episode 7 真実と幻想と…(前編)
エピソード7 真実と幻想とが完成しました。
今回は少しストーリーがややこしいかもしれませんが
頑張ってついて来てくれれば嬉しいです!!
それと今回も少し短くなってます。
流れ的にここで切っておいた方がいいと思いました。
では、 どうぞ!!
ランキングの方もよろしくお願いします。
−ディルウィンクエイス−
「ジェノ!!」
フォースエッジを肩に担ぎサングラス越しに
オークを睨みつける。
それは間違いなくジェノだった。
そして空いている方の手をリルティに差し伸べた。
「ったく、 てめぇはスペル専門だろうが!
なんで突っ込んで行ったんだよ、 ばかが!!」
「ご、 ごめん…」
「謝るんだったら、 初めからするんじゃねぇよ」
「もぉ〜、 そんなに怒んなくてもいいじゃんよぉ…」
「グェァオォォォン!!!」
腕が切断され痛みを訴えるオーク。
そのままジェノに向かって突進していく。
しかしジェノは目を瞑ったまま一向に動かない。
「グルルルアァァ!!!」
空高く飛びあがりボディプレスで
ジェノを押し潰そうとしている。
オークの影がジェノを覆うがそれでもジェノは
まだ身動き一つとらない。
そして巨体が大地に落ちた。
地震の様な音と揺れに砂埃が舞う。
「ジェノー!」
砂埃が目に入らないように
手でかばいながらジェノの姿を探すリルティ。
オークがゆっくりと起き上がっていくがジェノの姿は無い。
「こっちだ、 イノシシ野郎」
声がした方向に目を向けると
ジェノはまさに今、 斧を振り下ろす瞬間だった。
オークはバターを切るようにスルっと
真っ二つに分かれてしまった。
「リルティー!!」
アッシュが駆け付けた。
「……」
「……」
リルティは2人がもめ事を起こす前に2人の間に入った。
「わかってる? 今は任務中だよ!?」
アッシュとジェノの顔を行ったり来たり
表情に変化がないか確かめながら話す。
そのリルティの行動も2人の視界には入っていない。
「わかってるよリルティ…」
「ふん!」
2人はお互いの顔を見ながらリルティに返答した。
「さぁマスターを探さないと…。
2人ともスキャンしてマスターの魔力を探して!
アッシュは北、 あたしは南、 ジェノは東と西ね!」
リルティの話も途中に勝手に探し始めたジェノ。
崩れかけの家屋の屋根に飛び上がり辺りの
様子を探っている。
「もぉジェノ〜チームで動かないとダメじゃぁん…」
するとアッシュが大声で2人に知らせる。
「こっちだ! 見つけたぞ!!」
リルティがアッシュの元へ向かう。
その後をジェノがついて行く。
「マーディン様の魔力が街の外から感じる…。
リルティ、 ここから北は何があるんだ?」
「えーと、 確か…」
「エルフが住む、 迷いの森。」
「…ジェノ知ってるのか?」
「当然だ。 俺様が……」
「え? 今何て言ったの!? 聞こえないよー」
「てめぇの耳が悪いんだよ。
それよりマスターはその森にいるはずだ」
「でもなんでマーディン様はそんな森にいるんだろう……」
「どうする? ティナさんに知らせてからにしよっか」
「ばかが!!
マスターに何かあってからじゃおせぇんだよ!!」
「でもぉ! 魔物をやっつけるのが
あたし達の任務じゃん!?」
「(どうする…。
こんな時ディックならどうするだろう…)」
アッシュが立っている所から森の頭の部分が
顔を出している。
それを見ながら次の行動を考える。
するとアッシュを飛び越す影が見えた。
「てめぇらはいつまでもそこでのんびりとしてろ!!」
そのまま森に走って行ったジェノ。
「アッシュ、 どうする?」
「ジェノを1人で行かせる訳にはいかないだろ」
「でも任務外じゃん!?」
「……」
リルティの問いに答えずにジェノの後を追うアッシュ。
リルティは1人取り残されてしまう。
「あ、 ちょ、 ちょっとぉ〜!
もーどうなっても知らないからねぇ!!」
森の入口に来たアッシュ。
ジェノの気配がここから途絶えてしまっていた。
「どう言う事だ!? ジェノの魔力が消えた!?」
もう一度スキャンを試みるアッシュ。
緑に滲んだ瞳に森が映る。
「だめだ見つからない…。
そう言えばマーディン様の魔力も感じないな…」
一瞬ためらいはしたが森に入る事にしたアッシュ。
深く暗い道を駆けて行った。
一方そのころリルティは…
「たぁっ! やぁっ!! はぁぁぁ!!!」
ブラックバットの群れと戦っていた。
パンチ、 蹴りやスペルを駆使して一通り片づけたリルティ。
「…ピギャ…フ…」
「へぁ〜終わったぁ……」
足をハノ字に開きその場にへたれこんだ。
桃色の髪が風になびく、
その隙間から砂埃が流れ
太陽でキラキラと光る。
「ブラックバットは最弱の魔物って言われてるけど、 20匹で一気に
襲ってくるなんてさすがにやばかったぁ……」
座ったまま辺りを見回した。
そこには崩壊した街の姿がリルティの目に映る。
他のエレメンツ達や候補生たちも魔物を
一通り倒し、 今は瓦礫などを片づけていた。
「(街の人たちの姿が見えないけど
上に移したのかな…)」
服を払いながら立つとリルティも手伝いに行った。
森に入ってもうどれくらいになっただろうか。
辺りは深い霧で覆い尽くされアッシュの視界を奪っていた。
その為先に進むペースが少しずつ遅くなり
ほとんど進む事さえ困難な状況へと変わりつつあった。
さっきまでは見えていた道も今では
近くの木もまともに見えない。
白く濁った様な霧の中で孤独感が彼を襲う。
背中に寒気を覚える程不気味だった。
「(ほんとにこんな所にマーディン様がいるのか…!?
