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リンドバウム王国記~転生王ユーヤ~  作者: 三ツ蔵 祥
第5章 ―オーガ大陸激闘編―
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第九拾壱話 揺れるリンドバウム号

 リンドバウム号とトライデル号がホエールを挟むような陣形でオーガ大陸の東側を進む一行は、砦と思わしきクリスタルで出来た建物を発見するとテンゴウとベルドに連絡を入れる。


 テンゴウ達が合流するまでの間、ユーヤ達は一旦近くにある渓谷に退避していた。


「陛下、まだリンドバウム号に戻らないのですか?」


 さすがにヨーンは心配になって来ていたようだ。落着きがない。


「一戦やって様子を見る。そう云っただろう?緩みきった連中に、少しお仕置きをしてやらないとな。いくら不敬罪を緩めているとは云え、上司に対しての態度としてあれは酷い。」


「まあ、不敬罪とすればあの女性士官全員、本来なら首が飛んでおろうな。そこへ来て軍規に当てはめれば銃殺…とはいかなくとも、何らかの処分は必要じゃろ。」


 カスバドが同意する。


 ユーヤは以前から艦の空気が気になっていたのだ。確かに自由を愛する国家としてリンドバウムを運営して来たが、命令系統の順守などは軍として重んじなければならない。


 しかしここの処本国に属する艦隊…特にリンドバウム号の空気は異常だと感じていたのだ。


 どこかエリート部隊を気どり、陸戦隊員や海上艦隊員を軽んじるような雰囲気があったのだった。そこへ来て、今回の騒動に於ける上司への軽はずみな対応である。


 ユーヤはお冠なのだ。


 しかしユーヤも内心、確かに今回は自身が撒いた種でもあり反省はしていたのだが、どうしても一回やり込まなければ気が済まないようだった。


 そうして暫くすると、ガリアン号とコンゴウが姿を見せた。2艦の姿を確認すると、ユーヤは告げる。


「キャシー、全艦隊に通達。各艦兵員の準備が出来次第に出航する。陣形は4-2だ。」


「了解ですにゃ!各艦に通達。これより――」


 リンドバウム軍進撃部隊全艦がクリスタルの砦を目指す。先頭をリンドバウム号とガリアン号、その後方にトライデル号とコンゴウ、そしてホエール2隻が続く。


 そんな中、ベルドとテンゴウから通信が入る。


『おいおい勇者王。座乗艦が変わったのならば連絡してくれんか。知らずにリンドバウム号に通信を入れてしまったぞ。』


『陛下。この編成には何か策でもおありか?』


「すいません。二人への連絡を忘れていました。現在もうお気づきでしょうが、リンドバウム号の指揮はアルル嬢にやらせています。故に旗艦はホエール1になります。」


 モニターに映る二人の表情はどこか微妙である。どうやらリンドバウム号は、お粗末な対応をしてしまったらしい。


『このような編成で勝ち目はあるのか?心配だぞ。』

『右に同じですな。』


 ユーヤはリンドバウム号の方向を見ながら笑みを浮かべる。


「やってもらいますよ。いえ、やらせます。こんなまだ始まりの場所で堕ちるようなら、あの艦もそれまでです。」


 どこか冷酷な言葉ではあるが、ここを乗り切ってもらわなければ、ヨーンが戻ったところで何も変わらないだろうとユーヤは思っていた。


「陛下、敵影来ます!飛翔系魔族と魔獣です!」


「よし!全艦砲撃態勢!!俺はヨーンと替わってアナトで出る!」


「ラジャー!全艦に告ぐ、砲撃態勢に移行せよ。各ホエールの機鋼甲冑は発進用意。繰り返す――」


 通路を走るユーヤとヨーンがすれ違い様に拳と拳を合わせる。この二人は多少の言い合いをしても、その息はいつもピッタリのようだ。


「頼んだぞ!」

「はい!頼まれました!」


 お互いに後ろも見ずに手だけを振って、互いの持ち場へと急ぐ。


『マスター、お待ちしておりました。既に女神様はご搭乗になっております。』


 アナトの音声は嬉しそうに高揚しているようだった。


 乗り込むと、マリオンがニヤニヤしながらユーヤを見る。


「アレクソラス13世閣下は本当におもてになりますわね。こんな大きな愛人までいらっしゃって。」


「はいはい。ほら、お仕事お仕事。アナト、出るぞ。」


『お任せを!』


