四季の塔
世界の中心に精霊王と、四季を司る四人の女王様がいました。
精霊王の宮殿の塔に、女王様たちは交代で決められた期間住み、季節を巡らせます。
ところがある時のことです。いつまで経っても冬が終わらなくなってしまいました。
困った精霊王は、こんなおふれを出しました。
【冬の女王を春の女王と交替させた者には好きな褒美を取らせよう。
ただし、冬の女王が次に廻って来られなくなる方法は認めない。
季節を廻らせることを妨げてはならない】
このおふれは、またたく間に世界中に拡がりました。
冬の女王が塔から出てこない?
春の女王はどうした。
なにがどうなっているのだ?
精霊や妖精達は、とにかく、その塔がどうなっているのかを確かめるために、次々集ってきました。
塔は厚い氷におおわれ、女王の世話をする者も、中に入ることすらできないと言います。
とにかく、塔の中に入らねばなりません。
力自慢の者達が名乗りをあげ、塔をおおう氷を取り除こうとその力をふるいますが、氷を取り除いても取り除いても、冬の女王の姿を確認することができません。
ならば、その氷を突いたらどうだろうと、剣や槍の使い手が名乗りをあげ、氷を突いていきますが、突いても突いても、冬の女王の姿を確認することができません。
ならば、氷を溶かしてみようと、火や熱をあやつることができる者が名乗りをあげ、氷を溶かしますが、溶かしても溶かしても、冬の女王の姿を確認することができません。
精霊王はどうしたものかと悩みました。すると、静かに見守っていた精霊王の姫君が言葉を発しました。
「では、彼らにもう一度順番に力をふるってみてはどうでしょう。少しずつでも氷をとりのぞくことはできています」
姫君は力自慢に、剣や槍の使い手に、火や熱をあやつる者ひとりひとりに、励ましの言葉をかけました。姫君に励まされ、彼らは交代で力をふるいます。すると、少しずつではありますが、おおわれた氷が塔からはがれていきます。
やがて、四季の女王の部屋へ入れられるようになりました。
「冬の女王様!」
真先に部屋に入った四季の女王のお世話をする者が、冬の女王の姿を見るなり悲鳴に近い声をあげ、その場に座り込んでしまいました。
「……これは、いったいどういうことなのだ……」
精霊王の目には、部屋いっぱいに、身体のほとんどを氷の繭に包まれた冬の女王の姿が写し出されていました。