修学旅行 ~小学校編~ 01
なんとか前話から24時間以内に投稿できました。
転生してから8年がたった年の10月
小学生でいられる時間というのも短いもので、あっという間に6年生だ。
学校の中では、相変わらずラノベを読んだり、ネット小説を読んでいる。
たまにネット掲示板への書き込みや漫画を読んだりもしている。
魔術回路の強化によってネットを限定せずに使うことが出来るようになったときは、とてもうれしかった。
小5の時にマジックボックスの制限が一部なくなったが、取り出せるのはダミー人形や一部の鉱石といった、しょぼいものばかりなのだ。
個人データベースへのアクセスやマジックボックスの制限が完全になくなるのは当分先だと思うが、このまま鍛えていけば、中学に通っている間にはアクセスできるようになるだろう。
修学旅行
小学校の行事で6年生の秋に行われることが多い行事だ。
私は小学校生活で一番大きな行事と言っても過言ではない、修学旅行の真っ最中!
……なのだが、
「ねえ、宏輝君。松山さんがどこにいるのか探してくれない?」
迷子になったクラスメイトを探してほしいと頼まれていた。
「斎藤先生、去年の野外活動でも言ったと思いますが、この世界に魔術というものは浸透していないんです。なので、ポンポン使うのは控えるべきなんですよ」
松山 香里、きれいな黒髪を肩まで伸ばし、いつも落ち着いている。
今回はこの子が迷子になったようだ。
◇◆◇◆◇◆◇
小1の時に担任だった斎藤先生だが、翌年から違う学年の担任となり、学校内でも会う事は減っていた。
だが、小6になって、また斎藤先生が担任になった。
うちの学校では6年生の秋に修学旅行が行われるのだ。その中の行事には、森の中を探検する、というものがある。
もちろん、明るいうちに行うため怪我や事故は滅多にないのだが、去年のその行事の途中で迷子になった生徒がいた。
30分ほど教員が探して回ったのだが、手がかりのようなものも見つからず、斎藤先生が私に魔術で探すようにと頼んできたのだ。
「ここはそんなに深い森じゃないけど、長い間はぐれているのは危険だから、宏輝君の魔術で探してもらえない?」
初めは断ったが、1時間たっても見つかる気配がないため、学校のために魔術を使う事は今回だけという条件のもと、仕方なく使うことにしたのだ。
◇◆◇◆◇◆◇
今いるのは京都の街中で、小学生が一人で歩いていたら交番に連れていかれるだろう。
よって、警察に相談すればいいので、使う気はない。
「警察には10分に連絡したけど、まだ連絡がこないのよ」
警察も万能じゃないし、ほかの学校も来てるんだから、ある意味当然だと思うが、安全かどうかだけは確認しておこう。
そう考えた私は、探査魔術を使う。
「ん?」
探査魔術で得られた情報に違和感を覚えた私は、つい声を漏らした。
「どうかしたの?」
「あ、いえ、なんでも」
転生したときには半径100mがせいぜいだった探査魔術だが、現在では最低でも半径3kmはカバーできるようになっていた。
だが、今は自分を中心におよそ半径2.7kmほどしか情報が入ってこない。入ってきた情報も、ところどころ不鮮明な部分がある。
なにかに魔術が妨害されているような感覚がする。
一度探査魔術を終了し、再度、ポケットの中のメモ帳に書かれた魔法陣に手を置き、詠唱を行いながら、探査魔術を使用した。
すると、やはりなにか別の力に妨害を受けているような感覚はあるが、自分を中心とした半径5kmほどの円の中の詳細な情報が一気に頭の中へ入って来た。
情報の選別が追いつかず、少し頭痛がするが、松山さんの居場所はわかった。
だが、松山さんの周りの情報を見ると、なんだか様子がおかしい。
「先生、ちょっと場所を変えましょう」
私はそう言って、集合場所から少し離れ人の少ない場所へと移動した。
「なにかあったの?」
そう聞いて来るが、まだわからない。
松山さんの周りに大勢の大人の反応があるのだが、なにかをしているようには見えない。
そして、すぐ近くに不快感を覚えるなにかの反応があった。
妨害によってこれ以上の情報を得るのは難しいだろう。
「先生、地図ありますか?」
「スマホでいい?」
「大丈夫です」