 そう言うと、アナトは発進態勢を取った。後ろでは、イザナミとエンリルが動き出す。そしてアナトがカタパルトに足を掛けるとユーヤは全回線を開いた。


「これより機鋼甲冑部隊発進する!各艦は間違えて撃ち落としたりするなよ!!」


 ユーヤはサムズアップをしながら微笑む。


『マジンゲル了解。』

『トライデル了解。』

『コンゴウ了解です。』


 各艦からの応答が入る…が、リンドバウム号からの応答がない。


「リンドバウム号!どうした!!返事をしろ!!!」


『は、はい!申し訳ありません…。リンドバウム号了解です。』


 キャシーがいない為、艦長代理であるアルルが答えた。相当堪えているようで、目の下が黒くなっていた。


「指揮官がそんな顔をするんじゃない!ちゃんと前を見ろ!目を見開け!!」


『はいっ!ご、御武運をお祈り致します。』


 ユーヤは通信の切り際に、優しい笑顔を投げ掛けた。『よし。よく出来た。』と、云う意味だ。


 そこへ管制官からの連絡が入る。カタパルトの準備が出来たとの事である。


「アナト、発進!!」


 カタパルトを滑るようにアナトが押し出される。2番、3番カタパルトからもイザナミとエンリルが飛び出した。


 ホエール2からも3機の機影が射出されている。これら6機は空中で合流すると、アナトとイザナミを先頭に陣形を組んだ。


 各艦の向こう側では、魔導砲や機銃によって次々と落とされていく魔軍の群れがあった。


「今回は殲滅しつつ、あの砦の奪取を試みる。何か情報が得られるかもしれないからな。戦況が落ち着いたらホエール1部隊は機体から降りて、騎士達と合流し砦内を捜索。いいな?」


『『『了解!』』』


 号令と共に各機は魔導ランチャーを斉射する。飛空艦以上に自由の利く機鋼甲冑の魔導ランチャーの攻撃に、魔族は少しずつ後退を始めているようだった。


 後方ではホエール2艦が地上に着陸して、陸戦部隊を放出していた。バイクやジープが荒涼とした大地を駆け巡る。


 空中ではベルドが怒鳴り散らしていた。


『リンドバウム号!何をやっておるか!!味方の射線上に移動する馬鹿が何処におる!!!』


『も、申し訳ありません!右へ退避――』


『そっちじゃない!!逆だ!今までヨーン提督や陛下に何を習って来た!?それでも貴様らは本国の旗艦か!!!』


 アルルはユーヤやヨーンの職務の難しさを、嫌と言うほど思い知ってしまう。またそれは、アルルに限らずリンドバウム号の全乗組員がであった。


 そんな通信を聞いているヨーンも気が気ではないようだ。ホエールの指揮が少し疎か気味になっている。それを見兼ねたのか、アナトがホエールの甲板上に帰還して来て、ユーヤがブリッジに発信する。


『ヨーン…そろそろ頃合いだ。カスバドと交代してカタパルトデッキに来いよ。』


 ユーヤの呼びかけに、ヨーンの表情が晴れる。カスバドが「やれやれ」と、言いながらブリッジに来ると、ヨーンは「後を頼みます!」と言うや通路へと走って行った。


「どうじゃ、お主ら。少しの間旗艦と云う役割を演じた感想はあるかの?」


「新鮮でした!特にヨーン提督の指揮は、我々としても気合の入るものでした!」


「そうかそうか。…ん?お主、何気にわしをディスっておるのか?」


「いえいえ…そんな…。」


 そんなホエール内の遣り取りがされる間に、ヨーンはアナトの臨時サブシートに着座していた。


「やっぱり大人二人でこの空間はきついな。しかもシアなら兎も角…男二人でこれはな…。」

「グダグダ言ってないで、早くしましょう。そんな漫才してる間にリンドバウム号が堕ちたら目もあてられないわよ。」


 ユーヤは笑いながら「確かに。」とだけ呟くと、現在ホエールが着陸中のため、カタパルトを使わずにそのまま機体を発進させた。


 砲撃と弾幕を潜り抜けて来た魔族や魔獣を斬り伏せながら、リンドバウム号を目指すと、艦は魔獣達に包囲されている真っ最中であった。


「なにやってんだ、あいつらは!!対空砲なり機銃はどうしたんだ!?アナト、ランチャーの弾はまだあるか?」


『はい。炸裂弾が残っています。』


 ユーヤは二ヤリと笑う。


「いいねいいねえ。さすが女房殿だ!!」

『嫌ん…そんな女房だなんて♪』


 マリオンが苦笑している。アナトの言葉の端に音符が見えた事が可笑しかったようだ。一応中身は精霊だが、見た目が機械であるアナトのその言葉に、マリオンは何処か愛おしさにも似た感情を持ったようだ。


