この世界の……
本日2話目
猪は少しだけ重心を後ろに移動させる。
次の瞬間、突進をかましてきた。
「猪って人間を見ると逃げるんじゃないのか、よっ!」
俺はそれを正面から受け止める。
異世界の技術がふんだんに使われた防具を身にまとっているのだ。迷宮の奥にいるようなボスでも出てこない限り、破られることはない代物だ。
この世界の動物がシード化したくらいではびくともしない。
「捕まえることもできたし、ゲージに入れて持ち帰らないとな」
猪は手の中でジタバタと暴れるが、お構いなしにゲージへと放り込んだ。
「捕獲完了。早く帰って、調べないと」
探査魔術を使い、周りに人がいないか確かめる。
山のふもとまで範囲を広げてみたが、特に誰もいないようなので、そのまま自宅へと戻った。
戻ってきた後、ふと気が付いた。
「流石に、この部屋の中で猪を出すわけにはいかないよな……」
そうぼやきながら、天を仰いだ。
◇◆◇◆◇◆◇
宏輝が猪を捕獲し、自宅へ転移してから、数時間後
月の光も届かないほど黒い空の元、
「この辺りは不自然に魔力が濃くなってる」
一人の少女が山を訪れていた。
「見たことない不自然さ」
なにかを調べるように地面や周りの木を探ったり、ブツブツと何かを言いながら空中で手を動かしている。
「あれ? 魔力が強くて一人かと思ったけど、微弱な魔力がもう一つある?」
少女は考え込むように、顎にてをあてている。
「強いほうはたぶん魔法使いだけど、弱いほうは感じたことない。それに、なにか気持ち悪い。弱いほうの魔力は……ここ?」
なにかを見つけたのか、家主のいなくなった巣穴を見つめる。
「猪の巣穴だけど、普通の生き物が出すような魔力じゃない」
穴の次は、何もない空間を見つめ始めた。
「……やっぱり、こんな乱れ方は見たことない。お師匠様に報告しないと」
少女はそうつぶやくと、光の灯る場所へと走っていった。
みなさんこんにちはyoshikeiです。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
ブクマ50件突破記念として投稿させてもらいました。
これからも投稿を続けていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします。
今後ともよろしくお願いします。