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8:初仕事はスライムだった

討伐しに行くぞー


 ちゅんちゅん


 朝だ。

 異世界に転生というとんでもないことが起きても、朝は自然に目が覚めるというこの習慣は残っているようだ。


 クロはまだ寝ている。


 部屋にあった振り子時計は7時を指していた。


「おい、クロ。

 起きて、朝だよ。」


「むにゃ...ん〜?

 もう朝ですか〜?

 ...まだ7時じゃないですか〜。

 ギルドも店も開いてませんよ〜。

 あと1時間〜...ZZZ」


 ギルドも24時間開いてる訳では無いのか。

 店も開いていないのならば無理やり起こすこともないか。


 ー1時間後ー


 外から人の声が聞こえ始めた。

 このぐらいの時間から店が開くのは本当らしい。


「クロー。

 1時間たったぞー。」


「ん〜。

 はわゎゎ~。

 おはよー。」


 聞くだけで眠くなるような気が抜けた声だ。


「ちょっと顔洗ってくるー。」


 ああ、ベットに座って呆けていたから忘れていた。


 部屋から出てトイレへ向かう。

 顔を洗って気づく。

「あ、歯ブラシないや。」


 僕が異世界(ここ)に来た時に持っていた道具はダガーだけだ。

 こういうと物騒だな。


「あ、トオルもまだだったんだ。」


 女子トイレから出てきたクロとばったりあった。

 そのまま部屋へ向かう。



「クロはなにか武器持ってるの?」


「一応ナイフを。

 あとは無属性能力(ノーマルスキル)をいくつかと属性能力(エレメントスキル)を2つかな。」


「クロの属性(エレメント)は何なの?」


風属性(ウィンドエレメント)だよ。」


 なんだろう。

 髪色やローブの色、口調から全く予想できなかった。


「各属性(エレメント)によって使えるスキルの種類みたいのは大体決まってるのか?」


「うん、そうだね。

 説明しようか?」


「お願いするよ。」


「じゃあ説明するね。


 火属性(フレイムエレメント)は熱量関係のスキル。

 火を出したり操ったり、逆に熱を奪ったり。

 あとはスキルの威力を底上げしたりもできるよ。


 水属性(ウォーターエレメント)は治癒のスキルだね。

 あとはやっぱり水を出したり操ったりって感じかな。


 風属性(ウィンドエレメント)は風を操ったり自分の移動速度を上げたり。

 風を操れるからかまいたちを出すことも出来るよ!


 土属性(ランドエレメント)は地面を隆起させたり陥没させたりできる。

 あとは防御スキルだとか、上級のスキルだと重力を操ったり地震を起こしたりできるね。


 光属性(ライトエレメント)は味方と自分に有利なバフをかけることが出来る。

 火属性(フレイムエレメント)の威力上昇。

 風属性(ウィンドエレメント)の移動速度上昇。

 土属性(ランドエレメント)の防御力上昇。

 これを自分含め味方にかけることが出来る。

 あとは対アンデッドスキルが使えるね。

 あとは闇属性(ダークエレメント)のデバフを無効化したりもできるよ。


 闇属性(ダークエレメント)は敵に幻覚を見せたりデバフをかけたりできる。

 スキルを使う人によっては相手をものすごい不利にできるからかなり厄介な属性(エレメント)になってるね。

 あとは光属性(ライトエレメント)のバフを無効化しちゃったりもするね。」


 各属性(エレメント)にはそれぞれの特徴があるのか。

 バフは各属性にあるっぽいけど、光属性(ライトエレメント)はほとんどのバフが使える上に味方にもかけることが出来るのか。

 でも治癒は水属性(ウォーターエレメント)専用と。

 闇属性(ダークエレメント)は厄介そうだなあ。

 問答無用で不利な状況にされる。


「とりあえず道具屋に行こうか。

 トオルには物がなさすぎるからね。

 せめてリュックと水筒は買ってあげるよ。

 それ以外はクエストが終わったら買えばいいよ。」


「ごめんね。

 色々払わせて。」


「いいよ。

 トオルは何も持ってないんだし。

 僕がいないと今頃どうなってたんだろうね?」


「多分野宿してたと思うね。

 ありがとうクロ。」


「本当だよ!

