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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第1章 ―転生・ガロウ獣王国編―
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第拾七話 マリオネートの告白

平和な時間を描く事の方が

精神衛生的にも良いのでしょうか?

今回は、物凄く短時間で書き上げていました。

 マジンゲルでの攻防から二ヵ月余りが経ち、連合国内も落ち着きを取り戻していた。


 ユーヤは遷都予定先であるヨーホーに来ている。今回はマリオンも身重ながらに同道し、半分まで出来上がっている王城への引っ越しが行われていた。


 勿論マリオンはそれを眺めているだけで、手を出させてはもらえない。ここぞとばかりに娘に良い処を見せたい父と、母であるクレィル侯爵夫婦が走り回っている為だ。

 更には妹のエレーナも、執事や侍女達と共にそのツインテールを振り乱して忙しく走り回っている。彼女もクレィル家の血を濃く継いでいて、紅の瞳に紅の髪色である。


 そこへエテリナが、第何陣目か既にわからなくなった便で、新たな荷物を引いた馬車と共にやって来た。


「あら、エテリナは明日ジードと来る予定だったんじゃなかったの?」


 マリオンの問いに、エテリナは笑顔で「姫様のお顔が早く見たくて、ジード様は置いて来てしまいました。」と照れながら答える。


 エテリナはまだ、エクステリナ・アンダーソンのままである。


 獣王城でのウテナの閃きに賛成し、ジードが「え、でも、親族に配った招待状では来月に…。」と狼狽えるのを尻目に「いっその事、ヨーン様も同じ日取りにしてしまいましょう♪」と、驚異の(かかあ)天下ぶりを発現した。


 そしてジードに助け舟を出そうとした世に聞こえし名参謀であるヒューズをも「いえ、閣下の意見は聞いておりません。大事なのはヨーン様とエリザベス様のお気持ちでは?」と云う一言で黙らせた。


 ヨーンもエテリナの剣幕に沈黙し、国に帰ってエリザベスに事情を説明するや「素晴らしいですわ!王君と同じ日に挙式を迎えられるうえに、同じ会場でだなんて♪」と言われ、義父であるヒューズ共々観念した。


 そして、その後の三者会議で、式は現在建設中であるが居住区と謁見の間、中央広間などが完成しているヨーホーの王城で執り行う事が、女性陣の主張によって(・・・・・・・・・・)決定した。


 王城の建設速度がいやに早いのには訳がある。

 元聖王国の建設ギルドが遷都の噂をかなり早い段階で聞きつけ、フェルナンドに接触して来た。元聖王国では、建設系の魔法が他国より発達していて、一般建築の家であれば、三日でほぼ完成できる程なのだ。

