胸騒ぎ
ようやく書きたいものが書けそうです。
雨も多くなってきた6月
教え始めてからかなりの時間がたっているが、私は相変わらず香里に魔術を教えていた。
現在は転移魔術の理論を教えているので、香里の家に来ている。
なんでも、見せたいものがあると言われ、急遽内容を変更した。
一通り授業が終わった後、香里がなにかを持ってきた。
「これなんだけど」
香里の掌には半透明の石があった。
形はいびつだが、20㎜×10㎜ほどの大きさがある。
たぶん、これが見せたかったものだろう。
「宝石か?」
周りの光も吸い込むようなくらい黒い石だ。
「どこで手に入れたと思う?」
「見たことはないし、検索にも引っかからないな」
とりあえず、ネットを使い調べてはみるが、さっぱりわからない。
だが、不思議なことに胸騒ぎがする。
「これはなんだ?」
「これは、学校で手に入れたの」
「学校? というと、藤森高校でか?」
「そう」
胸騒ぎが一層強くなった。
俺は これ を知っているのか?
「校舎裏にいた犬から手に入れた物」
「……まさか、ドロップアイテムとか言うんじゃないだろうな」
わかりやすいように例えたが、一部の世界ではごく稀に、死ぬと物を落とす生物がいた。
「その、まさか、よ」
「それって、どうやって倒したんだ?」
この世界の生物なら、物理攻撃でなんとかできるはずだ。
「やっぱり、予想はついてるみたいね。こっちからの物理的な干渉は一切受け付けなかったわ」
「という事は、魔術か?」
「外で勝手に使ってしまったのは謝るけど、悪いとは思っていない」
「検証はしたのか?」
「もちろん。情報がないなら、できる限り試さないと気が済まないのは、師匠も知ってるでしょ?」
「まあ、な」
香里からゲームをやろうと誘われた時の半分は、検証に付き合ってほしいから、という理由なので、わからないことに出会った時、どういう行動に出るかは大体想像がつく。
「身体強化してから殴ったけど、こっちからの攻撃は全部すり抜けていたわね。言うなれば、半霊ってところかな」
「人を襲っていたのか?」
「襲おうとしていた、かな。そこらへんにあった木の棒で防ぐことはできたから、発見してからは襲われてないよ」
「なるほど。実体と霊体が切り替わるから、半霊ってことか」
「そう言うこと」
記憶を探ってみるが、そんな動物や魔物は他の世界にもいなかったように思う。
「それに、その動物も異様な見た目をしていたの」
「なに?」
「形としては犬だったけど、色は石よりも黒くて、黒い炎のようなものを身にまとっていた」
「黒い炎……」
小声でつぶやく。
「他には見たのか?」
「周りにはいなかったはずよ」
「受け取っておいた方がいいのか?」
「出来れば師匠の方で保管してほしいわね」
「分かった」
そう言って、香里から石を受け取った。
「決まりを破り、魔術を外で使ったことに関しては、不問にしよう。見られたりはしてないな?」
「ええ、誰にも見られていないはずよ」
「なら、特に問題もないな。悪いが、明日の講義は休みだ。これを調べたい」
「残念だけど、そのほうが良さそうね。なんだか悪い予感がするもの」
「今日は帰らせてもらうぞ。自主練だけは怠らないようにな」
そう言い残して、帰路に就いた。
とても嫌な予感と胸騒ぎがした。
みなさんこんにちはyoshikeiです。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
さて、プロットの改変によって止まっていた投稿も、なんとか再開することが出来ました。
なぜ宏輝君は転生を続けているのか、次回、明らかになります。
今後ともよろしくお願いいたします。