第九話 魔王軍七大幹部
GWの間は気付くとPCの前でひたすらカチャカチャとやってました。
おかげで、結構ストックできました。
ただ、休みが明けたら手が進むかどうか…。生活に流される姿が目に浮かびます。
ガロウ獣王国東の要所、要塞都市アルガスに於いての戦闘が始まっている。
右翼からマリオン隊、左翼からクーガー王部隊、中央よりユーヤ率いる本隊が、要塞都市の周囲を囲んでいた魔王軍に一斉に攻撃をかけた。
ヒューズ及びヨーンの部隊は、魔王軍の増援を警戒して後方で警戒している。
また、ヨーンの進言を聞きベルツ帝国に再度の出兵を依頼した。
今現在、こうして獣王国に出兵している状態な為、ベルツ帝国の云う「勇者王」の秘匿は意味を成さなくなっている。それ故、以前交わした密約の効力はなくなっているので、逆に現在も実施している関税の緩和を盾に、揺すりをかけたのだ。
これには流石のヒューズも驚いた。リンドバウムに身を移したとは云え、まさか自身の祖国を揺さぶる進言をする程、ヨーンが豪胆な男とは思ってもいなかったからだ。
要塞都市からは矢と攻撃魔法、そして銃弾が雨のように魔王軍に降り注いでいる。
都市街門を目指すユーヤは、閃光斬を無差別に放ちながら騎馬を操っていた。すると魔王軍中核の辺りまで来たところで、魔軍の将と思しき身の丈二メートル以上の魔族と遭遇した。
全身が黒い毛皮で覆われ、冗談と思えるくらいの上腕筋が目を引く。口元からは鋭く長い牙が見える。
「我は魔王軍七大幹部の一人、ジュウガ!それに見えるは勇者王アレクソラスと見受けた。いざ尋常に勝負!!」
ジュウガは巨大な斬馬刀を天に掲げながら名乗りを上げた。
―随分、時代掛かった名乗りをするもんだ。てか、こいつらも俺を「勇者王」なんて呼ぶのかよ。と、ユーヤは小さく呟いた。
「よく俺の事をご存知なことで嬉しいねぇ。七大幹部と云うくらいだから、あんた相当強いのかな?」
挑発気味にユーヤは言葉を発すると、日本刀を納めて馬を降り、背負っていた大剣を抜いた。
日本刀が使い物にならなくなってから使うつもりで背負っていたのだが、斬馬刀を相手に日本刀では、一太刀互いの刃を交わしただけで使えなくなると判断したからだ。
ジリジリと間合いを詰めながら、ユーヤは大剣に光の魔力を籠め下段に構え、ジュウガは上段に構えて互いに隙を窺っている。
―やべえな。こいつ出来るぞ。隙がねえ。
まだ一合も交わせていないと謂うのに、互いの額には汗が流れる。周りでは二人の邪魔をさせまいと、双方の兵が牽制し合っていた。
「くっそお!こうなりゃままよ!!」
先に動いたのはユーヤであった。
ガツン!と重い音が響く。そしてそのまま押し合った。しかし押し負ける。パワーが違い過ぎるのだ。
―ならば!と、蹴りを入れてみるが、黒い毛皮に覆われたジュウガの体には、さほど通っていないようだ。
「どうした勇者王。その程度か?」
そう言ったが早いか、ジュウガは斬馬刀を横薙ぎに振るった。―まずい!こんなの喰らったら一撃で死んじまうだろ!?と、刹那に察したユーヤは後方に大きく跳躍した。
ユーヤが跳躍した直後、それまでユーヤの居た場所を中心に雷が、渦を巻くかのように迸った。
マリオンの招雷波だ。不意を突かれたジュウガはまともに雷を浴びたようだ。そして、周辺に居たその配下達は消し炭になっている。
「あんた何やってんのよ!勇者でしょ?気張りなさいよ!」
「やかましいわ!そっちは済んだのかよ?」
「まあね」と言いながら、ユーヤの横にマリオンがギターを抱えて並び立った。ジュウガはまともに雷を喰らいながらも耐えたようだ。黒い体毛がチリチリになっている。
「くぅっ!女神か。厄介な技を使う!」
ジュウガがそう吠えた刹那にマリオンが音撃波を放ち、ユーヤはジュウガに飛び掛かった。
