現実に絶望
・・・・・・意識・・・が・・・朦朧・・・と・・・・・・する・・・・・・
目が覚めると俺は、闘技場?のような場所にいた。周りを見渡すと、他にもプレイヤーと見受けられる人がいる。しかし、人数が少ない。しかも、ここは初期スポーン地点じゃない。古参勢の俺ですら見たことがない空間だった。
もしかして、バグか?
そう思っていたら、闘技場内の照明が暗転。舞台が照らし出され、一人の男が照らされた。
「やあやあ、これで全部かな? ふむふむ、なんか変なのも混じっているけどこれで始めるか」
その男は一瞬俺の方を見て、そう言った・・・気がした。男はピエロが着ている服のような色のスーツを身にまとっており、頭にはシルクハット、顔には白いマスクをつけている。
「突然で悪いんだけど、みんなには僕の世界の発展のための生贄になってもらうよ! ああ、そんなに震えたり、身構えなくて大丈夫だよ。自己紹介がまだだったね、僕の名前はテトル、この世界の神であり管理者でもある」
この男は何を言っているんだ? 生贄だのこの世界の神だの意味の分からないことを言っているけど。周りを見ると、ただ傍観している人、震えている人、何が起こっているかわからず泣いている人などがいる。そりゃ、そうだわな。生贄とか言われたら泣くわな・・・
「この世界には僕しか神が存在してなくてね、管理が大変なんだ。もともと管理していた神がいなくなって、そこに僕が入れ込まれたんだけど、1憶もの魂を管理するには人手が足りなくてね。勝手ながら、向こうの世界から引っこ抜いてきちゃったわけ。そう、君たちのことだね。ああ、大丈夫だよ。向こうの世界に未練なんてない魂を持ってきたから。みんな、訳ありでしょ?」
「なあ、質問いいか?」
俺は、神(自称)が一方的に話しているのに我慢できなくなり、気になっていたことを質問しようとした。
「ん? ああ、君か。本当は神である僕に質問なんて許されない行為だけど、君は特別に許してあげるね。なんたって、今この中で最も僕に近い存在なんだから」
「また、訳の分からないこと言いやがって・・・まあ、いいや。ここはゲーム世界であってるよな?」
「あれ? 説明してなかったっけ。ここは君たちのいうゲーム世界ではないよ。ここは現実さ。リアルだよ。だから、死ぬこともあるし、やろうと思えば不死にもなれる。けど、君たちだけリアルで他のプレイヤーから見たらこの世界は、ゲーム世界だよ」
「は? てことはあれか? ここにいるプレイヤーだけ超鬼畜モードデスゲームで、他のプレイヤーは死んでも復活イージーモードってか? ふざけんなよ! もとに戻せよ」
「あーあ。だから、質問されるの嫌なんだよね。そんなこと言われたらイライラしちゃって、誰か殺しちゃうじゃん。もう一回言うけど、僕は神様。君たちは人間で、しかもまだ何にも称号を持っていない。非力な存在だということを覚えろよ。なあ、元世界ランキング5位のケルフェ?」
俺のことを知ってやがるのか。でも、「称号」のことを認めたってことはこの世界はあのタイトルオンラインで間違ってはいない。しかも、生贄とは言っているがあの言い方的には、俺たちを管理者として管理したいみたいに聞こえる。もしかして、こいつの狙いは・・・・・・
「もしかして、俺たちを最終的に管理者としてこの世界に縛るつもりじゃないだろうな」
「おお、そこまで気づいたんだ。やるねえ、元世界5位様は。そうだよ。みんなも知っていると思うけど、この世界は称号がすべてだ。レベルなんてものは存在するけど意味をなさない。そこでだ。みんなには「神」という称号を獲得してもらいたい。そして、この世界の永遠の管理者としてこの世界に居続けてもらう。この世界が誰にも認知されなくなるまでにね」
狂ってる・・・
「いやと言ったら? 拒否権はあるのか?」
「拒否権は無いに決まっている。ここで拒否したり、途中で自主的にリタイアしたら死ぬよりつらい思いをしてもらうことになるからね。例えば、元の生活に戻すとかね」
「元の生活に戻れるのに、それが死ぬよりつらい思いなのか?」
「そう思うやつもいるんだよ。周りのやつに聞いてみたら? ねえ、そこの彼女さん?」
そう言い、神は一人の女の子を指さした。その女の子は至って普通の女の子で、初心者感丸出しのオーラを纏っていた。
「か・・・神様の言う通りです・・・。私は元の生活には戻りたくない。帰るくらいなら、この世界で生き続けることのほうがよっぽど幸せ。だから、私は神になります」
「よく言った! それじゃないと、こちら側に連れてきた意味がない! 分かった? ケルフェ君、この世にはそういう世界に生きている人だっているのさ」
そこで神はより一層大きな声で、こう言った。
「現実に絶望している人はね」