プロローグ
順風満帆なキャンパスライフを楽しむ、私、熱海美和大学2年生。事件が起きました。
「店長、それって」
「ごめんね、熱海さん。これ今月のぶん」
働いていたカフェが大赤字で潰れ、アルバイトをやめざるを得なくなってしまいました。大学生活とアルバイト両立させたい故に週2だけ働けるいいアルバイトだったのに。最悪だな。ほかのアルバイトも探してみたけどいいのがなくて、私は途方に暮れていた。
最後のお給料は手渡しでもらいぼんやりと歩いていると、突如、強風がおそいチラシが私の顔に張りついた。私はチラシを剥がし、捨てようとすると、よくよく見てみればアルバイトの求人。
時間曜日は要相談、あなたの都合に合わせます。詳しくはこちらまで
と書いてあった。そこには地図と電話番号が載っていた。私は急いでスマホで電話をかけた。
しばらくすると呑気な男の声が聞こえた。
「はい、こちら有馬骨董店です~」
「あの、チラシのアルバイト募集見たんですけど」
呑気な男の声とは裏腹に私は早口で緊張しながら言った。
「あっそう、チラシなんて作ったかなぁ。まぁいいや、人は欲しいと思ってたんだ。いつこれる。履歴書とかはいいから」
「今から行けます」
私は反射的に答えていた。
「あっそう、じゃあ早く来てな」
私は急いでその地図に書かれた場所に向かった。下北沢の商店街の脇道にひっそりあった。いかにも知る人ぞ知るという感じのお店だ。有馬骨董店という看板の文字がツタで少し覆われている。私は引き戸に手をかけなかに入れば、「いらっしゃいませ~」というやる気のなさそうな声。
「あの、さきほどお電話させて貰った。熱海です。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げれば、男は椅子を指差し私は腰を掛けた。
男の年齢は二十代半ば、やや癖のある髪で、丸眼鏡をかけている。よくよく見ればイケメンの類にはいるだろう。
次々と質問され、男は一息ついた。
「じゃ、採用で。じゃあこれエプロン」
「は、はい。よろしくお願いします」
私は大きくお辞儀した。
そして新しいバイト生活がはじまったのだった。