音撃波の音色を聴いたジュウガは、片手で頭を押さえながら回避運動をするが、先程よりも動きが鈍い。斬馬刀と大剣が打ち合う音が響いた。先程よりもパワーも落ちている。
ユーヤはここがチャンスと大剣を上段から斜めに振りかぶった。その切っ先はジュウガの右目に直撃して、血飛沫を上げた。
「グガァアア」と大きな叫びを挙げ、右目を押さえながらジュウガは飛び退くと、魔族達に何やら合図を送った。直後に五人の魔族がユーヤ達の目の前に飛び出して―
自爆した。
周囲が黒い煙に包まれると、悔しそうな声音のジュウガの声が辺りに響く。
「勇者王と女神よ、この場は退かせてもらうぞ。この雪辱は近いうちに晴らさせてもらう!」
その声を聞きながら、部下を道具のように扱うジュウガに、ユーヤは戦慄し動けないでいた。
しばらくして黒煙が晴れ周囲を見回すと、ジュウガと魔族達の姿は消えていた。その場に残っていたのは自爆し砕け散った魔族の遺骸と、魔獣やゴブリン等の雑魚だけであった。その様子を見たジード達も門を開けて参戦して来た。
「陛下!お待ちしておりました!」
「姫、あとの雑魚は我々が始末いたします!」
「陛下~!ちゃんと勤めを果たしたので、後でギューってしてください!」
ジードを先頭に、エテリナ、ウテナが駆けて来た。三人の元気な姿を見て、ユーヤ達は安堵するのであった。
三日後、ようやくベルツ帝国軍が到着した。
驚いた事にそれを率いていたのは、ベルツ帝国皇帝ベルド本人だった。到着するより前に要塞都市の攻防の片が付いている事は知っていたようだ。
どうやらユーヤ…勇者王との直接会談が目的のようだった。
「初めてお目にかかる。我こそはベルツ帝国皇帝ベルドである。」
「初めまして。リンドバウム王国国王アレクソラスであります。」
ベルド皇帝は、六十代との事であるが、見た目が四十代前半にしか見えない。右頬にある大きな傷が、その歴戦の武勇を物語る。
逆立った銀髪が、要塞都市の会議室の灯りに照らされて、燃え立っているように見えた。鋭い青色の眼が、ユーヤとマリオンを交互に見つめている。
会談の内容はこうであった。
一つ、今後は、西部以外の残った獣王国領を中立地帯としベルツ帝国、リンドバウム王国、愛理須皇国の三国で防衛する事。
一つ、三国首脳会議はここ、アルガス要塞都市で行う事。
一つ、獣王国奪回まではそれを優先し、不必要にオーガ大陸へ侵攻しない事。
一つ、これらをベルツ帝国、リンドバウム王国の双方から愛理須皇国に使者を送り伝える事。
と、言ったところが表向きの内容である。
実際のところはベルド皇帝自らが「勇者王」を一目見たかった、と云うのが本音であり、またこれ以上のリンドバウム王国の国土拡大に待ったをかける為でもあった。
会談によって触れられている獣王国西部に関しては、クーガー王に王都を新たに西部に遷都して治めてもらうつもりだったのだが、「既に我らの国は滅んだ。故にこの度の戦で活躍した、リンドバウム王国に割譲する。」と言う一言で、獣王国西部はリンドバウム王国の領地となった。
これによりリンドバウム王国は、ベルツ帝国に並ぶ国土の広さとなった。
「しかし、クーガー王よ。お主これからどうするつもりなのだ。」
粗方の話しが終わった後、ベルド皇帝が訝しそうに問いかけた。
「我らは王族と云う称号を捨て、只の一人の武人「クーガー」となり、アレクソラス王に仕えるつもりだ。既に息子も同意しておる。」
ユーヤが思わず「はい?!」とクーガー王を凝視した。聞いてませんよそんな事!?と、言いたげだ。
そんなユーヤの表情を見て、「ガハハ」とクーガー王は笑っている。勿論ベルド皇帝も、同席していたヒューズとヨーンも目を見開き、口を開けて驚いている。
「故にアレクソラス13世陛下、これからは我の事をクーガーとお呼びくだされ。」
