第九拾四話 城塞への侵入
再編成が終わり、リンドバウム軍は纏まって次のポイントを目指した。それは地図で見ると、オーガ大陸東側の大きな山の上に広がる平原となっている。
恐らくそれなりに位の高い者が居るとすれば、ここではないかと当たりをつけたのであった。
その勘は間違ってはいなかったようで、魔王軍本隊とも言えそうな屈強な魔物や、魔族との遭遇戦の連続となった。
『マキビシシューター!!』
ウテナが叫ぶと、イザナミの袖部分から幾つもの大きなマキビシが発射され魔軍を襲う。
『閃光斬!!』
エレーナの一撃に幾百もの魔軍が光の中へと消えていく。
『2機とも一旦戻れ!そろそろ魔力切れだろ?それにそろそろロンが戻って来る頃だ。ロンに任せて一時休憩するぞ。』
『『了解!』』
魔軍の数は、放棄されていたクリスタル砦の比ではなかった。多少強い魔軍が出てきた処で飛空艦の魔導砲や機鋼甲冑の敵ではなかったのだが、その数に手を焼いていたのだった。
「くっそー。多勢に無勢とはこの事だな。損耗はどうなってる?」
ホエール1のブリッジから、ユーヤはヨーンと交信中であった。
『魔銃部隊が1割弱…重症者も出ています。各艦は持ち堪えてはいますが、其処彼処に損傷が出始めていますね。陸戦隊の方も1~2割ほど戦線から離脱して治療を受けています。』
ユーヤは目を閉じて思案する。この戦場の突破口を求めて。
「よし。賭けに出るか。セイト号を中心にして展開させ、アレを使うぞ。」
『突撃ですか?』
「そうだ。その為の装備だ。使うなら今だ。」
ホエール級以外の各艦が、セイト号を守るように布陣する。そしてセイト号は大型ドリルを起動させるのだった。
『各艦、セイト号は航行用エンジン1基を残して全エネルギーをドリルに集中させている為、速度が出ない。これに合わせて航行せよ。』
ヨーンの指令が響く中、ユーヤは立ち上がると、ホエールの副艦長にホエールの指揮を任せてアナトへと走った。
「マリっぺ早いな。もう乗り込んでるなんて。」
「一分一秒が命取りになる状況だから、降りずにここで休んでたのよ。」
そう声をかけながら、即座にユーヤはモーションアームを腕にはめる。そして回線を開いた。
「ウテナとエレーナの各組はもう少し休んでから出て来てくれ。俺はセイトの援護に赴く。カタパルト、発進用意できてるな?」
『は!陛下、準備は整っております。』
「よし!アナト出るぞ!!」
早口で指示を済ませ、アナトが再び射出された。その行く先はセイト号周辺域である。カタパルト射出の勢いに瞬絶を上乗せして、一気にその空域に移動すると、腰に装備されたある物を取り出す。
「マリっぺ、技を借りるぞ。」
「え?なになに?」
アナトの腰には巨大な太刀以外に、丸い円盤が2つ装備されている。これを射出すると、アナトは魔力で作った糸をその円盤に絡ませた。
『あ、あれは!超魔力ヨーヨー!!?』
モニターを見ていたウテナが叫んでいる。サクヤがわざとらしく「な、なにぃ!!?」と横で驚愕の表情をしているのがモニターに見えたが、ユーヤはスルーする。
ヨーヨー…円盤の側部に鋭い刃が出現する。それをアナトが器用に振り回す。しかし、ユーヤは慣れない操作に戸惑っているようで、相手に掠りもしない。
「ああ、もう!代わるわよ!シフトチェンジ!!」
マリオンが焦れたようだ。
「ここまで設定してくれてあれば、私にも出来るわ。行くわよ、アナト!!」
縦横無尽に刃の付いた円盤が魔軍を切り刻み、そして蹂躙する。しかし、円盤は美しくも華麗に宙を舞い、その凄惨さを掻き消してくれていた。
「これが使えると云う事は、応用技のこれも出来る筈よね!!」
そうマリオンが叫ぶと、円盤から魔力の糸が外され、ブーメランのような軌跡を描いて幾つもの魔族を斬り裂いた。そして円盤は弧を描いて返って来ると、再び魔力糸に絡まる。
これを繰り返す事によって広範囲の魔族を打ち倒していった。
『あ、あれは…伝説の…超魔力コマ!!?』
操縦から魔力供給に回っているユーヤは、余裕からか今度は「はいはい。」と答えていた。
「ユーヤ、これって穿孔蹴りも出来る?」
「操縦者の力量次第じゃないかな?」
「では、試しに雷撃蹴りの方をやってみるわね。」
「え、なにそれ―」
ユーヤのツッコミが聞こえるか聞こえないかと云ったタイミングで、アナトが急上昇をし、全身に雷撃のスパークを纏った。
「待て、これ聞いてな―」
そこから一気に脚から蹴りの体勢で、急降下をアナトはしたのだった。
ズババババーと雷撃のスパークを発しながら、その直線上の魔族達が焼け焦げ、そして吹き飛ばされて行った。
『おおおおお!!?ウテナ!あれはスー○ー稲妻○ックではないか!?』
