3:居心地
所々茶色みがかった黒髪
ほんのり焼けた小麦色の肌
スラリと伸びた手足
その全てが『クソ圭太』を肯定していた。
「佐野さんか・・・・。」
そう言って頭を掻きむしりながら、彼はこちらにやってきた。
まるで見られたくなかった、と言っているように。
野村 圭太。
別に成績だって悪くはないと思う。
明るくて、誰に対しても優しいと評判の彼。
それゆえに、好きになってしまう子も多いのだろうけれど。
誰にでも、平等に、同じだけの優しさ。
けれどあたしは、その優しさが苦手だった。
「ほら。」
そうやってあたしに手を貸してくれる。
座っていたあたしをゆっくりと立ち上がらせてくれて。
だけどそれも、平等な優しさ。
当たり前のように与えてくれる優しさ。
「ありがとう。」
なのに、嫌気がしなかった。
あたしが立ち上がると、アイツはもうすでにダンボールを2つ抱えていた。
ダンボールに書いてあった「生徒会室」の文字をみてか、どんどん足は生徒会室へ進んでいってしまう。
いとも軽そうに。
「あたしが持つよ。」なんて言ったって、どうせ聞いてくれないだろうと思って、
口から出そうになった言葉を飲み込んで、後ろをついて行く。
なんて勝手なヤツなんだ、と心から思う。
苦手なヤツ。
ムカつくヤツ。
だけど、少しだけ
コイツの優しさは、暖かくて、作り物じゃなくて、嬉しいと思った。
もっと。
もっと。
コイツの作る空気の中にいてみたいと思った。