9:被害者は覚えていた
サブタイトル少し悩んだ。
もう日本語がおかしいのには諦めがついた。←ダメ人間
ザッパァーン!
頭からお湯をかぶる。
スライムを洗い流さらければ湯船にも入れない。
お湯に浸かりながら今日のクエストを振り返る。
スライム討伐の時、クロは属性能力を使っていた。
速移動と風斬波だ。
速移動はスキル使用者の移動速度を上げるもの。
風斬波は風の刃のようなものが飛んで相手を切るものだった。
30分で100匹以上も討伐できたのはこの2つのスキルのおかげだ。
なぜスキル名を知っているか?
それはスキルを使う時にクロがそう叫んだからだ。
スキル名を言わないと発動しないのだろうか。
...めんどくさそう。
あとは気になることが3つ。
1つは無属性能力のことについて。
いわゆる「無属性」のスキルだ。
アルテマとかいう史上最強の魔法が前世のゲームにはあったが、この世界では無属性能力は属性能力には勝てないと言っていた。
それなりのものが使えるのだろう。
問題はもしかしたら僕にも使えるかもしれないということだ。
女神は僕に『感情の器』を与えてくれた。
これはスキルの器だと言った。
そして僕には感情がない。
つまり「無」だ。
飽くまで持論だが、覚えればもしかしたら使えるかもしれない。
そして2つ目はその僕の感情についてだ。
あの空間で女神は僕に感情が無いと言った。
そして「唯一残っている感情が表に出ている」とも言った。
とても矛盾している。
そしてあの時表に出た感情は、僕に唯一残っているであろう感情は「怒」だ。
あの時、確かに僕は女神に「怒」を向けていた。
しかしそれだとひとつまたおかしなことになる。
感情がスキルとして手に入るなら、僕はもうとっくに「怒」をスキルとして持っているはずだ。
あの冒険者登録用紙の見方を少しクロに教えて貰っていた。
スキル一覧の所に書いてあるスキル名をその冒険者本人が触れると、その欄の表面が変わりスキルの説明が現れるのだ。
僕は『感情の器』の文字に触れてみた。
現れた文字は
感情の器・・・感情をスキルとして習得するためのスキル
現在の感情数:0
だった。
そして属性能力、無属性能力の欄は何も書かれていない。
どうしてだ。
感情と呼べるレベルまでいっていないのだろうか。
う〜ん。
僕は風呂から上がり、あとから上がってきたクロに3つ目の疑問をぶつけてみる。
「なあクロ。
スキルは何の制限もなしにどんどん使えるのか?」
「ううん。
スキルを使う時は魔力を消費するよ。
魔力が0になると気絶したり、動けなくなっちゃったりするんだよ。
スキルの威力や効果が高ければ高いほど魔力の消費も大きくなるんだ。」
なるほど。
MPみたいなのがあるのか。
「自分の魔力を回復したり限界量を増やしたりはできるのか?」
「魔力の回復はポーションや無属性能力の奪魔力かな。
限界量はスキルを使えば使えほど鍛えられるイメージ。」
とにかく鍛えろということか。
「なるほどね。
明日あたり無属性能力の習得に挑戦しようと思うんだ。
手伝ってくれるか?」
「もちろん!
属性がなくても無属性能力ならできるかもだしね!」
「ありがとう。
...そういえばもうお昼ぐらいか?」
「んーそうだね。
ご飯食べにギルドへ戻ろうか。
お金も稼いだところだし。」
「そうだね、行こうか。」
ギルドへ向かっているとクロが路地裏を指さし
「ここの路地裏通るとね、かなり近道なんだよ!」
と嬉しそうに言うのでついて行くと
「んあ?
おい、あれあの時の詐欺師じゃねえか?」
その声は僕でもクロのものでもなかった。
今前方に見えてるチンピラ盗賊みたいなやつの声だ。
「あのローブに赤と黄の目...間違いない!
あいつだ!」
仲間がこっちを見て叫んだ。
赤と黄の目の詐欺師。
クロのことだ。
そしてあいつらは多分詐欺の被害者だ。
「おい!小娘!
お前、前はよくも騙してくれたなあ?」
そういいながら3人ほどのチンピラ盗賊がこっちへ詰め寄ってくる。
クロを見ると少し怯えていた。
どうすればいい。
なにかしなければならない。
「なんだあ?
男なんか連れて。
また人を騙して次は彼氏かい?」
「..!
違う!」
すごい剣幕でクロが言い返す。
そんなに彼氏と思われたくないかこいつ。
「どうでもいいからそこを通して。」
さっきので少し火がついたのか喋るようになった。
「そういうわけにも行かないね。
こっちは騙されて金まで取られてんだ。
お金は利子つけて返すのが礼儀だよなあ?
とりあえず有り金全部置いてけよ。」
金目的か。
それなら払うだけで済む。
もう一度簡単なクエストにでも行けば..,
「嫌だ。」
「なに?」
なに?
「これはトオルと初めて稼いだお金なの!
あんたらに渡すもんか!
大体1回騙されただけでしつこいんだよ!
騙される方がわりぃんだろ!」
なんだなんだ。
ものすごく口悪くなったぞ。
...でもクロはそんなふうに思ってたのか。
「あー、そんな事言っていいのかなー?」
ガシッ
!?
僕は勢いよく前に倒れる。
いつの間にか後ろにいたチンピラの1人に倒されてしまった。
首に冷たい感触が走る。
首にナイフを突きつけられている。
「!
トオル!」
「ほらぁ、大事なトオル君の首に穴があいちゃうよー?
早く金出せよ!」
クロ、どうする。
今の僕には何も出来ない。
クソが。
バッ
クロが勢いよく右手を僕の上にいるチンピラに向けた。
「...ウ、風斬ッ...」
「おっと!」
ガスッ
「がっ!...うぐぅ..!」
スキルを使う寸前に蹴られてしまった。
「クロ!」
「おとなしく金を渡せばいいものをよお!
馬鹿だねお嬢ちゃん。
もう金を渡しても許さねえ。
ちょっとうちに来てもらおうか。」
「...!やめて!
ねえやめてよ!」
「うるせえ!
さっさと立て!」
クロが髪をつかまれ連れていかれる。
なにか、なにか自分に出来る事は?
なにかなにかなにかなにか!
何も出来ないのか!
非力すぎる!
クソが!
...
「...は..せよ」
「あ?」
「クロを離せって言ってんだよぉ!!」
ボゥ
身体が軽い。
上に乗っていたチンピラがいなくなってる。
隣を見るとそのチンピラはいた。
服が燃えていて、火を消そうとのたうちまわっていた。
「ト..オル?」
クロが驚いた顔でこっちを見ている。
「今、助けるから。」
その時頭の中で声がした。
『スキル『怒』を獲得しました。』
遂に一つ目のスキルが芽生える