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修学旅行 ~小学校編~ 02

あれ? 話が全然進まない……

 あれからおよそ1時間が過ぎた。

 この部屋に連れて来てからの30分は回復魔術をかけ続けていたが、今は容態も安定し、ベッドについている回復魔法だけでなんとかなるレベルまでは回復した。


「ふぅ、さすがにこれはしんどい」


 生命力を使った探知や2度の転移、上位回復魔術の使用で肉体的に疲労した状態で、ダミー人形への記憶のコピーによって精神的な疲労も限界が近い。

 すぐにでも横になりたいが、生憎ベッドは使用中だ。

 それに、私が眠っている間に彼女が目を覚ました場合、私が拉致監禁をしていると思われかねない。

 そうでなくても、普通の人間なら混乱する可能性の方が高いので、眠ることが出来ない。


「はぁ、この世界で魔術関連の面倒ごとに巻き込まれるとはな」


 この世界では魔術が浸透しておらず、使用されていないと思っていたので、最低限の便利道具しか作っていなかった。

 そのせいで、もっと楽が出来るような場面でも苦労することになってしまったのだ。


 まあ、後悔先に立たず。

 終わったことを悔やんでも仕方ない。

 この街の中で魔術系の厄介ごとが、近いうちに起こるとは考えにくいので、時間があるときにでも魔法道具を適当に作っておこう。


「んぅ……」


 聞きなれない音がした。

 松山さんの意識が戻ったのかと思い、ベッドの方を見るが、


「なんだ、起きてないのか」


 目を覚ました様子はない。

 とりあえず、脈拍と呼吸を調べてみる。


「問題はなさそうだな」


 その声が届いたのか、彼女の体が少し動いた。


「ん?」


 彼女はうっすらと目を開けていた。

 数秒後、彼女は瞬きをすると、


「知らない天井だ……」


 まさかのテンプレが飛び出した。


「えっと、ここは突っ込んだほうが良い? それとも、スルーして説明の方が良い?」


 とりあえず、この二択で迷ったので、本人に聞いてみることにする。


「「………………」」


 私たちの間にそれはもう重い沈黙が訪れた。

 そして彼女は顔を真っ赤にし、私に顔が見えないようにするためか、寝返りを打った。


「さ、先に確認したいのだけど、私は死んではないのよね?」


 もしかしたら、彼女も同志なのかもしれない。

 場違いなことを思いつつも、


「ここは俺の部屋だ。訳あってここに連れてこさせてもらった」


 しっかりと答える。


「そう。その訳というのは、私が疲れていたり、体が痛かったりすることとは関係あるの?」

「関係はあるが、たぶん松山さんが考えているようなことではない」


 やはり、影響はまだ残っているのか。

 面白そうな魔法陣ではあったが、破壊しておいて正解だったようだ。


「詳しく説明して」

「説明は後で必ず聞いてもらうが、その前にこっちからいくつか質問させてほしい」

「質問にもよるけど、答えられることなら」

「名前と眠る前になにがあったのかを聞きたい」

「名前はもう知ってるでしょ?」

「もちろんクラスメイトだから知っているが、記憶の確認だ」

「よくわからないけど……松山 香里、12歳、八幡小学校の6年生。ここに連れてこられる前の記憶は…ごめんなさい。修学旅行の最終日に班からはぐれて、どこかを歩いていることくらいしかわからない」

