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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第1章 ―転生・ガロウ獣王国編―
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第拾四話 クーガーの不覚

書き込みながら寝落ちしている為か

近頃、不思議な夢ばかり見ています。

 元獣王国王都マジンゲルの東西に、リンドバウム連合国軍と愛理須皇国軍とが到着している中、北から進行しているベルツ帝国軍は、未だに姿を見せていなかった。

 事態を重く見たユーヤは、クレィル隊のくノ一部隊から数人を物見に行かせる。

 ウテナは現在、クレィル隊隊長代理として軍務に就いている為に動かせなかったし、ハンゾウは任務中である為だ。




 ベラホースを退けたベルツ帝国軍であったが、その前には予想以上の魔族が襲来して来ていた。


「くっ、多すぎるな。予定よりも進行が大分遅れてもいる。」


 ベルド皇帝は、唾を吐き捨てるように言った。カイザーブレードの前衛職である四人と帝国騎士団が奮戦し、その後方からはカスハド率いる魔導師大隊と、弓隊が魔法と矢による援護をしている。


「クリケイド隊全滅!アラル隊も損耗率が酷く、後退の指示を待っています!」


 既に五万五千の兵力の内、約五千もの兵を失っていた。


「仕方がない、アラル隊には後退指示を出してやれ!それとプライドが許さんが…他二国に救援要請を出せ!リンドバウム辺りなら支援してくれるやもしれん。同盟後方支援部隊にも念のため催促しろ。」


「この乱戦状態では後方は兎も角、二国への支援要請は届かない可能性があります。」


 参謀官が呻きながら進言した。しかし、そうも言ってられない状況な為、多少強引にベルドは使いを出させる。


 ―後方は多くて二千から三千位は出せる筈。あとは二国に使者が届けば良いのだが…。


 歯噛みしながらベルドは、一縷の望みを使者に託した。





 皇国軍への使者は、残念ながら魔王軍に全滅させられてしまったが、連合国軍への使者は三人を残して走り続けていた。

 しかし追手の足は速く、また一人が二人の目の前で魔獣に噛み殺されていた。完全に包囲されてしまったようだ。


 諦めと焦燥とが綯交ぜになりながら、二人は剣を振るっている。


 一人が足を噛み切られる。悲鳴をあげながらその使者も魔獣に屠られた。最後の一人となった使者は、自刃を覚悟する。奥歯を噛み、力を込めて迫る魔獣に一撃を加えて距離をとると、剣の切っ先を自身に向けた。


 ―陛下!申し訳ございません。


 しかしそこに煙幕が立ち込めたかと思うと、二人の女性が彼に肩を貸してその場から連れ出した。リンドバウム連合国影の軍団くノ一隊である。


 ―我が軍はこれで助かる…。陛下…。


 彼はそのまま安堵と疲労から気を失ってしまった。そして、半日後に連合国軍の陣にて目覚める事となる。





 マジンゲルから後方十五キロの地点で、帝国軍は野営した。誰もが憔悴している。なるべく灯りは点けず、必要最低限にして息を殺すようにしていた。


「現在の兵力はどれくらいだ?」

「四万八千程になります。」


 それ以上の問答をする気力が、既に帝国にはなかった。誰一人口を開かない。


 そこへ斥候が報告にやって来た。幾分か他の者より顔色が良い。


「先程、同盟後方隊より早駆けがありまして、明日には三千ほど合流出来るとの事です。」


 現状では朗報と云える。少しだけ空気が軽くなる。


「既に予定より二日遅れている。連合も皇国も気付いてくれる筈だ。取り敢えず、今日は休め。明日に備えるのだ。」


 気休めとも言える言葉であったが、ベルド皇帝の言葉に将兵達は頷き、軍議場となっていたテントから退室して行った。全ての将兵が退室し終わった時には、既に夜半を過ぎていた。


「頼むぞ、勇者王。」


 支援に対してであろうか、それともこの戦況の先についてであろうか。ベルドは一人呟いていた。







「獣王殿、貴殿に頼みたい。獣騎士と僧兵合わせて八千でお願いします。」


 夜半にクーガーを呼び、ヒューズが頭を下げている。疲れ切った帝国軍を鼓舞し、しかもこの元獣王国の地理に詳しい人材として今回の任に適任なのは彼を於いていまい。


「判り申した。ライガは置いて行きます。我の留守中、なんなりと申し付けてやってくだされ。」


 状況からして、非常に危険な任務であると思われ、クーガーは跡目であるライガを本隊に残すことにしたようだ。ヒューズは下を向き「このような任務をすみません。」と少し震えた声で言った。


「心配召されるな。ヒューズ殿が陛下に黙って我に頼んで来た以上、我が帰って来ねば貴公も叱責される。ならばこそ帰って来ましょうぞ。」


 ヒューズの両肩に、ガッチリと獣王の手が置かれた。

 そして半時程で獣王クーガーは出発して行った。帝国軍を救う為に。







 朝早く、斥候からの報せがベルド皇帝の耳に入る。


「陛下!リンドバウムが動いてくれたようです!あと一時間程で合流出来る見通しです。更に同盟混成後方隊も間もなく到着となります。」


 どちらも夜通しで駆けて来てくれているのであろう。ベルドは気合を入れるかのように眉を上げ、「すぐに全部隊に号令をかけよ!」と指示を出した。

 合流して来る者達のためにも道を開いてやらねばならない。会議場に着くや、各将兵にも気合を入れる。


「これより我が軍は、支援の者達の為にも決死で戦に挑め!これ以上は例えこのあと勝ち戦となろうとも、帝国の恥と知れ!我も前に出る!以上だ!!」


 檄を飛ばし鼓舞する。歴史に名が残るような戦である。ここでこれ以上醜態を曝すわけにはいかないのだ。帝国軍人のプライドをかけた戦いが始まる。





 クーガーは休息なしで夜駆けて軍を率いた。途中で魔獣の群れとの遭遇戦もあったが、構わずに突き進んだ。損耗よりも、今は一刻でも早く帝国陣営に辿り着く事こそが優先される状況だからだ。


