第九拾弐話 宝の地図
オーガ大陸東側にあるクリスタルで出来た砦を攻略中のリンドバウム軍は、その旗艦を再びリンドバウム号として制空権を握りつつあった。
そこでユーヤ達は機鋼甲冑部隊を空中戦闘から地上戦闘へ移行させる。
『なんでしょうね…以前はグリフォンとか鵺とか結構脅威だったはずなんですけれど…この機鋼甲冑があれば、そう云った中級以上の魔獣も全く怖くないんですよね。』
「まあ、そういう相手の為に造ったんだから当然だな。」
そんな無駄話をしながらも、地上にいる魔族やら魔獣やらを機鋼甲冑部隊は掃討して行く。
その後方をバイクなどの車両に乗ったフル装備の騎士達が追随する姿は、何処かシュールな風景であるかもしれない。
『あ、噂をすればグリフォンめっけ!ウテナ行きますよ~!』
『ちょ、サクヤ姉様!先行し過ぎるとテンゴウ様に怒られますよ!』
ツクヨミ姉妹は、またシフトチェンジしたようである。
『さあ!喰らうのです!!』
そう叫ぶとサクヤ…イザナミは某七つの玉を巡る冒険アドベンチャーの主人公の主力技のような構えをとった。
闇魔力を合わせた手に集中させて、機体の前面に腕を突き出すと、暗黒とも紫とも見える闇を纏ったエネルギー弾が発射された。
『闇魔法!華冥刃鳴弾!!!』
ユーヤは安堵する。弾で良かった…。覇とか波だったりしたらどうしようと思ったらしい…。
うん。不味いよね。ルビの内容もどうかと思うぞ。
その闇のエネルギー波に、グリフォンは叫びをあげながら呑み込まれ消滅していく。
「サクヤ姫…オーバーキルだと思うんだよ。今のは魔力が勿体ないから控えてくれないか?」
『あーい。』
ギリギリのネーミングの技に、サクヤを止める良い言い訳が思いついたと、ユーヤは額に汗を流していた。
『陛下。こちらヨーン。砦外部の残敵はほとんど見受けられなくなりました。』
「了解。では、こちらは白兵戦に移行する。引き続き周囲の索敵及び、迎撃を頼む。じゃあマリっぺ、アナトを頼む。」
「はいはい。アナト、ちゃんとこの女神兼正妻様の言う事を聞いてね。」
『わかっております。ところで私の序列はどの辺りになるのでしょうか?』
「あー…メルティが輿入れする前だから、おカジの次かなあ?」
ユーヤは青紅の鎧を着こみながらアナトに答えた。マリオンも「あ、そうね。そうなるかもね。」と冗談とは思えない反応を見せていた。
こんな冗談めいた内容の話しに、本気のような対応をしてくれる二人に、アナトは喜びを隠せずにいた。モーションアームを誰も付けていないのをいい事に、激しく身振り手振りしているのだ。
そして身支度を終えたユーヤは、二人に対して「行って来る。」と軽く手を挙げてコックピットを出て行った。アナトはユーヤを手の平に乗せて静かに降ろす。
「ありがとうな。アナト。ちゃんとマリっぺを守ってやってくれよ。」
『はい。任されました~!』
クリスタルの砦へと走りながら、ユーヤは考えていた。所々にウテナの昔の癖とかが入っているのは、やはりこの間の戦闘の時の影響だろうか?一回オーバーホールすべきなんじゃないだろか?と。
ユーヤが走る横に件のウテナがいつの間にか追いついていた。イザナミのお留守番はサクヤのようだ。そしてテンゴウとソーウンの二人も、ユーヤの横へ走って来る。
「なんだ、そっちの2番機はソーウン殿だったのか!」
「はっはっは!まだまだ若い者には遅れをとりませんぞ!」
遅れてロイエルも追いつく。こちらはエレーナが留守番のようだ。恐らくロイエルの前で着替えるわけにもいかないので残ったのだろう。
「おや、これは残念。ツインテールの剣聖様が来ると思っていました。」
ロイエルの姿を見たソーウンが、笑いながら言う。
そんな冗談を交わしている間にも、クリスタル砦からぞくぞくとゴブリンやらオーガやらが出て来る。しかし、剣聖、槍聖、ニンジャマスター、更には勇者の相手ではない。
「おら!新開発の技だ!有り難く受け取れ!!」
――蒼炎斬!!