 因みに貴族の邸宅であっても、一ヶ月もかからないらしい。


「あと一週間後には、姫様とエリーと三人一緒に式を迎えられるのですね。ワクワクします♪」


 幾度かの三者会議で、ヨーンの許嫁であるエリザベスと顔を合わせるうちに意気投合し、今では『エリー』と『テリナ姉様』と呼び合う関係になっていた。


「ただ、問題がちょっとね。。。」

「どうかされたのですか?」


 マリオンは苦笑いを浮かべている。


「この引っ越しで、ここ数日酒宴が続いちゃってね。ユーヤには飲むなって言うのも酷だったから許したんだけども…。」


「夜の方を強要でもされたのですか?」

 エテリナが腕捲りをして立ち上がった。


「あー…それは…まぁ危うくね。だけれども、ウテナが止めに来たかと思ったら、かっ攫って行っちゃって…。」


 エテリナの目が丸くなる。「どういうこと?」と、訴えているようだ。


「まぁ、その、なに?私的には別にいいのよ。あれの夜の相手はハード過ぎて私一人じゃ身が保ちそうにもなかったから。そのうち腰が抜けそうだと思っていたくらいだし。」


「え…と、狂乱してる陛下を、ウテナが止める振りをして攫って行ったと云う事でいいんですよね?陛下が攫ったのではなく?」


 余計な情報が多かったので、エテリナが少し頭の整理をしている。


「まあ、そういう事でね。ウテナを体面上第二夫人には出来ないから、側室にしたのよ。」

「それはそうですよ。まさか(あるじ)の結婚前にその旦那と寝ておいて、第二夫人になんて事は許されませんよ!」


 ユーヤは現在十代後半。覚えたてで我慢なぞ出来るわけもない。それに関しては王族であるが故に、この世界の周りの人々も理解がある。

 しかしさすがに今回の件は、ウテナが主従の関係にあるマリオンを差し置いて…である為に、少しばかり難儀なようである。


「で、姫様はその事がお悩みの種なのですね。」


 少し間を開けて、マリオンが顔を赤らめながら答えるには、別にこの件自体は良い。ユーヤ以外の王族が廃れてしまっている現状、王族であるユーヤの後継者は多い方が国の将来的に助かる。


 しかし、一週間後の三日連続の酒宴でまたユーヤが狂乱する事は目に見えていて、その際、結婚初夜でもあるのに自分が身籠っているが為に、ウテナとユーヤが三晩過ごすような事になるのかと思うと、複雑な気分であるらしい。


 お転婆女神様が、母になる身の為か、随分しおらしくなったものである。


「なるほどです。ならば、ウテナには三日間お目付け役を付けましょう。」

「え、でもあの子ってばくノ一だから簡単にまかれるんじゃ?」


「影には影です。ハンゾウ殿を説き伏せて、ウテナを見張らせましょう。」





 その後、寡黙なはずのハンゾウが「参った…。実に参った…。なんで私がそんな事を…。」と、一人居酒屋で愚痴っている姿を目撃した下忍が、幾人も居たようだ。





「そういうわけで旦那様。陛下には三日間、ブランとクーガー様を付けてくださいね。」


 ヨーホーの屋敷にジードが到着したその日に、エテリナが甲斐甲斐しくジードの身の回りの世話をしながらしている会話である。


「え、ええ!?決定なのかいそれ?」

「ほぼ当初の計画どおりなのですから、何も問題はないですよね?ね?」


 許嫁に睨まれると、何も言えなくなる騎士団長閣下であった。

 そんな息子達を、微笑ましくガンプ伯爵夫妻は眺めていた。ガンプ伯爵家では既に、メイド衆や執事からもエテリナに対し影で『段取り女王』の称号が送られていた。

 皮肉からではなく、ガンプ伯爵家の皆から愛されて、である。たぶん。


「エテリナよ、あまり旦那様を困らせるものではないぞ。いくらジード殿が優しいとは言え…。」


 エテリナの父、アンダーソン子爵である。ガンプ伯爵家に呼ばれて追随して来たのだ。母のマーガレットは「あらあら、まあ。」と、ニコニコしながら聞いている。


「お父様、陛下と姫様に関わる事です。ならばしっかりとその周辺を固めねばいつか王城が落ちます!由々しき事態になってからで良いのですか?良くないですよね?元王宮騎士団副団長として、そこは譲れません。」


「王城が落ちるだなんて、そんな大袈裟な…。」と、父が言いかけている口を黙らせるように、エテリナは続ける。


「ならばお父様は、陛下と姫様が結婚してすぐに不和になられた時に、何か責任をお取りになれるのですか?我々の主家であるクレィル家に対してもですよ?」


 こうして、アンダーソン子爵も娘の剣幕に沈黙するのであった。

 しかしさすがに八歳の弟のライルが「お姉様が怖いよぉ。」と泣き出すと、ようやくエテリナの口は止まり、「ごめんね。ライルに怒っているわけではないのよ。ごめんね、ごめんね。」と、可愛い弟に平謝りをするのだった。






