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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第5章 ―オーガ大陸激闘編―
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第九拾参話 ひとときの休息

 アぺプカガチがかつて治めた領域で発見した地図を元に、クリスタル砦に於いてヨーン達参謀部が新たに作戦を練り上げる。…と言っても、オーガ大陸の全体像と地形が判明したのみである為、考えられる作戦要綱も少なかったのだった。


「地形が判明しました事で、2班に分ける必要性が減りました。故にこれよりは進撃部隊を統合し、一塊(ひとかたまり)となって進みたいと思います。異論はありませんか?」


 ヨーンが指揮官達を見回す。皆同意のようで、手を挙げる者はいないようであった。尤も、未知の大陸を進むのだから、参謀部に付き従うよりないとも言える。


「そういうわけで、ここからはこのクリスタル砦と我々の作った拠点を休息地として利用し、駐留防衛艦隊自体はこの二つに分ける。ただし、働き方改革を推進する我がリンドバウムとしては、これからは進撃部隊と半待機である防衛部隊を交互に入れ替えつつ作戦行動を進める。」


 ユーヤの言葉に、一部の将校がホッとした表情を見せる。連日の戦闘で兵達に疲れが見えているようだった。


「それに伴い、一部の編成に変更を加える。現ホエール1番艦艦長カスバドをこのクリスタル砦の防衛指揮官として配置し、ホエール1は俺が預かる。拠点の防衛指揮官はゼフィールド。あいつを乗り物に乗せるわけに行かないのでこうなった。」


 そうユーヤが苦笑しながら告げると、将校達から軽い笑い声が漏れる。主に元帝国軍将校達からである。ロンはさすがに苦笑するに止めていた。


「陛下、それで半舷休息の割り振りはどのように?」


 割と矢面に立っていたアイリス方面軍司令、テンゴウであった。


「任せてくれよ。アイリス方面軍はこれよりこの砦で半舷休息及び防衛。お気付きだろうがここにいないレギオン部隊はトライデル号で拠点に向かっている。そして、そこからセイト号とマジンゲル号がこちらに向かって合流して来る手筈になっている。」