そう返すと、先生はポケットからスマホを取り出し、この辺りの地図を表示させた。
松山さんの反応があった場所を地図に照らし合わせると、そこは清明神社という場所だった。
その場所にピンを立てながら、
「ここ、松山さんはここにいます」
先生にそう伝えた。
なんだか嫌な予感がするので、様子を見に行くため先に向かう事にする。
「先生、あとは頼みます」
そう言って、小4の時に作っておいた、隠密魔法を込めた魔法道具を使用する。
脳内で魔法陣を描き、飛行魔術を使用した。
ふと、先生にも護身用になにかを持たせた方が良いような気がしたので、マジックボックスからエアガンを取り出す。
「危なくなったらこれを地面か相手に向けて撃ってください」
そう言いながら、エアガンを先生に向けて放り投げた。
あれは閃光弾とスタンライフルを合わせたようなもので、地面に向けて撃つと閃光弾、相手に向けると麻痺弾を打ち出す。
この世界にはエアガンという便利な玩具があったので、それをちょっと魔改造させてもらった。
ただし、効果を出すための術式は弾の方に、閃光弾と麻痺弾の切り替えは銃に入っているため、銃だけでも弾だけでも効果が発動されることはない。
私は清明神社に向けて全速力で飛翔した。
目的地には数分で到着した。
空中は地上と違って障害物が少ないので、移動がとても楽でいい。
そんなことを考えていると、小1の時ゴールテープにぶつかったことを思い出し、身震いする。
まあ、今回はあの魔術を使う予定もないので大丈夫だろう。
人気のない場所に移動し、隠密魔法を解除する。
そして、また探査魔術を使用した。
得られた情報は、近づいたにもかかわらずほとんど変わらなかった。
変わったことと言えば、松山さんの反応が薄くなっていることだろうか。
薄くなる要因は様々だが、一番可能性が高いのは体内の生命力が低下することだろう。
「これは、急いだ方が良さそうだ」
そう呟きながら、気配を消して松山さんのいる場所へと向かった。
◇◆◇◆◇◆◇
拝殿の奥にある本殿、そこが松山さんの反応がある場所だ。
同時に大勢の大人が集まっている場所でもある。
とりあえず、ネットに接続し情報がないか確かめてみるが、原因はよくわからない。
「忍び込ませてもらうとするか」
普通なら不法侵入となるが、相手はクラスメイトを拉致監禁しているので、気にするだけ無駄だろう。
それに、今はまだ小学生だ。
捕まっても親を呼び出されて注意だけで済む可能性の方が高い。
ん? こっちは警察に任せて、妨害の原因を探ったほうが良いような気がしてきたぞ?
そんな考えがよぎった時、探査魔術にかかっていた松山さんの反応がさらに薄れてきた。
どうやら、そんな悠長なことを言っている余裕はないようだ。
本殿の周りを見るが、入れそうな場所には見張りも多く、簡単に入らせてくれそうもない。
それに、反応がある場所はかなり奥にあり、入り口からは距離があった。
「仕方ない、多少手荒にはなるが……」
私は反応がある場所に一番近い壁の前まで移動し、身体強化と身体制御の魔術を弱めに使用する。
以前よりも基礎体力は増えているし、魔術回路も強化されているので、これだけでも30cm程度の鉄板なら全力で殴れば貫通させることが出来くらいの力は出る。
「押しとおる!!」
そう言いながら、目の前の壁を殴った。
その直後に大きな音がして、拳が当たった壁には大きな穴がぽっかりと開いていた。
「お~、かなりきれいに開いたな」
予想以上に通りやすそうな穴が開き喜んでいると、こちらに向かってくる反応が複数あった。
きっと音によって様子を見に来た人と、見張りの人達だろう。
「ま、見つかる前に返してもらいますかね」
開けた穴から中へと入り、穴が開いていることがばれないように軽く塞いでおく。
「な、なんだ君は!!」
「そうです、私が……」
「そういう意味じゃない!」
せっかく人がネタに走ろうとしたのに、途中で止めてくるとは、わかってない人だな。
声がした方を見ると、
人、人、人、ひと、人、人、ヒューマン、人、人、人、人、ヒト
外から見た時よりも広く感じる部屋に、どう考えても容量オーバーと思われるような人の数。
