4:問い。
彼が生徒会室から出てくると、一緒に昇降口までいこうか。と誘われた。
断る理由のないあたしは、控えめに彼の後ろをついて歩く。
まるで、お母さんと子供みたいだ。
そう思ったけど、口にしないでおいた。
2階に下りる途中の階段で彼が、あたしを方を向いてこう言った。
「佐野さんって呼ぶとなんか他人みたいだから、まことって呼んでいい?」
あたしはもともと他人なのに、と思いながら頷く。
きっと今のあたしの顔はニヤけているのかも知れない。
それを確認してか、また彼は口を開く。
「まことってどういう字?」
「さんずいに、旬って言う字で洵。」
「へぇー。いい名前じゃん。」
「そうかな?」
会話が途切れる。
雨が煩いおかげで、そんなに気まずくはならなかったけど。
少しの沈黙が続いた後、彼はまた前を向いて歩き始めた。
ちょうど今彼が階段を全て下り終わって、昇降口まであと少しのところに居る。
それを見計らって、今度はあたしから声をかける。
「ねぇ。」
「・・・ん?」
「さっきのコト聞いていい?」
聞いていいのか、聞いちゃいけないのか、そんなことは分からない。どうでもいい。
ただ単純に、会話を終わらせたくなかっただけで。
しばらく彼は、黙ってあたしの前を歩いていた。
昇降口まで来たところで、足が止まって彼があたしの方に振り返る。
「なに?」
聞いていいということなのだろうか。
分からなかったけれど、あたしは思い切って聞くことにした。
「さっきの子に告白されて、断ったんだよね?」
答えはない。
けれど、彼の顔がそうだ、と言っていた。
「どうして??」
これは、至って素朴な疑問だと思う。
告白してた子は、うちの学校でも、顔よし、性格よし、で有名な子だったから。
「メンドクサイから。」
どこか素っ気ない口調で彼は言う。
彼の瞳は確かにあたしを見ていたけれど、頭では他の何かを考えているようだった。
簡潔に。
でも何を隠してる?
どう頑張ったって、その答えをあたしが知る余地はない。
「じゃあさ、洵は好きな人いないの?」
あたしが言葉に詰まっていると、今度はあたしが質問された。
「いないけど。」
口からでたのは、紛れもない本心。
答えに迷う必要はなかった。
「どうして?」
きっと彼にとっては素朴な疑問。
けれどあたしが、その答えにつまったのは、言うまでもない。
更新が遅くて申し訳ないです!!
もっと早く更新できたらいいのですが;;