「歩いている、ってことは、どうして歩いてたのかわからないってことでいいんだよな?」

「そう」


 どうやら、彼女は操られてはぐれてしまったらしい。

 表情から察するに、その時の記憶もぼやけているのだろう。


「なにか忘れていそうなこととかはないか?」


 まあ、これは感覚のことなので、たとえ忘れていてもそれが本当かどうかを確かめる方法はないのだが、とりあえず聞いておく。


「記憶がなくなったような感じはないわ」

「わかった。とりあえず、心配するようなことはなさそうだ。

 今から先生に連絡するが、なにか欲しいものはあるか? 電話中に言われてもすぐに出せるとは限らないから、思いつくなら今言ってくれ」

「特にn」


くぅ~


 私の腹以外の場所から、そんな音が聞こえてきた。


「わかった。おかゆでも用意するよ」


 微笑ましく思いながら、台所へ向かうため腰を上げた。

 が、よく考えると、マジックボックスにパック詰めされたご飯が入っていることを思い出す。


   台所に行かなくても、ここで作れるな。


 私は上げた腰を下ろした。


「どうしたの?」


 彼女がなにかあったのか、というような目を向けてくる。


「松山さん、君をオタクと見込んで聞きたいことがある」

「なんのこと……ってとぼけても無駄みたいね」

「今からやることはマジックじゃない。あ、いや、魔法を英訳するとマジックだから、手品じゃないって方が正しいのか?」

「そんなことはいいから、なに?」


 呆れたような顔を向けられた。


「これから起こることを見ても、驚くなとは言わないから、はしゃぐのは控えてほしい」

「わかったけど、やけにもったぶるね?」


 まあ、これくらい言わないと大変そうだからな。

 今、彼女がはしゃぐと、体力がヤバい。


「君の体力は思っている以上に消耗しているという事だ」

「分かったから、はやくしたら?」


 私はマジックボックスから、ポ〇リとパックに入ったご飯、鍋をお盆に載せて取り出した。


 実を言うと、マジックボックスの中には、様々な食料が入っていたりする。

 先程出したご飯やポ〇リの他に、お菓子はもちろん果物や野菜、肉や魚などの生もの、数食分の調理済みの料理まで、多種多様だ。

 調理器具も入っているので、いつでもどこでも、野宿が可能というわけだ。

 マジックボックスの中は時間経過がほとんどないので、生ものでも長期保存が可能だ。

 完全に止めることもできるが、効率が悪くなるので、時間の経過は365分の1くらいにしている。

 さらに、ほかの世界で金属の塊をそれぞれ最低でも数十kg分は入れてあるので、魔術で加工してしまえば大抵のものは作ることが出来る。

 マジックボックスが便利すぎて、他の運搬手段が廃れてしまった世界をいくつか見てきたので、この世界でこれを広めることは絶対にない。


 開いた口が塞がらない状態の彼女を無視して、ご飯を鍋に入れ、魔術で水を加える。

 そして、鍋を少しだけ魔術で加熱して、おかゆを完成させた。

 よく考えると味付けがなにもなかったので、マジックボックスから梅干しを取り出し、おかゆの真ん中に乗せた。


「おかゆが完成したから、早く食べてくれ」

「え、ええ……」


 放心状態になりかけているが、そんなことは気にせずお盆ごと手渡す。


 先生に電話で報告を終えるまで見ていたが、一向に食べ始める様子はない。


「食べれないなら、俺が食べさせえてやろうか?」

「ええ……」


 まずい、フリーズしているようだ。

 だが、食べてもらわないと困る。

 ここはショック療法として「あ~ん」でもしたほうが良いのか?


