南の国
残された二人の王子は、南風と共にツバメを探すことにしました。
南風は、ツバメと共にこの地に来たことがあったので、その、記憶をたぐり寄せながら、時折、その地に住まう者にツバメの行方を問いながら、その方向へと歩き続けました。
何日も何日も歩きました。
宮殿暮らしに慣れた王子達には辛い旅でしたが、春を待つ人達のためだとお互いに叱咤しながら、旅を続けました。
やがて、彼らは南の国にたどり着きました。その国には、ツバメがたくさん空を舞っておりました。
もしかすると、女王がこの地にいるのかもしれない。
はやる心を抑え、旅の疲れと汚れを落としたのち、王子達は、その国の王に挨拶をかねて面談を求めました。すると、すぐ面談できるとのことでした。
王子達は、宮殿の奥の方に案内されました。どうやら王の私的な庭のようです。
「ようこそ。まさか、精霊王のご子息みずからおいでになるとは……」
王の姿を見るなり、王子逹は思わず息をのみました。何故なら探していた夏の女王その人が、そこにいましたから。
「夏の女王様……」
「何か困ったことが起きたのね。こちらにどうぞ」
夏の女王は庭の中にある屋根付きのベンチに案内し、召使いに食事を運ばせました。
「ささやかですがお召し上がりください。話はそれからにしましょう」
ひととおり食事が落ち着くと、夏の女王は王子達にお茶を注ぎ、召使いを下がらせました。
「――さて、話を聞きましょう」
王子達は、これまでのことを話しました。
冬が終わらなくなっていること。
塔に様子を見に行ったら塔が氷でおおわれていたこと。
氷を取り除くと冬の女王が繭に包まれた状態であったことを。
次なる季節への廻らせ方を訪ねに、一番上の王子が北に向かっていることを。
「――冬の女王が、そんなことになっているとは……」
夏の女王は息をのみました。
「精霊王と我らの妹は、女王様の四季の交代に解決策があるのではないかと考えております。
些細なことで構いません。四季の交代のことで、話してはいただけないでしょうか」
「噂には聞いていましたが、あなた達の妹君は知恵者ですね」
夏の女王はそう言うと、同行している南風にあなたも気づいたことがあれば話してくださいね。と、前置きして話し始めました。