「え?エテリナがそんな手配を?」

 ユーヤとマリオンの食卓での会話である。


「ごめんなさいね。あの子ったら、近頃異常に押しが強くて…。」


 実はマリオンは本気で困っている。ジードと恋仲になってからの彼女の性格が、以前よりも日増しにパワーアップしていて、逆にマリオンが委縮する場面が増えているのだ。


「大丈夫だよ。俺もその辺は元々自重する気でいたんだし。だって、結婚式初夜だぞ?い、致せなくても、大事な日に他の女の処になんか行かないって。」


「良かった。」と微笑むマリオンに、ユーヤは今まで聞くに聞けなかった事を口にする。


「なあマリっぺ。なんか変な形で許嫁になって、それでもってデキ婚になっちまってるけれども良かったのか?」

「え?なんでそんな事を?」


 突然の問いにマリオンの表情は、戸惑いの色を見せていた。


「いや、マリっぺは元女神様だろ?神界的にヒトと交わるのって大丈夫なのか?マリっぺがこのまま神界から追い出されたりって事はないよな?」


 ユーヤの表情は、いつになく真剣だった。それに対してマリオンは微笑しながら答えた。


「ユーヤの世界の神話の神々も、相当奔放だったはずよ。それにね、実を言うと貴方と結ばれたのは、この子…私の妹の子孫であるマリオネートの意思でもあるの。」

「え。マリオネートの?」


 マリオンは目を瞑り、顎を手の上に置きながらマリオネートの事を語り出した。




 マリオネートは女神マリオンとの親和性の高さから神託の巫女であった。そんな事情から十の時には王宮に出入りを許されるようになり、まだ王子であった頃のアレクソラス十三世ユーヤ・クノンと出会う。


 紅い瞳の少女は、いつしか同い年である金髪の王子に恋をしていた。

 しかし、相手は王族である。いくら慕ったところで叶うべくもない恋だと思い、いつも遠くから王子様を眺めていた。


 そしてもっと長い時間王子様を眺めていられるように、彼女は十四の時に騎士団に入隊した。騎士の仕事でも、巫女としても会えるように。


 そして、運命は動いた。


 事故によって魂は希薄となってしまったが、恋に焦がれた王子様と戦神様の神託によって許嫁の関係になれたのだ。

 元々は許されざる恋と思っていた恋の成就。それ故にウテナとの関係も、逆に許せるのであろう。


「最初の夜もね、私が酔っていたせいもあるんだけど、半分以上はマリオネートが望んでユーヤと一つになったのよ。今まで素面(しらふ)の時でも何度も逢瀬を重ねて来たのは、半分はこの子が望んだからよ。」


 マリオンは慈しみのある笑顔を浮かべた。ユーヤは黙って彼女を見つめていた。


「この子は私の妹の子孫よ。謂わば姪みたいなものよ。可愛い姪っ子が夢見たものを、私の都合で奪う事なんて出来る訳ないじゃない。むしろ幸せになって欲しいもの。」


 そして近頃は、以前よりもマリオネートが表面に出て来ている時間が長くなっているらしい。魂の傷が、回復して来ているのであろう。


 自身の身体を抱きしめながら、うっとりとした笑顔でユーヤを見るその瞳は、マリオンのものなのであろうか?それともマリオネートのものなのであろうか?


 クラクラするような色香に、ユーヤは思わず唾を呑みこんでいた。

今回は気付けばマリオンとエテリナの回になっていました。

特にマリオンに関しては、マリオネートとの関係をもう少し掘り下げたいと以前から思っていたもので、指がほぼ自動書記状態でした。


ウテナに関しては、このまま独身でとも思っていたのですが、なんとなく親心みたいなものでこうなってしまいました。

まあ、奥様してるウテナを想像できないし、これしかないよね。と、云うのが結論です。


こうして描いてると、非常にユーヤがクズ化してきてるような…。

私には異世界の常識に染まって行く姿を描くには、純情なままって想像できなかったんです。

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