探す事にユーヤはした。聖都に行ったらテンプルナイツから良さそうな人材を連れて行こうと。





 そうこうして聖都に到着した時には、聖女に宣告した日の二日前であった。

 着いて早々にユーヤは、テンプルナイツの練兵所をマリオンとエレーナ、そしてウテナと共に見回った。


 中国拳法のような体術を使う者、メイス、剣、槍術と多岐に渡った。だが、一行はピンと来ないようだ。どうしたものかと一行が途方に暮れかけた時に、「陛下!お疲れ様です!」と一人の少年に声を掛けられた。


「ん?ああ、マリっぺあの時の。」「あ!頑張ってるみたいね。」


 二人の旅行の際に随伴していた護衛の一人で、槍と魔法を操れる槍魔法士のロイエルと云ったであろうか?髪は長めで茶色く、瞳の色も茶色である。背丈はユーヤと変わらないくらいで、年は十五~十六くらいだろうか。


「今日はどうされたのですか?練兵所のご案内でしたら喜んで致しますよ。」


 マリオンとユーヤは顔を見合わせると、エレーナを見た。そしてまた二人は見合わせて頷いた。


「いや、大体見学は終わったとこなんだけれどもね。ちょっとテンプルナイツの実力を見せてもらいたいなと思ってさ。」

「でしたら所長の元にご案内しましょうか?」

「そうだね。そっちにも顔を見せないとね。」


 そして、ロイエルに案内されて練兵所所長の元へと向かった。案内されながらユーヤとマリオンは、彼に色々訊ねた。練兵所の在所歴から槍魔法士の特性、戦闘経験まで。


「あのぉ、さっきからずっと自分の事ばかりですが、この練兵所については宜しいのでしょうか?」

「ああ、大体回っちゃったからね。それにここの略歴なんかも聖女ハンナに聞いてるし。」

「そうなんですか。」


 そうして練兵所の所長室に辿り着いた。


「これはこれは陛下!ご視察なら予め言っていただければ…。」

 頭を剃り上げた立派な体格の持ち主であるシャウトと云う所長は、それはそれは腰を低くユーヤ達を歓待した。

「すまんね。勝手に見させてもらっちゃったよ。それでなんだけれどもさ…。」

「え?はい?今からですか?」

「そう、今から。忙しいところだろうけど頼むよ。」


 ロイエルが首を傾げながら二人を見ていた。二人は二人でロイエルとエレーナを交互にチラ見しながら会話をしている。そして女性陣がお茶に手を伸ばし、お菓子を二~三個口に入れた後、シャウトは扉の前に立って眺めていたロイエルを呼んだ。


「ロイエル。これから貴様は己の装備を着用して闘技場に来るように。五分で済ませろ。」「わ、わかりました!」


 ロイエルは相変わらず首を傾げながら廊下を走った。


「しかし宜しいのですか?エレーナ様はヴァルキュリアとは謂え、まだ騎士見習いと云ったところでしょうし、ロイエルも確かに秘めた才能は、この練兵所でも飛び抜けてはいますが…。」


「安心してくれ。怪我をしても一切不問にするから。それに俺と妃の見立てが間違っていなければ、宰相に直接ここの予算案についての見直しを掛けあってやるよ。」

「誠でありますか!ありがとうございます!!」


 妙にニコニコしている姉と義兄の顔を見ながら、エレーナは嫌な予感に苛まされた。この顔は間違いなく二人とも何か企んでいると。





 闘技場には槍を携えた少年と、大剣を携えた少女が向き合っていた。


「それじゃぁ二人とも、真剣であるから出来るだけ寸止めでな。ルールは以上だ。じゃ、シャウト、後は頼んだよ。」


 と、言ってユーヤはマリオンとウテナの待つベンチへと歩いて行った。


「お、お義兄様、こ、これは…。」「陛下、あのこれはどういった…。」


 二人は戸惑いを隠さずにユーヤを呼び止めようとしたが、後ろ姿のまま手を振って返されるだけであった。


「では二人共、陛下の前での御前試合だからと緊張しすぎぬように。では、構えて。」


 心の準備もままならぬままに、二人は言わたとおり構えた。そしてユーヤがベンチのマリオンとウテナの間に座ったのを確認すると、シャウトは号令した。


「始め!!」


 その一言だけで二人の眼つきが変わった。それを見てウテナが感心する。


「さすが剣聖候補と槍聖(そうせい)候補ですね。」


 そう、ロイエルには隠れた才能があった。旅行の際にマリオンが妙にロイエルの立ち姿が気になって、こっそり亜神の力で鑑定していたのだ。


 称号槍聖(そうせい)。それは槍使いが目指す頂点であり、こちらも世界で四人しか発現しないスキルだ。


 しかし、剣聖に比べるとこちらは体得出来た者が非常に少ない。理由としては、戦闘の基本が剣であり汎用性の良さからも、そちらを選ぶ者が多いためである。戦に於いては剣よりも活躍の機会が多い筈なのにだ。


 ロイエルは槍を小脇に抱えるような姿勢をし、エレーナは剣を中段で構えてお互いに気をぶつけ合っている。


「凄いですね。まだエレーナ様にはヴァルキュリアの練兵所で、あのような気迫をぶつけ合う牽制の仕方は教えていませんよ。」

「同じようなレア称号の候補者相手に、あの子も引っ張られてるんじゃないかしら?」


 マリオンとウテナは実況と解説のようなやり取りをしている。

 その間でユーヤは黙って腕組みをしつつ眺めていた。

何故か夢中になって描いてて

気付いたら5000文字越えてたので

読むのにキツイじゃんこれ

と思って色々削ったり、次回に移動させたりしました。

なんか変な文章あったらごめんなさい。

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