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遠足

本日4話目です。

初日に20pt超えたのはとてもうれしいです。

ブックマークや評価をくださった方々、ありがとうございました。

 10月


 春の運動会が終わり、夏休みも過ぎた。

 この学校ではこの時期に遠足に行くようで、今はその


「せんせー、バナナはおやつに含まれますか?」


前日だ。


「それはしおりの1ページ目を見てくださいね?」


 先生がにこりと笑いながら返した。


 クラスメイトの男子が言ったまさしくテンプレの質問だったが、その回答はすでにしおりに書いてあった。

 わざわざテンプレを封じないでほしい。

 ラノベを読んでいると、先生への質問ランキング(個人の感想です)でも上位に入るものなのに、先に封じられては言うことが出来ないからだ。


 まあ、一切しおりを読まずに質問するバカもいたが、私はあそこまでする気はない。

 決して、羨ましく思っている、なんてことはない。


「他に質問はない?」


 一部には騒いでいる奴もいるが、小1の子供としては比較的おとなしいほうだろう。


 しおりを見る限り、本の制限は特にない(ただ書かれていない)ようなので、私は興味を失いラノベの続きを読むことにした。

 例のごとく、魔術によって周りに気づかれることはない。


◇◆◇◆◇◆◇


 遠足当日


「忘れ物はないですか?」

「「「はーい」」」


 クラスメイトが元気よく返事をした。


 私は眠い目を擦りながら、後ろの方で気配を消して立っていた。


「なんだ、眠いのか?」


 山本(やまもと) 周作(しゅうさく)が声をかけてきた。


「うん。ちょっと眠れなくてね」


 あくびをしながら、そう返した。


「遠足が楽しみで眠れなかったとか?」

「あー、うん、そんな感じかな?」


 実際は違うが、とりあえず同意しておこう。


 本当は魔術回路の強化を行っていたのだ。

 もう少しでネットワークでも繋がる場所を限定すれば、使えそうなレベルまで育ってきたのだ。どうせなら、遠足中にもネット小説が読めるようにしておきたい。


「子供だなぁ」


 周作は笑いながら言った。


「山まではバスで行くんだよね?」

「ああ、ふもとまでバスで行って、そこからは歩きのはずだ」


 なら、バスの中で寝よう。さすがに眠すぎる。

 魔術で眠気を飛ばすこともできるが、疲れはあまり取れないので普通に寝たほうが効率がいい。


「おい、前がバスに乗り始めたし、俺たちも行くぞ」

「うん」


 私はバスに乗り、自分の席に座るとすぐに眠りについた。


 麓までは30分くらいあったはずなので、それだけ寝れば多少は眠気も、疲れも取れるだろう。


◇◆◇◆◇◆◇


 山頂についた。

 途中は寝ぼけていたので、ほとんど覚えていない。


 まあ、何度も登りに来ている山なので、特に問題はなかった。


「さて、みなさん、お弁当の時間ですよ~」


 ワイワイとクラスメイト達が一層騒ぎ出した。


「はい、しずかに~」


 この声でしゃべらなくなるのは、それなりにおとなしい数名くらいだ。

 聞こえてくる声はたいして変わらない。


 私はというと、喋る相手もいないので、もとから静かにしている……


「ご飯を食べ終えたら、休憩時間になります。でも、勝手に下りないようにしましょうね」


 先生が声を張り上げながら言った。

 だが、そんな注意もどれだけの生徒が聞いているかわからない。


 教員という仕事も楽ではないようだ。


 私は適当な場所を見つけレジャーシートを引くと、昼食を食べ始めた。


「宏輝君」


 弁当箱の中身が半分ほど減ったとき、先生が近くに来た。


「あ、斎藤(さいとう)先生」


 先生は「ここ、いい?」と聞きながら私のレジャーシートの上を指さしていた。

 「どうぞ」と言いながら、体をずらし先生の座る場所を空けると「ありがと」と笑顔で言いながらそこに座った。


「宏輝君は他の子と一緒に食べないのかな?」

「まあ、特に食べる人もいませんし」

「真央ちゃんとかは?」

「マナちゃんはあっちで、ほかの女子と食べてますよ?」


 先生はなにかが気になるのか、少しだけ考えるそぶりを見せてから、口をひらいた。


「ねぇ、宏輝君。学校って退屈でしょ? 周りが子供過ぎるから」

「まあ、そ……」


 ここまで言って気が付いた。

 普通なら私が大人びた性格だからという理由から、子供っぽい中にいるのは疲れるだろう、という意味で聞いていると思うだろう。

 だが、この先生はなにか違う意味も含ませているように感じる。


 この場合の最適な回答は「僕も子供だよ?」とか言って、とぼけることだったのだろう。

 しかし、ここに座ろうとしたとき、わざと子供相手、ましてや小1の生徒にはしないような行動をとり、私はそれに対して正しい(・・・)反応をしてしまった。

 だが、その正しい反応は、普通の子供ではないという証明のようなもの、だったのではないだろうか。


「そうかも」


 曖昧かつ小1の子供でもするような回答だが、これで逃れられないだろうか。


「どうして、そう思うの?」


 先生に質問される前に聞いてみた。

 これで対処法が見つかればいいのだが……


()を注意して見ていれば、そんな感じはすると思うよ? 特にクラスメイトが遊んでいるときの君の顔とかね」


 どうやら、年を取りすぎたゆえの弊害のようなものがあったようだ。

 ほかの世界ではこちらから話すまでバレることはなかったが、驚いた。


 だが、ラノベのように異世界や転生という概念はあれど、一般人にはまだ浸透していない。

 話したとしても信じてもらえる可能性は低い。

 まあ、この人のことは信用してもいいだろう。

 長年の経験から、この人は大丈夫だ、と思える。