探査魔術では近くに松山さんだけの場所があるようだが、小6の身長では部屋全体を見ることはできない。
完全な暗闇ではないので、身体強化をした私にとっては特に問題ではないが、普通の人間にとってはかなり暗く感じるだろう。
「通りすがりの魔法使い兼魔術師です。
主に魂魄系の魔術を専門をしています。
クラスメイトがここにいるようなので返してもらいに来ました」
とりあえず、挨拶だけはしておこう。
まあ、専門はないが、一番得意な魔術は魂魄系なので問題はないだろう。
「名前と所属を名乗れ! ここは儀式中だぞ!!」
名乗れと言われても、今から牢屋か地獄へ向かうヒトに名乗る必要を感じない。
だが、彼は引っかかる言葉を放った。
儀式中
どうやら、クラスメイトを生贄かするつもりらしい。
私の探査魔術を妨害しているのはここの術式のようで、広域探査系は妨害されるようだ。
ならば、違う魔術で情報を拾えばいいだけの事。
何度も転生していれば、探査魔術を妨害するための魔術は飽きるほど見てきた。
探査魔術を終了させ、純粋な生命力を増幅し周りに広げる。
こうすることで感覚をこの部屋全体に広げる。
魔術研究の合間に習得した技術の一つだ。
この部屋の中が手に取るようにわかる。
欠点としては狭い範囲にしか使えないこと、使用後の疲労が酷いことだが、この部屋くらいなら覆うことが出来るので、今は問題ない。
儀式の内容を探ると、中途半端な召喚魔法だった。
魔力が十分に練られておらず、魔法陣も不完全。正直に言って無駄でしかない。
だが、これでも一応どこかの世界にはつながったようで、魔法としてはなんとか発動できるレベルだったようだ。
なんだか、つながった先の世界を知っているような気がしたが、どうせ今までに転生した世界のどこかだろうと思い、気にしないことにした。
「へぇ、召喚魔法か。それくらいなら、自分たちの魔力でやればいいのに」
「お前のようなひよっこに、この魔術の偉大さが分かるわけがない!」
どうやら、こいつらは魔術と魔法の区別もついていないようだ。
いや、この世界独特の区分があるのかもしれないので、そこについての突っ込みはやめておこう。
それはさておき、どうやらこの中には魔術回路の開放が出来ている人がいないようで、単独で魔術を使えるものは誰一人としていないようだ。
そんな奴らにひよっこと呼ばれる筋合いもないのだが、きっと見た目が子供だからひよっこといったのだろう。そうでなくては、こいつらがただのバカという事になってしまう。
「いやいや、こんな不完全な召喚魔法、だれが作ったのさ。酷いにもほどがあるって」
「どうやら、なにも知らんようだな。冥土の土産として教えてやろう。これは、ここに祀られている安倍清m……」
「あ~、わかった、わかった。もういいよ」
長くなりそうだったので、途中で切らせてもらう。
本当に制作者が知りたいわけではない。
だが、私を殺すことが出来るとでも考えているのだろうか。
そんなやり取りをしていると、松山さんの息が浅くなり始めた。
結構ヤバそうだ。
「ちょっと、クラスメイトがヤバそうなので、さっさと連れて帰らせてもらいますね」
「なにを……」
私は松山さんのいる場所に向けて人をかき分けて歩き出した。
飛べればいいのだが、生憎天井はそこまで高くなかったため、歩いていくしかない。
身体強化は今もかけてあるので、押し返されるという事はない。
「お、おい、あの少女を守れ! 殺してもかまわん、奴を通すな!」
どこに向かっているのか気が付いたようで、松山さんに近づけまいとするモノたちがぞろぞろと湧いてくる。
冒険者の制度がある世界なら、これらを消すこともできたのだが、この国ではこんなモノでも消せば犯罪になる。
証拠隠滅の方法はあるが、めんどくさいのでやりたくない。
仕方なく、無限にポップするモンスターのようなモノをかき分けつつ、歩いていく。
たまに刃物を持っているモノもいるが、身体強化された肉体に普通の金属でできた刃物が通るはずがないので、少しくすぐったいが気にしない。
あと少しのところまで近づくと、さっきまで人の言語を喋っていたモノが、金属の棒を私に向って振り下ろしてきた。
だが、それは普通の鉄でできていたようで、ひしゃげてしまう。