 朝日が昇り、一刻も経った頃、前方から鬨の声が聞こえて来た。帝国軍が早朝から魔王軍に仕掛けたようだ。多少魔族側に混乱が見て取れる。


「我々もこのまま突っ込む!続けーーーー!!!」


 クーガーは大刀を振り回し、雑魚を斬り飛ばして進む。後から続く者達も声を上げながら突進して行く。


「おお!あの旗は獣王殿!獣王殿が来てくれたぞー!!」


 クーガーを見つけた帝国士官達の士気が上がる。そして、クーガーはベルド皇帝の方に案内されながら切り結ぶ。「移動しながらでも、一匹も多く魔王軍を斬り倒せ!!」とクーガーの檄が飛ぶと、帝国軍人達も釣られて声を上げた。


「獣王殿!よくぞ参られた!余はここじゃ!」


 ベルド皇帝がクーガーに手を振っている。それを見つけると、クーガーはその隣に騎馬を着けて会釈した。


「お待たせいたした。ご期待に応えるべく、奮戦いたしますぞ。」


 クーガーの引き連れて来た軍は現状七千八百、帝国は同盟混成部隊も入れて約五万。巻き返しの時が来た。

 クーガーがカイザーブレードに代わって先頭に躍り出て、カイザーブレードはそこから二手に分かれて魔王軍に攻撃を仕掛ける。

 昨日までと打って変わって攻勢に出てきた帝国軍に、魔王軍の一部はマジンゲルに遁走した。

 その乱れに乗じて、クーガーは更に敵陣中央へと駆け込み大刀を振るった。


「獣牙流戦闘術を味わうがいい!!」


 一振りで魔族が七人ばかり真っ二つになり、それを見ていた周辺の魔獣達も後ずさる。そこへすかさず、クーガー配下の精鋭達が飛び掛かって行った。

 その猛威に魔王軍は散り散りに逃げ惑い始めた。


「クーガー殿!後はお任せを!ここからは我らの仕事になり申す。」


 完全に帝国ペースになった戦況を見て、ブライが声をかけた。「おお、ブライ殿。済まぬ、少しはしゃぎ過ぎたわい。」と笑いながらクーガーは答えた。そして、すれ違い様にお互いの拳を軽く打ち合った。


 こうして、問題なく支援が完了するかと思われたその時、クーガー目掛けて魔法の火球が飛び迫った。「な、しまっ」クーガーは完全に油断をしていた。


 ドーン!と爆炎が上がった。

 クーガーの目の前で(・・・・)


 ブライが逸早く火球に気付いて、咄嗟にその身を挺してクーガーを庇ったのだ。


「ブ、ブライ殿!!」


 クーガーはその刹那に、ヒューズの息子に助けられた時の情景を思い出した。

 ―そう、あの時も我はちょっとした油断から危機に遭い、助けられた…。そして今も…。


 クーガーは火球の射線を目で辿ると、一気に駆け抜けてその射線の元に飛び込んだ。そこには、逃げ遅れた魔族が震えながら立って居た。

 それを見るや、無言でクーガーは大刀を振るう。刹那、魔族の首が宙を舞った。


 帝国はこの日、カイザーブレードの筆頭たる男を失った。

 後任にはその弟子であるゼフィールドが就く。

 クーガーは己の不覚を悔い、マジンゲル攻防戦にはそのまま帝国軍に随伴する事となった。ユーヤは事情を聞き快諾した。







 帝国が苦戦していた頃、連合国軍と皇国軍は休息を兼ねて一日待った後に、二国のみで作戦に移っていた。しかし、魔族は籠城の構えをとっており、同盟軍は攻めあぐねる事になる。


 ユーヤもヒューズもこれを見越してはいて、予め策の準備はしてあるのだが、帝国がいなければ策は万全とは言えない。また、いつ来るかも知れない魔王軍増援に対しても警戒せねばならず、悶々としながら攻城戦に取り組んでいた。


「今頃はクーガー殿は帝国軍の支援で奮戦しているだろうな…。」

「何事もなければ良いのですが…。」

「てか、作戦とは謂えたまに魔銃や、弓矢と魔法で軽く攻撃してるだけって…本当にいいんですかね?」


 現状は散発的な攻撃に止めている為、上級士官以上は暇なのである。

 かと言って本当に暇と云うわけではない。本国からの補給物資の中には攻城戦用の破壊兵器の部材も含まれている。その組立班は非常に忙しそうである。


「おら、そこ!何やってんだ!設計図をよく見ろ!」


 組立班では帝国軍の到着前に兵器を仕上げる為に、このように怒号が飛び交っている。本来なら既に組み上がっていなければならなかったのだが、補給隊の到着が遅れてしまい、このような修羅場となっていた。

 しかし、幸か不幸か帝国軍の到着が遅れているため、本番に間に合いそうな状況ではある。

 技術部組立班の夜は長くなりそうだ。

妙に急いだ展開になってしまいました。

反省してます。

あと数話でマジンゲル攻略を終わらせたいとの思いが逸らせてしまうようです。

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