「よーし!取り敢えず甲板の辺りにいる連中を狙うぞ!いけーーーー!!!」


 炸裂弾は命中と同時にズパパパパンとその周囲に広がり、アナトがリンドバウム号に着陸する道を作ったのだった。


「おおらぁあああ!いくぞぉおおおお!!」


 目の前に迫りくる魔族を切り払いながらアナトは突き進み、甲板上に辿り着くと、手の平にヨーンを乗せて甲板に降ろした。


「陛下!ありがとうございます!御武運を!!」

「ああ。ヨーンもしっかり躾けて来いよ!」


 そう言うが早いか、アナトはランチャーを魔導モードに切り替えてリンドバウム号の甲板から斉射し、艦周辺の魔族を一掃する。そしてヨーンが無事艦内に入ったのを見届けると、飛翔して他の機鋼甲冑達の居る方向へと向かったのだった。


 ヨーンがブリッジに辿り着くと、操舵手のアレックス以外の者は頭を抱えるようにして震えあがっているような惨状だった。


「何をやっている!それでも貴様らは栄誉あるリンドバウム軍旗艦、リンドバウム号のクルーか!!総員直ちに配置に着け!!!」


「て、提督!?」

「お帰りになられたのですね!」

「すいません。このような失態を…。」


 口々にクルー達が謝罪する。ヨーンはそれに片手を少し上げて応えた。


 ヨーンは艦長席まで来ると、アルルに優しく微笑みかけた。


「よく艦をここまで保たせた。頑張ったな。」


 そう言って、その髪をクシャクシャと力強く撫でると、アルルは号泣しながら謝罪した。


「申し訳ありませんでした!陛下とヨーン提督の責務の重さ、よくこの身に思い知りました!!何卒これからも我々にご教授ください!!」


 ヨーンは微笑みながら諭す。


「ほらほら、今は戦闘中だ。速やかに持ち場に戻れ。アルルにはアルルの本来の仕事があるだろ?これからも励んでくれよ。」


「サー!イエッサー!!」


 目の端には未だに涙の雫が滴り落ちていたが、その瞳の色は今までとは違い、熱く燃え滾っているようだった。


 そうして艦内が落ち着きを見せると、ヨーンは操舵手のアレックスの傍へと行き、小声で礼を言った。


「済まなかったな。苦労をさせた。」


 するとアレックスは苦笑しながら答えた。


「いえ、陛下と提督の意図が何となくわかっただけです。正直もう勘弁してください。」


 ヨーンはそれを聞くと、笑いながらその分厚い胸板を叩いた。


「痛たた…提督?」


「今まで陛下と持ち回りで艦の艦長をしてたんで、副艦長なんて者を配置してなかったんだが、いい人材を見つけられたよ。明日にも正式な辞令が降りる。頼むぞ、アレックス副艦長!」


 操舵手…アレックスは思わず操舵桿を手放して驚いた。艦がグラーっと横に動揺する。それを見ていたベルドから、またお叱りの通信が入ったが、皆はこれを笑いながら見ていたのだった。


 ようやくリンドバウム号に元の空気…いや、それ以上の結束が生まれたようだった。

ここまで私にしては

ストレスチックな展開をさせました。


リンドバウム号の乗員達の成長みたいなものを

ちょっと描きたかったもので…。


上手く伝わったでしょうか?


※雑記


どうも!終わる終わる詐欺のミツクラです!(爆)

なんだかんだで、気付いたら現状で6章APPENDIXは…

9話も書けてしまいましたw


終わったと思ったら、気が楽になったみたいでスラスラと…

初っ端は外伝(3話)から始まり、マリオン・ログ(1話)。

そしてそれらが終わってからAPPENDIX本編となっています。

いや、終わっているから本編ではないんでしょうけれど…(爆)


これらは複数話のものは連日投稿にして

そこから1日空けてから次の話へ…としてありますので、ご了承ください。


10月1日からスタートとなります。

よろしくです。


(この9話以降については、強制的に筆を休ませておりますw)

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