その曲がった部分に引っかかり、私は足が止まってしまう。が、そんなことで長時間泊まっている暇もなさそうなので、鉄の棒をまげて使い物にならないようにしてから再度歩き出す。
松山さんの隣に来ると、彼女はかなり衰弱していた。
どうやら魔法陣は魔力だけでなく生命力まで強制的に奪っているようで、とても危険な状態だ。現代の医学では完全な回復は既に不可能だろう。
というか、これは医学ではなくそれなりに上位の治癒魔法でないと、完全回復させることが出来ない状態まで陥っているように見える。
「松山さん、意識はある?」
「………………」
返事がない。息はしているが、とても浅く、一見死んでいるようにも見えかねない。
「仕方ない。こんな不十分な魔法陣でも、この世界に来て初めて見た魔法だ。出来れば細かく調べたかったが……壊すか」
よく考えたわけではないが、残しておいても被害が増えるだけのような気がしたので、問答無用で壊すことにする。
最後の一言で、外野が大声で鳴き出した。
うるさくて邪魔なので、なにも通さないような結界をあれらと私たちの間に作っておく。
「あぁ、もったいない。こんな不十分でも一応使える魔術師がいたのに……」
破壊するために簡単に陣を解析すると、誰かが十分な魔力を使い魔法を使用していた痕跡があった。
その人は召喚した者を別の媒体に結び付けており、それが終わるとすぐに元の世界に還していた。
召喚と帰還の魔法陣ならいくつも知っているが、別の媒体に結び付けさせるための魔法陣は珍しいので、興味深かった。
まあ、欠点はいくつもあり、研究するだけの価値があるとは思えないが、魔法陣を解析していけば大抵はその世界の魔術体系が分かるので、資料としては使うことが出来るのだ。
解析も終わり、破壊のための魔法式が完成した。
魔法式とは、魔法陣を簡略化し、詠唱と混ぜ合わせたようなものを、魔術で空間上に書き出すというものだ。
これを使うと、消費魔力量は魔法陣や詠唱よりも多いが、短時間で魔法を発動させることが出来る。
「破壊開始」
そう呟いて、意識を魔法式を作り上げることに集中する。
短時間と言っても、一瞬とはいかないので、その間に邪魔が入ると困る。
魔法式が完成した。
「魔法・破壊」
空中に浮かび、私の体の周りを廻っていた文字たちは、目の前の魔法陣に向って一斉に飛び出し、次々と消していった。
だがその時、一つの影がこの世界に放たれたことを、私は知らなかったのだ。
数瞬が過ぎ、魔法陣の書かれていた場所には松山さんが眠っているだけとなった。
「まあ、回復はしないよな」
魔法陣を壊すことで、奪っていた魔力や生命力が戻ることを期待したが、やはり戻ることはなかった。
「松山さん、ごめんなさい」
そう言って、仕方なくお姫様抱っこのように持ち上げる。
掌に転移魔法陣が書かれた紙を取り出し、
「転移」
と言って、自室のベットに転移した。
この時間はまだ両親も家にはいないので、バレる心配がない場所として転移先に選んだ。
さらに、自分のベッドには回復魔法が付与してあり、シーツの下には上位回復魔術用の魔法陣を書いた紙もおいてあるので、私が治療するとしたら、ここが一番使いやすいというのも理由だったりする。
転移を終えると、彼女をすぐにベッドに寝かせ、回復魔術を使用する。
これであと1時間もすれば回復するだろう。
家の電話から先生の携帯に電話をかけ、ことの顛末を説明した。
「えっと、という事は、松山さんは今、貴方の部屋のベッドに連れ込まれているという事でいいのかな?」
「人聞きの悪いことを言わないでください。
そもそも俺の中にはすでに恋愛感情というものはありません。人の良いところも悪いところも、さんざん経験してきましたので。
もう振り回されるのはこりごりです」
今までの世界には愛した女性もいた。
だが、その中には騙すことが目的の女性も多かった。
「まあまあ、中身はおじいさんかもしれないけど、体は若いでしょ? 先生としてはそういうところも心配するわけよ」
「あ~、なるほど。まだ小学生とはいっても、小6ですからね。もてあます人も出てくるということですか」
「そう言う事。なかなか面倒なんだから」
「まあ、俺に関しては心配いりません。今はそんなことをしている余裕がありませんから」