 どうせなら、オタクの方が話がスムーズに進む。

 こっちからも鎌をかけてみよう。


「先生って2chで面白いことありました?」

「最近は異世界からの転生者の話が面白かったかな?」


 完全にオタクだった。

 それも、私の正体を疑っているようにも見える。


「私は君の試験に合格できたのかな?」


 先生はそう言いながら、私の顔を覗き込むように見てきた。

 鎌かけは気づかれていたようだ。


 たぶん、いろいろと隠す必要はないだろう。

 魔術の事は伏せておくにしても、外部のそれも大人の知り合いというのは、なにかと都合がいい。


「ええ、大丈夫です。これだけわかりやすい証拠を出されては、同志と認めざるを得ませんね」

「それはよかったよ。168回目の転生者さん」


 私は絶句した。まさか身バレまでしていたとは。


「なんでそう思ったんですか?」

「あら? その聞き方は当たった見たいだね」


 もしかして、あれも鎌かけだったのか。


「完敗、お手上げ、降参、参った。正直ここまでバレているとは思いませんでした」

「ってことは、君がその転生者ってわけだね?」

「そうですね。実際には千数百回くらい転生してきましたけど」


 私が正直に答えると、先生はさも驚いたように


「……マジ?」


と聞いてきた。

 なんだか先程とは雰囲気が違った。


「はい、そうですけど。もしかして、今までの全部ハッタリだったとか?」


 先生はその質問に首肯した。


「まさか、本人だったとは思ってなかったよ。せいぜい同じ掲示板の住民かと」

「そうだったんですか……」


 がっくりとうなだれた。

 まさかこんな20後半の教員に、ここまでしてやられるとは思っていなかった。


「で、転生者っていう証拠みたいなのはあるの?」

「なにを見せてほしいんですか?」


 先生は少し考えると、


「飛行魔術、とは言わないから、適当に魔術を見せてよ」


 とてもキラキラした目をしながら、そう言ってきた。


 すでに隠す気はないので、問題はないが、どうせならわかりやすく、なおかつなにかのネタを使いたい。

 なぜなら、私もオタクの領域に足を踏み入れたものだからだ。


「じゃあ、有名なあれを再現するので、右手を前に突きだしてください」

「幻想をぶち壊すんですね?」

「話が早くて助かるよ」


 私は幻影を作り、周りから今から起こる出来事を認識されないようにした。

 そして、探査魔術を使い周囲にある砂鉄を探し、それらを操作魔術を使い指先に集め、剣の形に形成する。

 指を振り下ろすと同時に指先の剣も振り下ろされ、先生の右手に当たった瞬間砂鉄に戻した。


「お~!!」


 先生は「すごい! すごい!!」と子供のようにはしゃいだ。


 周りには幻影を作ってあるため問題はないが、これではどちらが子供かわからない。

 まあ、実際の年齢を考えたら、私のとってはこの世界のほぼすべての人が赤子も同然なのだが、そんなことは気にしない。


「先生、落ち着いてください。周りには他の生徒がいるんですよ」


 先生はその言葉を聞くと、恥ずかしくなったのか顔を赤くしてシートの上に座った。


 決して見えているとは言っていないので、嘘ではない。嘘ではないが、見えていると勘違いしていた方が楽なので、そのままにしておく。


「大丈夫です。一応注目しているような人はいませんでしたから」

「そ、そう。よかった」

「で、これで信じました?」

「もちろん」

「他の人に言っても信じてもらえない可能性の方が高いですが、一応このことは他言無用です。無駄に目立つ気も、知識チートを現代で行うつもりもないので、そっとしておいてくれると助かります」

「わかった。誰にも言わない」

「頼みますね。広まったら、知っている人全員に記憶操作と意識操作を行う必要が出てしまうので」


 にっこりと笑いながら忠告したら、先生は首をコクコクと上下に動かしていた。

 そんなに怖かったのだろうか?


 先生が去ったあと、限定的なインターネットへの接続を試した。

 ネットへの入り方は家の中で解析したので、入ったあと、目的のサイトに移動するまでが一番大変だ。


 できる限り余計なことはせず、リソースを魔術回路に全振りする。


 まずは、ネットに入るための魔術を行使する。


 広い場所につながった感覚がしたので、成功したのだろう。


 次に、目的のサイトにアクセスする魔術を行使する。

 それが完了したことを確認すると、ネットワークとの接続状態を固定する魔術、サイトを可視化する魔術にすぐに切り替える。

 目的のサイトは某検索エンジンだ。


 これだけでも、私のリソースの9割を占めかねない。


 某検索エンジンに接続が終わり、そこから逆算し、このサイトへ直接来れるような魔術を完成させた。

 そして、すぐにすべての魔術を終了させる。


 かなり疲労したが、その分収穫は大きかった。

 明日は土曜日なのでしっかりと休むとしよう。


 私はリュックサックからお菓子を取り出し、次々と食べた。

こんにちはyoshikeiです。

今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。


ストーリーについてですが、

こんなに早くに転生者という事をほかの人に明かすとは思っていませんでした。

宏輝君よりも斎藤先生が一枚上手だったという事ですね。

斎藤先生が思った以上にやり手で、ビックリです。

ちなみに、先生がオタクというのは結構あるようです。

私の通っている学校では、一部の先生にホモネタが通じます。ビックリです。

思った以上に後書きが長くなってしまいましたので、ここらで終わりにしておきたいと思います。


今後ともよろしくお願いいたします。



ほんとに駄菓子屋さんで値切っちゃダメですよ?

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