 じゃあ行こうか。」


 僕らは道具屋でリュックと水筒を買ったあと、ギルドへ向かった。



 ギルドのクエストボードの前で悩む2人。

 僕とクロだ。


「どのクエストにしようか。

 やっぱりこのスライム討伐が1番簡単そうなんだけど。」


「簡単だけど倒した後ベトベトするから嫌ー。」


「んー。

 デメリットがそれだけなら受けてみるか。」


「ええー!

 聞いてた?

 ベトベトだよ?

 あいつらの粘液でベトベトなんだよ?

 ねーってば!」


 訴え続けるクロを無視して僕は貼り付けてあった討伐証明書を手に取る。


「すみません。

 このクエスト受けたいんですが。」


 カウンターのお姉さんに渡しに行く。

 この前のエルフっぽいお姉さんだ。


「はい、スライムの討伐ですね。

 1匹につき100カリスの報酬となりますがよろしいでしょうか?」


「はい。

 お願いします。」


「.......トオルのバカ。」


 クロがムスッとしながらこっちを見ている。

 そんなに嫌なのだろうか。


 街を囲む塀には出入口がある。

 見回りみたいな人はいたが特に止められることもなくすんなりと街の外へ出た。

 もしモンスターが街へ入ろうとしたらあの人達が食い止めるのだろうか。


 貰った地図を頼りにスライムの場所へ行く。


 いた。

 大きさはドッチボールぐらいだ。

 そのゼリーみたいな体の中には脳みたいなのが入ってる。

 取り敢えずダガーを構えておく。


「こいつはどう倒せばいいんだ?

 切ってもダメージはあるのか?」


「基本的にモンスターも生き物だから倒し方は変わらないよ。

 スライムは中に見えてる脳を切っちゃえば死んじゃうよ。」


 脳という大切なものを、こんなプルプルの無防備なところに入れといていいのか。

 まあこいつは全身プルプルなんだが。


 そんなことを話していると、いつの間にかスライムが1匹僕の足に乗ってきていた。


「わっ、離れろ!」


 足を思い切り前方に蹴りだしスライムを引き剥がす。

 ブーツを見ると表面が少し溶けていた。


「こいつ触れた部分を溶かすのか。」


「でもそれは意識のある時だけ。

 倒した後の肉体に害はないよ。」


 なるほど。

 今度は1匹こっちに目掛けて飛んできた。


 プルン

 ザクッ


 切りごたえがない肉体のあとにしっかりと残る脳を切る感覚。


 左右に別れたスライムは僕の後ろでベチャッという音を立てながら地面に落ちた。

 残った細かいスライムの肉体が顔にかかる。

 これがクロが嫌ったベトベトか。


「これでいいのか。」


「うんOK。

 その調子でどんどんやろうか。」


 クロはやけくそ気味にスライムを狩っていた。

 僕もやるか。



 30分はたっただろうか。

 あたりのスライムはあらかたやったようだ。

 クロを見るとスライムの粘液と肉片でベトベトだ。


「トオルベトベトだね!」


「クロもだよ。」


「ハハハハ!

 だから言ったのに!

 ベトベトになるって!

 でも楽しかった。

 久々にこうやって人とクエストが出来て。」


「それはよかった。

 さあ、もう帰ろうか。」


「うん。」


 スライムでベトベトのままギルドへ向かった僕達は少し好奇の目で見られていた気がする。


「はい、2人で合計124匹討伐されましたので報酬は12400カリスです。

 どうぞ。」


 そう言って金貨1枚、銀貨2枚、銅貨4枚を渡された。

 んー。この渡し方だと当分できないな。


「すみません。

 この金貨を銀貨10枚に両替できますか?」


「わかりました。

 ...はい、こちら銀貨10枚になります。」


「ありがとうございます。」


 そう言ってギルドを出た。


「はいクロ。

 報酬の半分。

 ありがとう、色々手伝ってくれて。」


「だってトオル知らないことだらけなんだもん。

 ほっといたら勝手に死んじゃいそうで怖いよ。」


「そうだね。」


 さて、この世界に来て初めて仕事をした。

 いや、前世から数えても初めてだ。

 この初給料を何に使おう。

 ...いやもう決まってるな。


「お風呂に行こうか、クロ」


 スライムでベトベトなまま話す2人がそこにはいた。

お金の価値は大体わかってもらえたかな?

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