面接
8月下旬、既卒者の面接が行われた。
面接はもちろん山田理事長が担当。
応募者には「自分らしい服装で来て下さい」という案内をしている。
それは「女の子になりたいのに、男の服装を強制するのはおかしい」という山田理事長の考えだった。
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「失礼します。」
「はい、どうぞ。」
「田中優弥といいます。よろしくお願いします。」
「理事長の山田です。今日は来てくれてありがとう。
最初見たときは男性だとわからなかったよ。
これはコスプレですか?」
「はい、そうです。
高校の時からコスプレを初めて、今でもやってます。」
「お化粧とか慣れた感じだね。
さて…今回応募したきっかけというか理由はなんですか?」
「見てのとおり、女の子の格好をするのが好きなんです。
高校にも女の子の制服を着て通いたかったんです。
今回の募集を見つけて、それが叶うんじゃないかと思って応募しました。」
「なるほど。
では女の子になりたいということでいいですね?」
「はい。
最初はそこまで思ってなかったんですけど…。
男の格好で居るときの自分よりも
女の子の格好で居るときの自分のほうが自分らしくて…。
だから女の子になりたいです。」
「わかりました。
では今年の10月からうちでよろしく頼むよ。」
「はい、ありがとうございます!」
「10月になって女性ホルモンの投与も始めます。
より女の子らしくなって、更に活躍してくれることを期待しています。」
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「失礼します。」
「はい、どうぞ。」
「こんにちは。
立花梨花っていいます。
本名は…貴志っていいます。」
「立花梨花さん…っと。
服装的に夜のお店で働いてる感じですね?」
「はい。
ニューハーフのお店で1年半くらい働いてます。」
「胸もあるってことはすでにホルモンもやってる感じですか?」
「はい。
1年くらい前からやってます。
今はBカップくらいあると思います。」
「なるほど。
今回うちに応募した理由ってなんですか?」
「小さい頃から女の子のものが好きで、中学の頃には女の子になりたいと思ってました。
家の中では中学からずっと女の子の格好でしたけど、外ではずっと男の格好をしてました。
もちろん高校もです。
だから…本当はJKやりたかったんで…。」
「うちに入るとお店は辞めないといけなくなるけど、大丈夫かね?」
「それは大丈夫です。
元々、ホルモンとか手術のお金を稼ぐために始めたんで…。
お店のためにこんなギャル風な感じですけど、本当は正装なJKみたいになりたいんです。
ギャル風なメイクして本当の自分を隠してるって言うか…。
だから夜の世界から足を洗って、自分の姿を本当のものにしたいんです。」
「わかりました。
では10月からうちでよろしく頼むよ。
入る時にはギャル風から本当の姿になってうちに来てくださいね。」
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今回の応募者は合計で18名。
応募者全てを合格にした。
10月からの研修に向けて準備が進んでいく。