夏の女王
私は冬の女王とは面識ありませんので、春と秋の女王について話しましょう。
まず、春の女王から。
春の女王はとても可愛らしい方です。そうですね、あなた方の妹君より少し歳下でしょうか。
あの方は、背中に蝶の羽根をもっており、その羽根で、ときどき塔を抜け出して、世界が花でおおわれるのを見るのが好きだ。と語っていたことがあります。
天真爛漫で様々な者に好かれています。ただ、謎めいた方で、何時、何処から塔に来られるのか謎に包まれています。
春の女王との交代のことですね。私はツバメが精霊王の住まいに旅立つ頃、そろそろ季節の交代の時期だと感じ、精霊王の元に参上するための準備をします。
そして、長い雨の頃、春の女王が季節の交代だと告げにきます。
私は春の女王と共に精霊王の塔に向かい、しばらくの間共に過ごします。
その後、春の女王は北の方に行かれるそうなのですが、詳しいことまでは存じません。
秋の女王との交代について、お話しましょう。
秋の女王との交代の時期になると、ツバメがこの国に戻る準備を始めます。それを見て、わたくしも国に戻る準備を始めます。
やがて、雨と風の頃がきます。その雨と風の頃を何度か繰り返していると、西の方から秋の女王がやってきます。
あの方はそうですね、私より少しばかり歳上です。私と会うときは足元まで隠れるロングのドレスをまとって来られます。
そうそう、秋の女王は雁と仲がよく、季節毎に住まいを変える雁に様々な話を聞くのを楽しみにしていると、語っていたことがあります。
南風よ、この時期、雁達をどの辺りでよく見掛けますか? 精霊王の国の西側ですか。秋の女王が来られる方向ですね。もしかしたら、その辺りが秋の女王がお休みになっておられるところなのかもしれませんね。
春の女王の行方はわかりませんが、秋の女王の行方らしき方向はわかりました。
「弟よ、すまないが西の地に向かってくれぬか? わしは、この情報を持って国に帰ろうと思う。南風よ、そなたは弟の手助けを頼みたい」
「二番目の王子様、精霊王の元に戻られるなら、ツバメと戻ってくださいませんか? 少し早いですが、彼らも精霊王の元に住まいを変える時期です」
こうして二番の王子はツバメと共に精霊王の元へ、三番目の王子は南風と共に西に向かうことになりました。