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1:プロローグ
彼女は、彼を好きだと言う。
彼は、彼女を好きだと言う。
夢のようで当たり前のコトが、どうしても信じられなくて、
好きなったって辛いだけで、
どうしたって何も変わらなくて、
そんな自分が大嫌いだった。
誰かが「恋に落ちたら負け」って言ったけど、そのほうがよっぽどいい。
恋をしないのは、負けたくないからじゃない。
ただ単純に怖いだけ。
誰かに思われていない現実を知るのが、
どこか軽蔑している目で見られるのが。
もし誰かが、
あたしのことは愛してくれているのならば、
少しだけ抱きしめて
あたしが恋に落ちなくなるまで。