入学式
俺が、席についてすぐに式は始まった。
校長の長い話を聞き、欠伸を出るのを押さえなが座っていた。
「続きまして、生徒会のお言葉です。生徒会会長よろしくお願いいたします。」
と心地よいアナウンスが入り、俺は眠りに着きそうになったが、その人を見て眠気はどこかに行ってしまった。
「生徒会会長の空野舞美です。新入生の皆さんには…」
壇上で話している、艶やかな長い黒髪と全てが見えているような瞳、人形や陶磁器のように白い肌、少女の面影が微かに残る、その人に目が離せなかった。
血のように赤く何処か妖艶な唇は、一言話すごとに艶かしさを増し、美しい色白の四肢は、動くたび、儚さと凛々しさを持ち合わせ、風に揺れる花を思い出させた。
周りの連中も、ざわざわとしていて、「綺麗だ」とか「彼氏いるのかな~」「超タイプ」などの下世話な話を男女問わず話している。校長の話の時とは大違いだ。
「これで生徒会からの話を終わります。」そんな、下らない事を考えていたらいつの間にか生徒会会長の話は終わっていた。
生徒会会長が壇上から降りたとき、俺の方を見て微笑んだ気がした。
その後何事もなく、入学式は終わった。いや、終わっていた。
生徒会会長の話のあと俺は、気を失った様に眠ってしまったのだ。
そして、俺は、変な夢を見た。どちらかと言えば、悪夢に近かった。
生徒会会長が自分よりも一回りも二回りも大きい、うねうねと動く黒い化け物に殺されたのだった、そして、その化け物は、俺に標的を変え近づいてきた。そこで感じたのは、恐怖よりも、嫌悪や軽蔑のような負の感情だった。
まるで、気持ち悪い虫を見たときや、蛆虫が這い、銀蝿が煩く飛んでいるような汚いトイレの掃除当番を与えられた時のような、気分の悪くなる、嫌気が差すような、感覚だった。
その感覚が嫌で、目が覚めた時には、入学式は終わっていたのであった。