森の中
「……、っくぁぁ。 ん?」
寝ていた俺を日の光が強く照らす御陰で目が覚める
体を起こすために手を付き、力を入れたところで違和感に
いつもの布団じゃない
視界を埋めるのは、壁や机。日用品等では無く
大自然
柔らかな土壌から強く逞しい背の高い樹が辺りに生えていて
あぁ、森なんだなぁ
なんて、軽い現実逃避をするのは致し方が無いかも知れない
夢かも知れないし。とりあえず歩き回るのが吉の筈
「うっわ……、水が澄んでる」
殆ど歩かずに辿り付いた所には、
像が揺れる事で漸く視認出来る程透明な湖で。
俺の周りでは鳥達が嘴を付け水を飲んでいる
飲める……、よな?
「つめた……」
両手を水に入れすくい上げる
真夏にキンキンに冷えたジュースを掴んだ時のように、
それぐらい冷たく感じる程の水温だった
何故かこの水を眺めていると喉が渇いてくる
鼓動が早くなり水を求めていることが自分でも分かる
なんでこんなに……、まぁいいか
不自然なまでの欲に最早疑念を抱くことは出来なかった
再度水をすくい上げ、こぼさないように口元へ運んでいき
「それを飲むなぁああああああ!!!」
女性の叫び声と共に右側頭部に強い衝撃が走る
視界が一瞬暗転し煌めいたかと思えば視界が一気に流れていく
吹き飛ばされたんだ
客観的に考えながら俺は離れた所に在った樹に衝突した
全身を突き抜ける骨が砕けたかと思うほどの痛み
呼吸がままならない
畜生、俺が何をしたんだ
水を飲もうとしていたら、女性に吹き飛ばされて
……そう言えば、綺麗な声だったな
つまりワンチャン有る!!
地面に倒れ伏している俺の目の前に女性の足が映る
細く、綺麗な肌
それで居てうっすら付いていることが分かる筋肉
これは美人だ
本能で感じ取った俺は震える体に力を入れ顔を上げた
凡そ190cmを越える背丈
短い所では済まされない程刈られた髪の毛
そして、樹よりも太い筋肉の固まりな腕
「うおぉぉぉぉ!!!!」
高速で振られた女の腕が俺の背中へと吸い込まれる動きで。
直後、地面とぶつかる勢いが俺を跳ね上げ女性の顔まで持ち上がり。
豚のような鼻
ギラギラとした双眸
傷だらけの顔
オークっぽい豚人間が立っていた
最後に見たのは俺の顔に近付いてくる女の膝だった