『そうです!あれもまた伝説の一撃ですよ!!』
ユーヤはこの時、その急機動急制動で舌を噛み、そして呻いていた。
アナトはその蹴りによって出来たクレーターの真ん中で、両手を広げて膝を付く格好になっている。そして調子付いた女神は、そこからまた一気に空中へと飛翔する為にペダルを思い切り踏み込む。
今度は地表からのスーパー…いや、雷撃蹴りである。
承知も覚悟もなかったユーヤが、操縦席で悲鳴を挙げていた。が、その叫びは雷撃のスパーク音と、魔軍との衝突音で掻き消されていたのだった。
「アナト、上出来よ♪すっごい気持ち良かったわ♪」
空中で制止するアナトは、セイト号の眼前に居た。
マリオンは何かを発散していたようだ。それが何かは聞くまい。その横の操縦席には、ゼーゼーと息を切らせるその旦那が居たが、今の彼女の目には入らないらしい。
「あ、アナト、し、シフトチェ――」
「もう一撃喰らいなさい!!次は竜巻穿孔蹴りよ!!!」
ユーヤが蒼ざめるのを待たずに、今度は風を纏ったアナトが激しく回転を始めた。
「待て!乱発すると俺の魔力があああ――」
それはセイト号に道筋を作るかのように、艦隊の目の前を突き抜けて行った。そして、その一撃は敵城塞を突き抜け、魔族陣営の只中にアナトを立たせる。
全長25mの巨人の乱入に、魔族軍が混乱をする中でアナトは更に加速し前進した。
その場に立ち尽くしていては、セイト号の大型ドリルに巻き込まれる為逃げた、と言っていい。
直後にアナトが開いた城塞の穴が、大型ドリルによって更に抉じ開けられた。その場に居た魔族達は、アナトに気を取られていた為に気付くのが遅れて、次々とドリルに巻き込まれていく。
それは、悲鳴を挙げる間もない出来事であったのだった。
セイト号が逆噴射をして下がると、そこからロンの機鋼甲冑隊が侵入する。遅れてイザナミとエンリルも到着した。
『凄かったですね!アナトでの超魔力スピンは!』
『うむ!あれが噂に聞こえたマリ姉様の必殺技ですね!!ハートが震えました!!!』
そんなツクヨミ姉妹をスルーして、ロンとエレーナがアナトを探している。
『まさか陛下とお妃様、今ので吹き飛んでやしないよな?』
『姉様と義兄様のことなので、大丈夫だとは思います。』
『となると、陛下達はこの先に行ったのだろうな。我々も急ごう。』
『『『了解!』』』
「マリっぺ…あのな、用量用法はよく読んでお使いください。と云う言葉を知っているか?」
「あー、薬に書いてあるやつよね。」
「いや、今ここでそれを言ってる意味を悟れよ!!」
ユーヤは魔力の消費のし過ぎで、マナドリンクを片手に青筋を立てている。一方その奥方は「てへっ!」と舌を出していた。
そんな状況である為、今はユーヤが操縦をし、マリオンが魔力供給役となっていた。
「まったく。咄嗟に魔力供給の割合を、俺の方に思い切り振ったからマリっぺは平気だろうけどな。あともうちょいで俺が失神するとこだったじゃねーか。」
そう言いながら、ユーヤの操るアナトは、目の前に居たゴーレム達を太刀で斬り伏せる。
「ついつい自制が利かなくなっちゃって~、えい!やー!みたいな?」
「みたいな?じゃねえ!最後のは目が回ったんだぞ!!」
そしてまた、アナトは斬りつけていた。
この城塞の通路はいやに大きく、アナトでも楽々動ける程であった。現れるゴーレムも10m近い個体が多く、この城塞の持ち主の大きさを想像させる。
「なあ、これっていきなり大当たり…魔神の城だったりしないよな?」
「どうかしら?少なくとも魔王クラスが居るって事じゃないのかしら?」
そうしてアナトが進んで行くと、巨大な扉の目の前に到着した。
「うーん。急ぎ過ぎたな。ロン達を待つか。」
そうユーヤが言うや否や、扉が突然独りでに開き始める。二人は表情を引き締める。ギギギギギと音を立てながら、その動きは止まりそうもない。
「どうやらご招待されてしまったようね。」
「ああ、参ったな。まだ俺の魔力も回復しきってないってのに。」
薄暗い通路に、少しずつ扉の向こうからの光が差し込んで行く。
アナトは…ユーヤ達は、息を呑みながらそれを見守るのであった。
真面目にやり過ぎると私がショートしてしまう為
毎度毎度お遊びに走ってしまいます。
ごめんなさい!
今回はちょっと色々やり過ぎたかもしれません。
※雑記
ブックマークありがとうございます。
またやる気がムクムクと…
って、ああ!今は休筆中だってば!(そう言いながら、更にAPPENDIXの話数が増えている今日この頃。。。)
また、ちょっと怖いけれど
評価も頂けたら、もっと頑張っちゃうかもしれません(笑)