戦神の剣技とリンドバウム王宮剣術を合わせた技だ。剣筋は王宮剣術のそれであるが、そこに戦神が得意とした火系の魔法をミックスした剣技を混ぜたもので、蒼い超高温の炎を纏った剣技である。
その剣先に触れたゴブリンやオーガが燃え尽きて行く。更にその炎は、相手を灰とするまで止まる様子はなかった。
「ふむ。大技に比べれば魔力消費は少ないが、範囲が狭いなあ。」
「旦那様?充分大技っぽいんですけれど?」
「さすが勇者王殿!この乱戦の中で新技のテストとは、余裕ですな!」
「そう言うソーウン殿もまだまだお若い!!」
ユーヤ達が入り口付近の敵を切り崩して行くのを、騎士達が追随する。そこへようやくおカジ率いるヴァルキュリアと、諜報隊が追いつく。
「ウテナ様!遅れました!!」
「いえ、良いタイミングです!諜報隊は私に付いて壁を登りましょう!目標はあのテラスみたいなとこです!!」
「「「了解!!」」」
そう言うが早いか、諜報隊は次々と壁を登りだして行った。
「ヴァルキュリアの一部隊は、アナトや機鋼甲冑周辺の警護を頼む!」
「はい!陛下!!」
ユーヤからの指示をおカジは即座に実行に移す。主に魔銃を扱える者を選抜したようだ。
「陛下、ここからはウテナ様に代わりまして私がお供いたします。」
「ああ、頼む。」
「おお!おカジ!陛下と仲良くやっているようで安心したぞ。」
「これは御大様。お元気なようでなによりです。」
そんなご挨拶をしながらクリスタル砦の中に入ると、鉱石系ゴーレムの大群がお出迎えする。総勢50体は居ようか?
「ここは我が行こう!!閃光斬!!!」
テンゴウがクサナギを振るえば、眩い閃光がゴーレム達を包み、石塊へと変えていく。
「コタロー!今こそお主の出番じゃ!!」
ソーウンがそう叫ぶと、ソーウンの影から鎖帷子を着こんだ大男が現れた。
「ソーウン様、コタロー・フウマここに。」
「うむ!然らば陛下にその力を見せるのじゃ!!」
「御意。」
その男コタローは片膝を付いた状態から、そのまま分身して本体と会わせて10人になった。
10人のコタローは立ち上がると縦横無尽に飛び回り、次々とゴーレムを薙ぎ倒す。その戦闘速度は、ユーヤの目でさえも追い切れない程の速度であった。
「これこそが、レジェンドと呼ばれる真のニンジャマスターの力です。」
ソーウンのその言葉に、ユーヤは息を呑む。
「凄い…。ウテナよりもハンゾウよりも動きが早い。気を抜くと彼の気配を読めなくなりそうですよ。」
「ほほう…さすが陛下ですな。私にはさっぱり追えませんよ。」
「よく言う。気付いてるぞ。お前さんの『目』はあの鷹だろ?」
そうして高い天井を見上げると、砦内を一羽の鷹が旋回していた。その鷹こそがソーウンの相棒『クラウド』である。
「よくクラウドに気付きましたな。あれは確かに我が目、我が相棒です。クラウドのおかげで本来目に追えぬものも追え、見えぬものも見えるのです。」
ソーウンとクラウドは、特殊な術によってお互いの視界を共有出来るのだそうだ。それによって彼は、動乱に於いても素早くリンドバウム軍の動向を読み、早いうちからツクヨミ家へ連絡を取れたのだった。
「で、どうだ?戦況は。」
「まずまず、ですな。ウテナ様が上階で道を作ってくれたようです。我々も急ぎましょう。」
ソーウンがそう告げた時には、テンゴウとコタローによってゴーレムは全て殲滅された後であった。
2階に辿り着くと、ウテナを筆頭として諜報大隊員達が片膝を付いてユーヤを待っていた。久しぶりに見る光景である。
「お待ちしておりました旦那様。食事になさいますか?お風呂に――」
「ウテナ…まだ終わってないだろ…。」
「つれないですね。久しぶりだったのに…。」
ちょっとウテナはブーたれているようだ。諜報隊員達は久しぶりのウテナの指揮にニコニコしている。彼女達にとって、どんなに困ったちゃんであってもウテナは愛すべき上司なのであろう。
テンゴウはサクヤの免疫もあって慣れてしまっていたようだが、ソーウンはさすがに目を白黒させている。おカジは…やれやれと言った様子である。
「それでウテナ、何か発見できたのか?」
「はい。一応地図らしき物を見つけました。あと、ここの本来の主も判りました。」
「本来の?」
ユーヤは地図を広げながら、ウテナに言葉の先を促す。
「はい。ここは本来はアぺプカガチの砦であったようです。先の戦いでカガチが死亡した為、今は単なる魔族や魔獣の巣となっていただけのようです。」
それを聞いたテンゴウは溜息を吐きながら呟いた。
「ハズレであったか…。」
「いえ、そうでもないですよ。こんなお宝が手に入ったのですから、大当たりと言って良いでしょう。」
ユーヤは地図をテンゴウに見せる。そしてこの地図がほぼ正確である事を示す為に、自分達が調べた拠点周りの地図も取り出し見比べさせた。
「確かにこれはお宝でありますな。残念な事は、これに魔族の城などの拠点が描かれていない事ですが…。」
「ええ。でも地形によって大体の推論は立てられると思いませんか?」
「なるほど…。」
その後ヨーン達とも協議して、拠点からここに1大隊を配置して防衛させる事として、地図を元に今までよりもしっかりした進攻ルートを作成するのであった。
七大幹部のうち六人も倒しちゃってるので
空き城が多そうです。
ここからどう見つけさせるか
非常に悩んでおります。




