7:少年は無属性だった
サブタイの始めに「少年は」が入る回数が多いのは目をつぶってください。
生暖かーい目
装備品の確認をした。
冒険者の登録をした。
仲間ができた。
あと1日目にすべきことはなんだろう。
第一今何時だ。
自分の持ち物には時計がなかった。
「なあクロ。
今何時かわかるか?」
するとクロはローブの内側から懐中時計を取り出した。
「んー。今は午後5時ぐらい。」
前世と時間の概念は一緒なのか。
それとも例の「言葉の壁の修正」によってねじ曲げられているのか。
それは置いておいて、午後5時か。
もう探検だのなんだのは言っていられない時間になったな。
「宿を探すk...」
ここまで言ってある事を思い出す。
自分の持ち物の中にお金らしきものが無かったのだ。
ギルドに行った際、カウンターで取引されていたのは確かに貨幣だった。
この世界にお金が無いわけじゃない。
というか冒険者登録にお金がかからなかったのはとても幸運だった。
でなければ積んでいた。
「...なあ、クロ。
今日の宿代払えるか?」
「え、トオル持ってないの?」
「恥ずかしながら。」
あの女神、高そうなダガーはくれるのにお金は用意してくれないのか。
「仕方ないなぁ。
今日のところは僕が払おう!」
すごい胸を張っている。
でもクロがお金を持っていて助かった。
「ありがとう。
助かったよ。
もう少しで野宿になる所だった。」
「本当、トオルは変わってるねえ。」
僕らは宿に向かった。
しばらくクロについていくと宿屋へたどり着いた。
ギィー。
古い戸が開く。
あまり新しそうな場所ではない。
中には受付らしきところがあり、ガタイのいいおっちゃんが座っていた。
「おじさん!
ふたり部屋をひとつ頂戴!」
「なんだ、おふたりさん。
付き合ってんのか。
貸してもいいけど変なことはするなよ〜。」
「ば、そんなんじゃねーよ!」
「ハハハ!わかったよ!
ふたり部屋1泊2000カリスだ。」
ん?
「ちょっと待ってねー。
はいおじさん。
2000カリス丁度。」
「はい確かに。
これが部屋の鍵だ。
2階のすぐ上がった所に部屋があるよ。」
「おじさんありがとーう。」
鍵を持って2階にいくクロについて行く。
バタン
「うぇ。
やっぱここボロいなあ」
そこにはベットが2個とテーブルが1つ。
お世辞でも綺麗とは言いづらかった。
それよりも気になることがあった。
「なあ、この国のお金の単位はカリスなのか?」
「そうだよ。
この国は女神カリスを信仰してるからね。」
スキルの説明にも出てきた女神というのはあのカリスのことだったのか。
スキルといえば
「この世界でスキルを手に入れられるのは欠落者だけなのか?」
「違うよ。
トオルは知らないことだらけなんだね。」
「そうだね。
記憶が飛んでるのかな。」
転生者だからとは流石に言えない
「いい?
この世にはスキルが3種類あるの。
1、欠落者が持てる修正能力
これはその人固有のもので、似たようなものはあれど同じスキルはないの。
ただし、修正能力を目的としてわざと欠落者になる行為は認められていない。
もし欠落者になっても修正能力が得られない。
2、属性能力
人は生まれつき属性が決まっているの。
属性は火、水、風、土、光、闇の5つがある。
それぞれに特有のスキルがあって、その属性ならではのスキルが使えるの。
ほかの属性のスキルを使えるのはごく一部の人だけ。
3、無属性能力
これは覚えられれば誰でも使えるスキルのこと。
単純なものから高度なものまであるけど、どれだけ高度な無属性能力も鍛錬された属性能力には適わないといわれているの。
でも覚えておいて損は無いね。
これがこの世に存在するスキルの種類。」
なるほど。
スキルの種類は一つだけじゃ無いのか。
じゃあ待てよ。
「その修正能力と属性能力と無属性能力を同時に取得する事は可能なのか?」
「出来るよ。
スキルによっては組み合わせたりする人もいるよ。」
「そうなのか。
便利なものだな。」
そうなると僕は少し不利かもな。
女神は僕に「スキルを取得するための器がない」といった。
つまり僕は『感情の器』に追加される感情以外使えないというとか。
(ちょっとトオルの属性覗いちゃお)
「あれ?
トオルに属性がない?
なんで?」
「あ、勝手に人のステータス見たな。」
「いやー、ちょっと気になっちゃって」
やはりか。
僕には属性がなかった。
「珍しいねー!
無属性だなんて!
まあでも修正能力自体が未完成のトオルは属性能力なんて目じゃないくらいの可能性を秘めてるんだし。
...やっぱり面白いな!トオルは!」
まあ、スキル関係はかなり特殊なんだろう。
そういう観点では面白いかもしれない。
僕自身はそうでもないが。
「そういえば、なんで『真実の目』があるのに名前を聞いてきたりしたんだ?
ステータスが見れるなら名前も見れるだろう。」
「んー。
なんかね、初めてトオルに会ったときうまくステータスが見れなかったの。
こう、なんかぼやけてて。
話していくうちにそれはだんだんクリアになってったんだ。
他の人はこんなことないんだけどね。
これもトオルに話しかけた原因の一つかな。」
「変わったこともあるものだね。」
多分僕がこの世界に来て名前を刻んだばかりだからだろう。
世界が僕を認識するのに少し時間がかかったのかもしれない。
何しろ「変わっている」のだから。
スキルのことについて話した後、近くの食事屋で晩飯を済ませた。
ギルドのような酒場は僕の年齢で行くべきではない。
最もこの世界に酒の年齢制限があるのかは知らないが。
またもやクロに支払わせてしまったことに少し罪悪感を抱きながらご飯を食べる。
ピラフのようなものだった。
口に合うか心配だったが絶品だった。
「うまいな。」
「うんまーいこれ!」
クロはテンションが上がっていた。
宿屋に帰るときにはすっかり夜も更けていた。
「明日は装備の確認をして、それからもし初心者でも行けそうなクエストがあれば行ってみるか。」
「いいね。
久々だなぁ、そういうことするの。
じゃあおやすみー。」
「おやすみ。」
こうして異世界生活1日目が終了した。
スキル説明回