「本当によろしいのですか?クーガー王の臣民達が納得するとは…」
「陛下よ、心配召されるな。臣民は我と我が子が説得する。それに、もう王と呼んでくれるな。」
―この場にマリっぺを同席させなくて良かった…。きっとあいつが聞いていたらゲラゲラ笑いだしてたろうな…。
その心配は的中する事となる。この日に催された晩餐会で、笑い転げるマリオンをエテリナが介抱する事となるのだ。
「…わかりました。では、これからは字として「獣王」と呼ばせて頂きます。それでしたら構いませんよね?」
「うむ。それなら承知した。」
互いに満面の笑みを浮かべた後、二人は固い握手を交わすのであった。
この数週間後、リンドバウム王国は「新生リンドバウム連合国」と改名した。元獣王国西部は結局、「獣王クーガー」が領主となり、元聖王国の「聖都」は引き続き聖女ハンナが領主として治める。
先の話しではあるが、一年後には、聖都と王国王都の中間の街ヨーホーは、新たな王都として遷都され「王都トライデル」と名を変える事となる。
そして元の王都は「リンドバウム」の名を残すこととなった。
時は戻って、アルガス要塞都市での晩餐会での出来事となる。
首脳会談での出来事を聞いて笑い転げるマリオンを、エテリナが必死に「姫!ベルド皇帝閣下や、クーガー様も見ております。どうか落ち着いてください!!」と宥めている。
それを眺める要人達は「リンドバウムって、自由だよなあ…。」とポカーンとしていた。
しかし、それらとは明らかに違う眼差しを送る者があった。そう、王宮騎士団団長殿である。
―ああ、エクステリナ殿はなんと甲斐甲斐しく姫様を宥めているのだろう。
そんな意味の視線であった。それに気付いた副官ブランは、演奏家達に何かを囁くと、ベルド皇帝と歓談中のユーヤの傍に行き「陛下、エクステリナ様が困っておいでです。ここは姫様の婚約者であられる陛下が姫様をお執り成しください。」と囁いた。
「仕方ねーなあ」とユーヤは呟きながらマリオンの元へ行き、エテリナに「今日は晩餐会を楽しめ。」と言ってマリオンをベランダに連れだした。
すると、急に演奏の曲調が変わりダンスを一人、また一人と踊り出した。
ジードの横に戻っていたブランは、主の背中を押しエテリナの近くに導く。「え、おい。」とジードは慌てた様子であったが、意図を察して少し戸惑いながらもエテリナに右手を差し出した。
差し出された手を見て、エテリナはポカンとしていた。
「エクステリナ殿、あのぉ…、一緒に踊って頂きたいのです。」
顔を真っ赤にしながらジードは更に前へ進み出た。エテリナはちょっと周囲を確認するような素振りのあと、微笑みながら「よろこんで」と、やはり顔を赤らめながら答えた。
普段は王宮騎士として凛々しく立ち回っている二人が、その日は互いの手をとりワルツを踊った。
しかし、見る人によっては二人のダンスが、キレッキレの剣舞に見えたらしい…。
人物紹介
ユーヤ:主人公。本名、久能佑哉。転移事故の為アレクソラス13世の肉体に戦神サガの分け御魂と共に同居中。基本装備は日本刀。
マリオン:元女神、現在亜神。子孫であるマリオネートの肉体に憑依中。ユーヤからはマリっぺと呼ばれる。
獣王クーガー:ガロウ獣王国国王。豹人族と虎人族のハーフ。大刀を振るう武人。国が壊滅状態となった為、リンドバウム王国に将として移籍する。
ジュウガ:魔王七大幹部の一人。腕力に於いては右に出る者なし。
ベルド皇帝:ベルツ帝国皇帝。武人。
ジード・ガンプ:リンドバウム王国王宮騎士団団長。魔銃の使い手。
エクステリナ・アンダーソン:マリオンのお付きにして王宮騎士団副団長。上司と同僚に振り回され気味。
ウテナ・ハーゲン:マリオンのお付きにして影の軍団くノ一隊筆頭。度々変な行動と言動で周りを振り回す。




