運動会01
本日3話目です。
今日は運動会。
年に一度、ほかの子供たちと一緒に体を動かさなければならない日だ。
もちろん待ち時間はあるが、紅白に分かれているため、大抵は同じ組の応援をしている必要がある。
むしろ応援していないと先生に注意されるという意味の分からない行事だ。
どうやらこの国は周りと一緒の行動をすることを善とし、違う事をしていると悪とみられるようだ。
まったくもって意味が分からない。
仮病で欠席してしまおうかとも思ったが、転生を700回くらいした時に身体的な不調が起こらないようにしてしまったため、病気になった時どんな反応をすればいいのか忘れてしまった。
よって、運動会に出る必要があったのだ。
「――――――えー、みなさんがこれまで練習してきた―――」
相変わらず校長の話が長い。
というか、校長に限らず壇上に立って話をする奴は大抵長い。
他の世界では、話はできるだけ簡潔に終わらせる。というのが普通だったので、めんどくさい。
まあ私としては、魔術で普通に立っているように見せ、読書をしていればいいので特に問題はないが、聞こえてくる文章に無駄が多いので鬱陶しいのだ。
「―――プログラム1番 ラジオ体操」
おっと、さすがに魔術で作った幻影を動かすのは、処理がめんどくさい。
私はすぐに立ち上がり、マジックボックスにラノベを放り込んでから、幻影を消した。
◇◆◇◆◇◆◇
「プログラム7番 かけっこ」
放送を担当する先生が、種目の説明をしていた。
小1なので出る種目は少ないが、これは私も出る種目の一つだ。
入場してしばらく待つと、私の番が来た。
横一列に4人並ぶ。
先生がスターターピストルを掲げた。
パンッ!!
音と同時に走り出す。
手を抜いていると面白くないので、こんな時くらいは全力を出してみようと思い、魔術を限界まで使用する。
身体強化、身体制御、認識強化、要塞の4つを重ね掛けし、一瞬でトップスピードに乗った。
魔術の説明をしておくと、
身体強化は筋力や瞬発力の強化
身体制御は運動を最高効率で行い、身体能力を最大限まで引き出した動きをさせる
認識強化は高速で移動するときでも、どんな状態かが認識できるようにする
というものだ。
すべて身体能力を魔術的に数倍に引き上げる。
よって、素の能力値が高いほど効果は高いというわけだ。
要塞は数瞬の間、特殊な空間を作り上げ、周囲の物理、魔術的影響を消すというものだ。
ただし、生物には効かない。術者の行動を阻害しては意味がないので、範囲内の一定以上の大きさを持つ生物と、それの触れている物は効果を受けないようになっている。
欠点は連続使用できず、魔術回路にそれなりの負荷がかかることだが、これに関してはいつも魔法陣を持っているため、他の魔術の使用中でも問題はない。
これは周りの子供に被害が出ないようにするための保険だ。
基礎体力を鍛えるなら魔術は使わないほうが良いのだが、今回は鍛えるのが目的ではないので、遠慮なく使ってみよう。
バンッ!!!!!
スターターピストルよりも大きな破裂音が鳴り響く。
その直後、私の体はゴールテープにぶつかった。
そして、要塞の効果時間が切れ、体とテープが地面についた。
私は激痛が残る腹に手を当て、使用していた魔術を解除し回復魔術をかけた。
こんな状態になった理由はなぜかと考えていると、1つ思い当たることがあった。
要塞という魔術は、狭い場所での瞬間的な使用を目的としているため、効果範囲が極端に狭い。
そのおかげで発動時間が短く、遠距離攻撃をすべて無効かすることが出来るのだが……
もしかして、と思い調べてみると、案の定テープを持っている生徒が要塞の効果に入っていなかった。
よって、テープは一定以上の大きさの生物に触れていないと判断され、固定化されてしまったのだ。
「さ、最悪だ……まさか、こんなことになるなんて…………」
周りから見たら、子供がテープの手前に突然現れ、転んだように見えるだろう。
できる限り早く起き上がり、何事もなかったように振る舞わなければ……
「な、なんだあれ!」「しゅ、瞬間移動!?」「先生! 早く!!」
まずい。騒ぎになりかけてる。
痛みは多少残っているが、なんとか起き上がる。
周りを見ると、これを撮影していたようなカメラは幸いにも4、5台しかない。
うちの親も録ってはいるが、あれは魔術に反応して通常の映像に作り替えられるように細工がしてある。私の魔術を録ってしまい、不信感を抱かれるわけにはいかないので、家にいる間に細工をしておいたのだ。
いわゆる条件起動型の魔法道具というわけだが、そんなことは気にしない。
ほかのカメラはすぐにデータを書き換える必要がある。
記録映像を見られると、その分記憶が深く定着する。そのため、記憶の改竄も大変になってしまう。
すぐに父親が持っているカメラからデータをコピーし、探査魔術により該当データを探し出した。
撮影で来ていたと思った台数より2台多かったが、なんとかなる範囲だ。
俺の行動が記録されている元のデータをダミーのデータへと書き換えた。
あとは、人の記憶と意識操作をする必要がある。
とりあえず、記憶だけは改竄しておき、ゴールテープを係の人に持たせダミーのデータと同じように走った。
その後、順位ごとに並びながら、いまも私の行動に興味を持っている人物たちの意識操作をし、その事実を隠ぺいした。
今後は不用意に魔術を使わないようにしよう。
後始末がめんどくさい。
皆さんこんにちはyoshikeiです。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
ブックマークと評価ありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。