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プロローグ

 こんにちは。こんばんはかな? おはようございますかもですね♪


 なんにせよ、数ある小説の中からこのページを開いていただいた事に感謝致します♪


 一部は2000文字弱で構成してありますので4分くらいの読了時間だと思います。


  昨日、関東地方の梅雨明けが宣言され、私の大好きな夏がやって来た。


 いかにも夏らしい陽射しが何者にも遮られることなく、燦々とテニスコートに舞い落ちてくる。


  遠くに見える山々は数日前まで幾度となくシャワーを浴びてきたせいか、青々と繁り生き生きとそびえ立っていた。


 わたしは八月二日から行われるテニスのインターハイに向け、千葉県の外房、銚子で合宿を行っている。今日は合宿の最終日である。


 顧問の先生にくわえ、無償で指導してくれる元プロ選手のコーチ、英語の講師をしてくれているアメリカ人のメアリーなどテニス経験のある六人の指導者に囲まれ汗を流している。


 高校三年生のわたしにとって、最後の大会である。


挿絵(By みてみん)


 わたしはパパの影響で物心のついたころには、既にラケットを握っていた。


 昔、世界ランク30位まで昇ったパパは二十五歳の時に足を痛め引退したらしく、娘のわたしにスパルタ教育をしていたのだ。パパも合宿に同行する予定であったが仕事の都合で来ることができなくなっってしまったのだ。


 テニスは好きだったので、スパルタ教育も全く苦痛ではなかった。

 パパのことも大好きだったので、わたしは一緒にテニスを楽しんでいた。


 そして高校生になり、県大会の団体戦で優勝を収めインターハイに出られるまでになったのだ。


「凛、お疲れ様」


 そうわたしに声を掛けてきたのは親友であり、チームメイトの田辺愛――ショートヘアの似合う明るい女の子である。


「愛、お疲れー」


 午前中の練習を終え、わたし達は宿舎に戻る。


 愛もわたしもスポーツタオルでほとばしる汗を拭くけれど、次から次へと流れでる。

 わたしはスポーツドリンクを喉の奥深くへ流し込んだ。


「凛、その太ももにあるアザ、どうしたの?」


 愛は太もものアザを目ざとく見つけわたしに問いかけた。うっかりすると気づかない程の色の薄いアザである。


「ああ、これね。どこかで打った覚えはないんだけど、朝起きたらあおたんになってて……」


「まあ、あんたもおっちょこちょいだからね! 知らない間にテーブルかなんかで打ったんでしょ」


「多分、そうね」


 わたしは苦笑いで応えた。


 午後の練習が始まった頃、わたしたちの影はようやく歩き始めた赤子のように小さくなっていた。

 空を見上げても、その赤子を消してくれそうな白い綿(わた)はない。


 午後二時、メアリーの叫び声がコートに響いた。


Watch out(あぶない) !」


 予想外の方向からボールが飛んできたのだ。


 そしてそのボールは、わたしの鼻でポンと大きく跳ねた。


Are you OK(だいじょうぶ) ?」


 ボールが当たる前メアリーが叫んだ「ウォッチャウ」のように聞こえた声の意味は分からなかったけれど、「アーユーOK?」は理解できた。


「Yes. I'm OK.」


 すると、鼻水がたらりと落ちてくる感覚がすると同時に、わたしは慌てて鼻を覆った。

 手を放すと、そこには真っ赤な血が付いていた。


 木陰のベンチに座り、ティッシュを鼻にあてがいながら血が止まるのを待っていたのだけれど、なかなか止まってはくれなかった。


 その後、わたしは貧血を起こしてしまった。メアリーにおんぶされ宿舎に戻されたのだ。




 そして厳しい合宿も終わり、一人でわたしを待つパパの元に帰っていった。


 千葉県浦安市。重い荷物を抱えながら地下鉄東西線の浦安駅を降りた。ロータリーで待っていてくれたパパはわたしを見つけると大きく手を振った。


 ママはわたしの物心が付くか付かないか、その頃病気で亡くなってしまったらしい。ママの事はなんとなく覚えているけれど、はっきりとは思い出せない。


 浦安駅から車で十分。パパが若い頃、ATP1000を二度制した賞金で買った我が家に着いた。


「凛、大丈夫なのか? 先生から電話もらってびっくりしたよ」


「うん。大丈夫。インターハイ前に、弱音吐いていられ……」


 ――バタン。


 わたしは倒れてしまった。大好きなパパを見て安心したのか、意識がすうっと遠のいていく。


「凛、凛、大丈夫か? 凛」


 今でも筋肉隆々なパパはわたしを軽々と抱き上げ、ベッドに運んでくれた。

 しばらく遠い意識の中をさまよっていたわたしは、けたたましい救急車の音で意識を取り戻した。

 救急隊員がわたしをタンカに乗せる。


「パパ」

 わたしがそう呟くと、


「パパがついてるからな。安心しろ」

 パパはそう言って、わたしの右手を握りしめた。

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