「そうすると、残りの我々はその次の日若しくは、次の戦闘後と云うわけだな?」


 頷きながらベルドが質問した。


「ええ、まだ明確な交代のタイミングは決めていませんが、少し疲れをとるためにも2~3日は1日交代を考えています。」


 ヨーンの答えに皆頷いている。


「ふむ。そうすると今日は全部隊が半舷休息と云う風に考えていいわけですな?」


「確かにそうなりますね。ソーウン殿、何か気になる事でも?」


 ユーヤの問いに、ソーウンが苦笑する。


「いやいや、ベルド様も私もいい歳なので、少し休みたいと思っていただけですよ。」


「我を巻き込むとは…この知恵者め。まあしかし、確かに本音はそこだな。」


 二人は目を合わせると、がっはっはと一緒に笑っていた。


「そうですね。急いては事を仕損じるとも言います。今日はゆっくり休むとしましょう。」


「そうですな。ただ…陛下は羽目を外さぬようにお願いしますな。」


 ソーウンのこの言葉に、会場が笑いに包まれる。ユーヤは額に汗を数条垂らしてしていた。


「さあ、皆陛下の目の届かぬ処で酒盛りをいたしましょう。我が隊のホエール2に、既に酒席を用意しておりますのでお越し下され!」


「「「おお!!」」」


 最後は完全に空気をソーウンに持って行かれ、ユーヤは仕方なく一人ホエール1に戻るのであった。





「にゃ?陛下?どうされたんですにゃ?みんな2番艦に行ったみたいですけども?」


「う、う、う~~…それを聞くなよ。キャシーなら何故かわかるだろう?」


 ユーヤは涙目をして見せる。


「あ、あー…ご愁傷様にゃ。」


 などと二人がブリッジで駄弁っていると、アルルがおずおずとしながらブリッジ内に入って来た。


「なんだアルル?リンドバウム号で何かあったのか?」


 いつの間にかキャシーが2番艦から奪取して来たつまみを頬張りながら、ユーヤとキャシーはキョトンとしている。アルルは下を向きながら何か言いたげであった。


「あ、あの…ですね。陛下、そしてキャシー…。この間は…申し訳ありませんでした!!!」


 ユーヤの口元からは、ツマミのイカがポロリと顔を出している。キャシーの口からは焼き魚の尻尾が顔を出す。


「どうしたどうした?泣いてるのか?らしくないなあ。」

「アルル、にゃにか悪い物でも食べたのかにゃ?」


 アルルは二人の反応に『え?私ってばどんなキャラに見られてるのよ?』と少し困惑する。それこそ出かかっていた涙も引っ込む程に。


「だ、だからですね!この間のリンドバウム号の事ですよ!その謝罪に来たんです!!」


 既に謝罪する人の態度ではないが、それは彼女の気性が見せるものとしよう。


「なんだ、まだそんな事を気にしてるのか?」

「にゃんだ。またウテナ様のドッキリかにゃにかかと思ってしまったにゃ。」


「待てコラ!この新婚!!なんだとはなんですか!?こっちは決死の思いで謝りに来たって言うのに!!」


 青筋を浮かべるアルルに対して、ユーヤとキャシーが二ッと笑う。


「よしよし。元のアルルに戻ったな。」

「アルルはこうでにゃいと。逆にさっきまでが怖かったですにゃ。」


「うっさい!勝手に私のキャラを決めんなバカ夫婦!!」


 そんな風にワイワイやっていた為か、そこへ奥方衆+αが乱入する。


「なになに、この騒ぎは?…まさかユーヤ!今度はアルルに手を出したんじゃないでしょうね!!!」

「私は今更側室の一人二人増えても構いませんわ。」

「ダメですよ!陛下を独り占めする順番が回って来るのが、遅くなるじゃないですか!!」

「何を言っているのじゃウテナ。そんなものは横から掻っ攫えばいいだけの事。ひっく。」


「はいはい。マリもウテナもおカジも勘違いするなよ。ついでにサクヤ姫もな。」


 ブリッジ内が更に喧しくなった。サクヤはついで扱いされた事が悔しいらしく、頬を膨らませている。


「なんで私だけついでなのじゃ!?いつも一緒に居るじゃないですか!ふいっく。」


「サクヤ様?…そこはそう言う問題ではなく、夫婦かどうかの立て分けかと?」


 何故かアルルが冷静になっている。


「ひっく。ならば愛人になってしまえばいいんですね?」


 サクヤは本気度100%のようで、瞳にはメラメラと炎が宿っていた。


「いや、それも違うだろ?」

「不味いです。サクヤ姉様が本気の瞳です。」


「てか、サクヤ姫?お酒臭くない?」


「あ…確か先程までソーウン様に清酒を勧められておりました…。」


 ほんの少しの()の後に、おカジが告げた一言に一同は戦慄する。


「え…サクヤ様酔っぱなんですかにゃ?」


 奥方衆がスーっとユーヤをガードするように、その周りを囲む。


「なんとしても死守するのよ!!」

「は、はいにゃ!奥方様!!!」

「さすがにツクヨミ家ばかりに寵愛が傾くのは、看過できませんわ!!」

「皆さん気を付けてください。敵は忍術と妖術を使います。油断が命取りになります。」


 アルルは呆けてしまっていた。何度か見てはいたけれど、なんだろこの家族は?と。


 そこへ九字を切ったサクヤが、煙幕を焚く。…いや、ここブリッジ内だよ。おい?


 ウテナが四方に気を探るが、その所在を掴めないようだ。額には汗が流れている。すると彼女らの後ろで「うっ!」と声が挙がった。


「ふはははは!確かに兄君は頂いた!!さらばじゃ!!!」


「し、しまった!!」


 マリオネートが焦って振り向くと、ドン!と勢いよく誰かとぶつかる。そしてその感触を確かめる。


「あにすんだよ。人のほっぺた引っ張って。」

「あれ?ユーヤ?攫われてなかったのね?」

素面(しらふ)の俺がそう簡単に攫われるわけないだろ?」


「では、姫は誰を…?」


 おカジが神妙な顔で、煙幕の薄れてきた室内を見回す。


 ユーヤは居る。マリオネートも居る。おカジは勿論健在。ウテナも居た。キャシーは…煙幕にゲホゲホ言っている。


「全員居るみたいですね?はて?」


「ゲホ。アルル何処ですにゃ?」


「「「あーーー!!!」」」


 その日、間違えられて攫われたアルルは、グルグル巻きの簀巻き状態で、泥酔したサクヤの枕代わりにされていた処を発見されるのであった。


 彼女の不運は続く…。

ええ。

お遊びに走りました。

遊びに走るのにいい素材が集まってきてまして

ついつい…。

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