14:ミスリルは凄かった
ジー(・ω・。)
のどかな昼下がり。
良い天気だと窓の外を見て思う。
のんびりと紅茶を飲み過ごしているとふと気になった。
「なあクロ。」
「んー?」
「このダガーは確かミスリル製だっけ?」
そっとダガーを抜く。
刃渡りは20センチ程だ。
「ん、そういえばチンピラがそう言ってたね。」
「!?
今なんと言った?
ミスリル製のダガーだと?」
そう勢いよく聞いてきたのはイグナスだ。
「多分ね。
あ、クロの真実の目で見れないか?」
「そうか、よいしょっと。」
ジー(・ω・。)
「うん、間違いないね。
本物のミスリルだ。」
「はぁ...はぁ...
本物のミスリルが目の前に...」
なんだなんだ。
「まあミスリルは珍しいしね。
それに魔力の伝導率がかなり高いからなぁ。
イグナスが食いつくのも無理はないって感じかな。」
「なあトオル。
見るだけでも...いや触るだけでも!」
なんでそこでランクをあげた。
「いいよ触っても。
でも刃物だから気をつけてね。
はい。」
「本当か?
おおぅ...これが本物の輝き...!
なんと尊い...。」
なんか拝み始めたぞ。
「そんなに凄いものなのか。
あと多分女神の加護もついてる。
ヒルトの部分にそう書いてある。」
「な!?
ミスリルで出来ているだけではなく女神の加護まで...
トオル...お前は何なのだ!
こんなに物凄いもの持っているとはぁー!」
頬擦りし始めた。
頬を切らなければいいが。
「女神の加護までついているんだ。
ますます凄いダガーだね。
どんな加護なの?」
「ん?
書いてある文字からすると、刃が欠けることも朽ちることも無くなるってやつかな。」
「ふーん。
女神直々に不朽の加護をつけたミスリル製のダガーか...。
いくらで売れるんだろ。」
「おい。」
「冗談だよ冗談!
トオルは冗談も通じないの?」
元々そういうノリは得意じゃないが、あの目は本気だった。
注意しよ。
「そういえば魔力の伝導率がどうこう言ってたけど、それが高いとどうなるんだ?」
「トオルがチンピラに突っ込んだ時、ダガーが赤く光ったでしょ?
あれはトオルの火属性の力がミスリルに伝わったからなんだよ。
伝導率が高いと力が伝わってエンチャント効果が現れる。
武器の強化をその場で瞬間的に出来るんだ。
その上不朽の加護が付いてるとなると...
いったいどれくらいの値段で...」
本気の目だ。
オッドアイが悪い光り方をしている。
「ふふふふふ、もう我慢出来ない!
火創造!」
ボゥ
「わあ!
イグナス何やってんの!」
わあ。
ダガーの刀身が燃えてる。
「早く消して!
この家燃えるから!」
「はははははは!」
自分の家が心配ではないのだろうか。
もしかして火に耐えられるようになってる?
...いや、今ぶっ飛んでるだけか。
ー数分後ー
「いやー、エンチャントの話を聞いたら我慢出来なくなって。
すまなかった。」
「でも凄かったな。
僕の時は光っただけだったのに。」
「トオルの時はただ魔力を込めただけだったからね。
さっきのイグナスみたいにスキルを直接込めることも出来るんだ。」
スキルを刀身にか。
「それじゃ、モンスターに刺した後にスキルを込めれば内側から発動できるってことか?」
「そうだね。
さっきの火創造で燃やしたり奪炎熱で熱を奪ったり。
戦術が広がるね。」
内側から奪炎熱か。
その発想はなかったな。
というかエグイなそれ。
「私としては内側から炎爆発がおすすめなのだが」
なんだか不穏なスキル名が聞こえたが。
というかもう一人称「私」なんだね。
「炎爆発?
上級の火属性スキル?」
「違うぞ?
小爆発と火創造の複合魔法だ。
トオルもすぐに習得できる魔法だぞ。」
複合スキルか...
「んー、強そうだし覚えてみようかなー」
「じゃあ明日だ!
明日覚えよう!」
「え、あ、うん。」
押された。
ー翌日ー
「小爆発に火創造をまとわせるイメージで。
炎爆発!」
ヒュー
ボフゥン!
「おぉう...」
小爆発が起こった後に炎がボォンと広がる感じ。
火炎瓶のようだ。
『スキル『炎爆発』を獲得しました』
これの習得は簡単だった。
既に覚えているスキルを組み合わせるだけで良いのだ。
新たに感覚を覚える必要はなし。
ただ、ものによってはかなり難しい複合スキルもあるそうだ。
今回の仕組みが単純だっただけだろう。
それでも役に立つ。
ただ...
「ふふ、どんどん火属性の魔法にハマってきてますね。
ふふふふふ...」
怖いぞこの人。
そのうち怪しい宗教にでも入らされるのではないだろうか。
断固拒否だ。
「しかしスキル覚える度に付き合わせてごめんね。」
「いや、私としては全然構わないぞ。
寧ろ火属性の魔法にどんどんハマってくれればそれでいいのだが...
まあ人から教わるのが一番早いからな。」
「ん?
人から教わらない方法もあるのか?」
「ああ、イメージや仕組みを書いてある本を読んで覚える人もいるな。
実際にスキルを見る訳では無いからやはり人から教わるのが一番だと思うがな。」
「なるほどね。」
教科書みたいなのがあるのか。
てっきり魔道書みたいなのがあると...
「あとは魔道書とかか。」
あるのかよ。
「読むとどうなるの?」
「すべての工程をすっ飛ばして魔法を即習得できる。」
チートアイテム?
「まあ一度読むと燃えて無くなるがな。
しかも自分の魔力にあってないものを習得しても使えないしな。
やっぱり地道に覚えるのが一番だ。」
「そうだね。」
高いんだろうなあ魔道書。
さて、今から家に帰るのだが...
寝てたから置いてきたクロ怒ってないかな?
もちろん怒ってました。