「そうは言ってもねぇ、どこかの病院とかなら楽なんだけど……」
まあ、そのほうが処理も楽なのだろう。
そう言えば、マジックボックスからダミー人形が出せたはずだ。
「先生、その負担を軽くする方法があるんですが、聞きます?」
「なに? 一時的に学校に通っていないことにする、とか言い出す気?」
先生の中の私はどんな性格をしているのだろうか。
出来なくはないが、そこまでする気はない。
「そんなことはしませんよ。ダミー人形ってのを使うんですが、」
「それには相手の体液が必要とか言い出すの?」
「いえ、そんなものはいりません。ですが、相手の模倣をする道具なので」
そこまで言うと、言いたいことを理解したようで、
「記憶を読み取って、人形の方に移す必要があるってことね」
「オタクは話が早くて助かります」
「まあ、よくある設定だからね」
そりゃそうだ。
模倣するならその人の人格を形成しているもの、記憶を持って入れば、どんな時にどんな反応をするのかが簡単にわかる。
「わかった。倫理的、法律的にアウトだけど、やってよし。説明は協力するから」
「ありがとうございます」
「その代わり、急いでよ?」
「はい」
電話を切り、さっそくマジックボックスからダミー人形を2体取り出す。
この人形はいろいろな魔法技術によって、とても便利な身代わりになる。
それに加え、完成したダミーは自分がダミーだという事をしっかりと理解し、行動するので余計な心配はいらないという優れものだ。
1体目は自分の記憶をいれる。これはすぐに出来た。
問題の2体目だが、できる限り彼女の記憶を見ないでコピーしたい。
先生も言ったように今回は相手の合意を得ていないため、倫理的にも法律的にもアウトなのだ。
だが、記憶を人形にいれるためには、どうしても見えてしまうのだ。
私は彼女が起きた時、数発は殴られる覚悟をすると、記憶を移し始めた。
……色々な記憶が過ぎていった。
すべて移し終わってから気が付いたが、自分の記憶を消す魔法はいくつもあった。
なので、移した後、その記憶をきれいさっぱり消してしまえばよかったのだ。
もちろん私の中に彼女の記憶は一片たりとも残っていない。
それを行ったという事実だけが、現実に残っているのだ。
「まあ、とりあえず人形はできたしいいか」
そう言って、2体の人形を叩き起こす。
「おはよう」
「えっと、おはよう?」
最初が俺の記憶を持つ人形で次が松山さんの記憶を持つ人形だ。
説明がめんどくさいという事もあり、松山さんの人形には彼女の記憶だけではなく、混乱を避けるための一部の知識を追加した。
人形たちは目を覚ますと同時に、本人の姿に変わる。
これで、説明しなくてもどうすればいいかはわかっているはずだ。
「そんなわけで、さっそく修学旅行に合流してくれ」
「ああ」
「わかった、で、いいのかな?」
「松山さんのダミーはなにかあったら俺のダミーに聞いてくれ」
彼女のダミーはこくりと頷くと、私のダミーと手をつないだ。
こうしてみると、付き合っている男女のように見えなくもないな。
ふと、そんなことを思ったが、手をつないでいるのは転移のためで、同じ場所に転移させるなら、どこかが接触していた方がやりやすいのだ。
「あとは頼んだ」
言い終えると、私はダミーたちを、先生の近くに転移させた。
みなさんこんにちはyoshikeiです。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
さて、今回の話はどうだったでしょうか。
思った以上に長く、そして、予定にはないようなイベントが出てきました。
プロット通りに進んでいるのに、考えていたものとは違うイベントが出てきて、筆者が驚いています。
あと、この作品の目標?のようなものが出来ました。
それは 前話を投稿して24時間以内に次話を投稿する です
打ち切った未確認ネカマよりも辛そうな目標ですが、なんとか頑張ります。
投稿を休むときはしっかりと連絡いたしますので、ご安心ください。
途中で投稿をやめることにならないように頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。