急変
自室に戻ると、俺の身代わりが待機していた。
「主よ松山様から連絡が入っております」
「香里から?」
「ひとまず折り返すと伝えておきましたが、なにやら雰囲気が違ったように感じます。なるべく早急に連絡したほうがよろしいかと」
「分かった。今連絡しよう」
「かしこまりました」
差し出されたスマホを操作し、香里に電話を掛ける。
『はーい、香里でーす』
明らかに別人だった。
「宏輝だ。時間が出来たのでかけ直した」
『あー、よかったー。最近会う事もないしぃ、そろそろ本格的な魔術を教えてほしいなーって』
声は同じだが、性格は激変している。
どう考えてもおかしい。
「……そうだな。今度の土曜日にやるとしよう」
『はーい』
「ところで、なにかあったのか?」
『なにかって、なにがー?』
気づいていないのか? 少なくとも何かしらの異常があることは確かだろう。
「……いや、なんでもない」
『じゃあ、またね~』
そう言って、香里は通話を終了させた。
突然の性格の変化、心当たりがないわけではない。
もちろん、数多くの世界を渡っているため医学の知識もあるが、これほど短期間で変化するのは、原因が限られてくる。
香里にはひそかに護衛も付けているため、いじめなどによる精神的ダメージというのは、かなり少ないだろう。
この世界でも比較的馴染みのある要因としては、多重人格だろうか。性格が激変したというよりも、別の人格と言ったほうが正しいレベルなので、一番近いといえるだろう。
多重人格の原因としては精神的ストレスがメインだが、魔術の失敗によっても起こりうることなので、ありえない話ではない。
まあ多重人格は、元の人格が残っていることが前提なので、人格の崩壊が起こっていたら、終わりなのだが……あまり余計なことは考えないほうが良いだろう。
だが、それよりもたちの悪い可能性がある。
「シード化した。なんてことはないだろうな」
シード化すると、全体的な能力の向上とともに、稀に精神が変化する。
その副作用として人格も変わるのだ。
「こんなに早く、協会を頼ることになるとはな」
俺は京谷に電話を掛けた。
みなさんこんにちはyoshikeiです
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
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次回の投稿は3月19日午前8時です