「ま、さっさと終わらせて、寝てもらわないといけないしな」


 俺は誰かに言い訳をしながら、いまだお盆の上にある蓮華(れんげ)を手に取り、そこにおかゆを乗せる。

 おかゆに息を吹きかけ、熱くない程度まで冷ます。

 そして、彼女の開いた口に蓮華を押し込んだ。


「むぐぅっ!!」


 彼女は突然口に物が入り、反射的に口を閉じた。

 おかゆを彼女の口の中に流し込みながら、蓮華を引き抜いた。


「んっ…んぐっ」


 最初は驚いていたが、口の中に入ってきたものがただのおかゆだと気が付いたようで、モグモグと口を動かしながら飲み込んだ。


「い、いきなりなにをするの」

「すみませんでした」


 彼女の反応を見て、変なことを想像しかけてしまったので、謝った。

 本人に理由を言う事は絶対にないと思うが……


「謝罪はいいから、理由を教えなさい」

「いや、おかゆを早く食べてほしかったし、食べれないなら あーん しようか? って聞いたら、ええ って答えてたし」


 彼女の鋭くなった眼光にひるみながらも、なんとか答える。


「なに? それでやってもいいって思ったわけ?」

「あのままだと、全然復活する気配がなかったし」

「へ~、意識がはっきりしてない人にそんなことするんだ。へ~」

「すみませんでした」


 私にはどうしようもなく、ただ平謝りするしかなかった。


◇◆◇◆◇◆◇


 あの後のことはあまり思い出したくない。

 この長い転生生活の中でも、女性の尻に敷かれたことは記憶にないので、たぶんあれが初めてだ。

 まさか、この世界で初めての出来事に出会うとは思わなかった。

 途中、新しい感覚に目覚めかけていたような気もするが、気のせいだと思いたい。


「ほんとに教えてよ」

「ああ、わかったって」


 そう答えを聞くと、すぐに眠ってしまった。

 彼女は あのこと を許す代わりとして、マジックボックスを教えるようにと言ってきた。

 初めは世界のことを心配して拒否していたのだが、有無を言わさぬ迫力に負け、私が完全に回復したと判断するまでは安静にしていることを条件に教えることを約束をした。



◇◆◇◆◇◆◇



 あれから数日、彼女の調子もすっかり良くなった。

 マジックボックスはそれなりに難易度が高いので、ほかの魔術から教えなければならない。そのため、香里を弟子として取ることになった。

 どこかのロリ王とは違い、内弟子ではなく土日に合って教えるという感じだ。


 中学を卒業し、高校入学前の長期休暇である現在もその師弟関係は継続中だ。

 余計な作業のない現在は、香里に魔術を教える日々が続いている。


「探査魔術起動!!」


 私は香里の後ろに移動し、羽交い絞めにする。


「そろそろ出来るようになってくれよ……」


 深いため息と一緒に、そう言った。


「だって、難しいもの」


 魔術の初歩は暗示から始まり、現実へと効果を反映させていく。

 香里は他者への暗示が出来ない状態で、物理現象の改変、つまり現実への反映をこなしてしまった。この世界の教育は魔術ではなく科学ばかりなので、分子や原子の理解はあった。

 ただ、そのせいで、目に見えない情報への干渉が難しくなっているのだろう。

 よって、他者への暗示という目に見えづらい情報へ干渉することが根底となっている探査魔術は、習得が困難な魔術となっているようだ。

 ただ、この魔術は多次元や異世界を感知することもできるので、これが出来ないとマジックボックスを使うことはできないのだ。

 この世界の中のどこかに転移させるだけなら敷居は低いが、それもこの魔術が使えないと無理なので、どのみち習得してもらうしかない。


 どうやらこの関係は、高校の間も続きそうだ。

みなさんこんにちはyoshikeiです。

今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。


サブタイが修学旅行なのに、修学旅行に関するイベントが一切ないのは、一体どういう事なんでしょうね。

修学旅行を満喫させる予定が、完全にぶっ飛んだ方向へと向かっております。

京都に行った時の記憶がほとんどないとはいえ、せめて清水寺や東大寺には連れて行きたかった

そこで、甘いラブコメを書きたかった。

なのにどうして、宏輝君は自宅に女子を連れ込んでいちゃいちゃしているんですか? 呪い殺されたいんですか? 勝手に動いているとはいえ、ここまで来るとモテない男子(主に筆者)に刺殺されますよ?

まあ、冗談はこれくらいにしておきましょう。


今後ともよろしくお願いいたします。


みなさんの宏輝君への感想(恨みつらみ)待ってます。

話にできそうなものがあれば、ここに宏輝君を連れてきます。

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