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四季の女王達   作者: 大西洋子
6/12

西の知恵者

 三番目の王子は、雁を探しながら精霊王の国の中心からみて西の方向に向かいます。

 ですが、雁と言われてもその姿はあやふやで、行く先々に住む人にどう訪ねればいいのかわかりません。

「王子、あなた達に勉強を教えてくださったフクロウ博士が、この近くに居を構えていたはずです。博士に知恵を借りてはどうでしょう」

 王子はその博士が苦手でしたが、春を待つ人々のため博士をたずねることにしました。

 博士は深い森の奥に、ひっそりと暮らしていました。

「おお、あの精霊王の三番目の王子殿か。王子よ、勉学にはげんでおるかの?」

 顔をみるなり、フクロウ博士は王子にそう言いました。

「……ほほ、相変わらずじゃの。

 そんなおまえさんが、このワシをたずねるとは、よほど困ったことが起こったとみえる。ささ、中に入られよ。菓子を食べながら話を聞くとしよう」

 王子はフクロウ博士に招かれるまま居に入り、大好きな菓子を食べながらこれまでのことを話しました。

 冬が終わらなくなっていること。

 塔に様子を見に行ったら塔が氷でおおわれていたこと。

 氷を取り除くと冬の女王が繭に包まれた状態であったことを。

 次なる季節への廻らせ方をたずねるため、一番上の王子が北に向かっていることを。

 夏の女王に会い、春と秋の交代時の話を聞いたこと。

 二番目の王子が、ツバメと共に精霊王の元へと向かっていることを。

 雁が秋の女王の居場所を知るかも知れないが、その雁がどのような鳥なのかはっきりしないことを、正直に話しました。

 じっと静かに話を聞いていたフクロウ博士は、茶を飲みながら、嬉しそうな顔をしました。

「……ほほ、そなたらの妹君は、ワシの理想通りの知恵者として成長したようだの。ほほ。……それに比べたら…… 

 お小言はこれくらいにしておこうぞ。

 王子、雁は空に矢印の列をなして飛ぶ鳥だ。

 ――どれ、ワシも秋の女王を探す手伝いをしようかの」

 フクロウ博士はそう言うと、手早く旅支度を整え、王子と共に雁を追うことにしました。

「南風よ、そなたは父の元に向かって欲しい。途中、雁の群れを見つけたら、雁と共に我の元に戻ってもらえぬか」

 こうして、王子は南風と別れ、フクロウ博士と行動を共にすることになりました。

 ですが、王子はフクロウ博士の勉学が延々と続き苦痛を感じていましたが、フクロウ博士が根気よく、わかりやすく時にはシャレを交えながら話していることに気がつき、やがてフクロウ博士の話が楽しいと感じるようになりました。

「……あぁ、博士の話、何故苦手だったのだろう。

 知らないことを知ると言うことが、こんなに楽しいとは思いもしませんでした」

 フクロウ博士はその言葉を聞き、嬉しそうに目を細め、歌うような鳴き声をあげました。

 その鳴き声に驚いたのか、薮の中から雁が一斉に飛び立ちました。

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