四季の廻り
「長年、女王様達にお仕えしていますが、このようなお姿をお目にするのは初めてです」
精霊王の姫君の介抱で、やっと落ち着いた女王のお世話をする者が絞り出すように言いました。
「女王様は、約3ヶ月程、この部屋に滞在されて、季節を巡らせているのですよね」
「はい、およそ3ヶ月程、この部屋で過ごされます」
「……3ヶ月も、こんなところに……」
姫君は思わず部屋を見渡します。薄暗くて、寂しくて、気が滅入りそうです。
「およそ、とな」
「はい。特に季節の変わり目の頃は、女王様がここにおられないことがあります。逆に次の季節の女王様といっしょにすごされることもあります」
お世話をする者の言葉で、精霊王は季節の移り変わりを思い返します。
冬なのに暖かい日があったり、夏なのに涼しすぎることがあったりすることを思いだしました。
「季節とは違う暖かさや寒さは、次の季節の女王がいるからか?」
精霊王の問いに、お世話をする者はうなずきました。
「女王様が自分の季節以外の時、何処でどのようにされているのでしょうか?」
「それは、私達も存じません」
精霊王は、四季の女王達は何処から来て、何処に帰るのか。塔にいない時は何処で何をしているのか。それに関してまったく知らないことに気づかされました。
「他の女王達を召還して、四季交代に関して問うことは可能か?」
「春の女王は可能ですが、夏と秋の女王は不可でございます。今、この地に存在できるのは、冬と次の季節である春の女王だけです」
そこで精霊王は、新たなおふれを出しました。
【季節を司る女王の所在に関する情報を求む。どんな些細な情報でもかわない】
おふれはまたたく間に世界中に広まり、次々と情報が集まります。
集まった情報を整理していると、どうやら風を司る者らが四季女王と深い関わりがあることがわかりました。そこで精霊王は彼らを召還し、彼らに四季の女王のことで疑問に思ったことを語り、それに関して何か知らないかと問いました。
すると、風を司る者らは自分達は四季の女王の力の一部ではあるが、この時期以外の女王が何処にいるのかはわからない。だが、季節によって住まいを変える渡り鳥なら、他の女王の居場所がわかるかもしれない。ということがわかりました。
そこで精霊王は三人の王子達を召還し、彼らに風を司る者らと共に、渡り鳥の行方を追うように命じました。