7:このキモチ
「そ……うんなんだ。」
あたしの口から出た言葉は、あたしの声なのかと疑うくらいに掠れていて弱々しかった。
なんでこんな声しか出ないのだろう。
明らかにあたしは動揺している。
「…やっぱ、そうなんじゃん。」
盛大なタメ息と共に吐き出された由佳の言葉。
その顔は苦笑いなのか、呆れ顔なのか、複雑な表情をしていた。
「……は?何が?」
考えるよりも早く口をついて出てきた言葉。
由佳が何を言っているのか理解できない。
何が、そうなの??
混乱しているあたしをよそに、やけに納得した顔でいる由佳が言った。
「だーかーら!」
由佳は、あたしに分かりやすく、一つ一つ教え込むような口調で説明し始めた。
――……幼稚園児か、あたしは。
まだ善悪の分別も出来ない幼稚園児に、先生が一つ一つ宥めるように話しかけている様子が鮮明に浮かんだ。
由佳が大人なのか、あたしが子供なのか。
我ながら理解能力が皆無といっていいほど無い自分は凄いと思う。
「だからね、あんたはなんやかんやで圭太クンのことが好きなんじゃんってこと。」
「・・・・・・。」
「ちょ、洵。話についてきてる??」
それこそ完全なる理解不能。
何、あたしが『クソ圭太』のことが好きだってこと?
なんで。
どうして?
あたしが、誰を??
ぐるぐるとあたしの中で思考が巡る。
ただぼーっと立っているだけなのに、頭の中は修羅場っていっていいくらいに物凄いスピードで思考が駆け巡っていて。
全くもって理解ができない。
アイツに抱いている気持ちが、恋なのか。
それとも他の別の気持ちなのか。
「洵。」
由佳に今まで忙しく巡っていた思考がピタリと止まって、急に現実味を感じた。
「あんたはさ、いろいろ辛い思いをしてきたと思うけどさ。」
「・・・うん。」
黙って頷くことが精一杯だ。
他人に気を使ってもらうことは好きではない。
むしろ嫌いなくらいで。
「もう何も心配しなくていいんだからね?」
「……うん。」
「私だっているし、あんたの家族も。周りの人も。」
「……うん。」
「もう大丈夫だからね。」
一つ一つの言葉を由佳は、あたしに優しく語りかけた。
あたしを心配をしてくれているのが、表情からも凄く伝わってきて、申し訳ない気持ちで一杯になる。
ごめんね。由佳。
何を言えなくなってしまったあたしを気遣ってか、由佳は無言でお弁当食べ始めた。
由佳のそれとない気遣いに感謝しながら、あたしもお弁当箱を開けた。
すると蓋を明けたお弁当には、あたしの大好きなコロッケと炒め物が入っていて。
あたしは何も返せないのに誰からも気を遣ってもらっている気がして余計悲しさがこみ上げてきた。
――…思い出すのは、あの記憶。
大好きだったあなたと、空回りばかりしていたあたしの過去。
……本当に更新が遅くなってすみません!!!
言い訳を言うつもりはありませんが、ここしばらくいろいろありまして、なかなか更新できませんでした;;
ゆっくりですが、また少しずつ更新していく予定ですので、完結までお付き合いいただければ、と思います。