もしかしてこの森に入ったのは俺だけで
ジェノもマーディン様も実はもう街にいたりして…)」
考えると鳥肌が全身でざわつく。
この異様な雰囲気にのまれたせいなのか
アッシュは声を上げ始めた。
「ジェノー!!
マーディン様ー!!」
返ってこないとわかっててもなぜか繰り返してしまう。
すると向こうの方で水が跳ねる音が微かに聞こえた。
「水の音か…? 行ってみるか…!」
音がした辺りまでゆっくりと歩き出した。
するとアッシュの瞳に入ったのは大きな泉だった。
木に囲まれた泉以外は霧でわからなくなっていた。
「あれ? 俺、 この場所どこかで…
なんでだ…?」
泉のちょうど真ん中に水の上に
立っている影の様なものが見える。
何度もまばたきしてみたが消えるどころか
ますます鮮明に見え出した。
近づく事もできなくはないがこの霧と得体の
知れない存在に警戒して足が動かない。
「だ、 誰かいるのか!?」
返事は返ってこなかった。
聞こえてくるのは水の音と微かな風の音だけ。
相変わらずまだ影はアッシュの前で揺らいでいる。
仕方なく行って確かめる事にした。
水に浸かると思った以上に冷たかった。
それでも前に向かっていくアッシュ
その表情は少し強張っている。
そして近づくにつれて人の声が聞こえ始めた。
途切れ途切れに聞こえてくる為
何を言ってるのか理解できない。
歩みを止める事は無くアッシュは謎の影に
向かって泳ぎ始める。
「…しゅ……ゅ……あ………」
「!?」
「しゅ…あしゅ……アッ…シュ…」
自分の名前を呼ぶ声が今向かっている
影から聞こえている気がした。
アッシュは急いで泳ぎ始めた。
徐々に人の形が見えてきた。
足、 腰、 水色の髪…
「ま、 マーディン様!?」
影の正体はなんとマーディンだった。
しかし様子がどこかおかしい、
マーディンは水の泡に包まれそこから
出られない状態だった。
アッシュが助けようと泡に触れた瞬間、
電気のような痺れがアッシュの手を襲った。
「いっ!
何だこれは…電流が流れている…」
「を…すい……い…」
「マーディン様!!」
「…を……たす…さ」
「何言ってるかわかりません!!」
「……」
するとマーディンをはさんだ向こうの辺りから誰かが泳いでくる。
だんだんと近づいてきた。 そしてそれがジェノだとわかった。
「ジェノ!!」
「マスター!? …てめぇなんで助けねぇんだよ!?」
ジェノもアッシュと同じ様に泡に触れた。
当然ジェノも同じ結果になった。
「……ってぇ…」
「無理だ、 電流が流れてるんだ。」
「………」
ジェノはフォースエッジを精製した。
手に光が集束していく、 その光が伸びて斧となった。
「そ、 そうか! それならいけるかも。」
「でぁっ! …何!? はぁっ!!」
ジェノの斧でも泡を破る事はできな無かった。
しかしジェノはまだ続けている。
「くそったれ!! だあぁ!
はぁ…はぁはぁ…はぁ………。
こうなったらオーラアックスで……!!」
「オーラアックス!? あの時の技か!?
お前なに考えてるんだよ!! そんな事したらマスターも……」
「ばかが!
マスターが俺様の技でやられる訳ねぇだろうが!?
マスターのシールドで防げるはずだ!!」
「お前…今のマーディン様の状況がわからないのか!!
あの泡は、 マーディン様の魔力を吸収していってるんだぞ!?
すごい速さでな!!」
「な、 なんだと…!?」
ジェノはマーディンとその泡をスキャンしてみた。
マーディンの大量の魔力が滝の様に流れ出してそれが周りの泡に行き渡り
強度を増していっている。
「これは……」
「わかっただろ!?
万が一この泡をお前の技で破れたとしても
マーディン様も巻き添えをくらう可能性があるんだよ!
例えシールドを使ってもな。
今の弱ってるマーディン様をこれ以上
危ない目に合わせるわけにはいかないんだよ!」
「(こ、 こいつ……。
この状況を一目見ただけで見抜いたと言うのか!?)」
「でもこのままじゃマーディン様の命も時間の問題だ…。
くそっ!! 一体どうしたらいいんだ!? 」
―――シュ……アッシュ!!―――
頭に自分を呼ぶ声が聞こえる。
するといきなり力が抜け意識が遠のき始めた。
「……ここは…?」
ゆっくりと瞼を開いたアッシュ。
天井には電気が光を放ち眩しくらい瞳に入ってくる。
よく見るとベッドの上だった、 隣には眠っているジェノがいる。
「た…助かったのか…?」
ベッドから降り何気なく窓から外に目を向けたアッシュ。
そしてそこには驚くべき光景が広がっていた。
なんとそこはディルウィンクエイスだったのだ。
「な、 なんでディルウィンクエイスにいるんだ!?
…そう、 確か迷いの森の中で…」
全然状況が把握できない。
アッシュは隣のジェノを起こす事にした。
「おい! 起きろ!!! ジェノ!!!」
すると近くにいた医療士がアッシュを止めに入った。
「アッシュ君!! 落ち着いて!! ジェノ君はまだ君との戦いで
疲労してるんだ、 寝かせてあげないと。」
「!? 疲労?」
「そうだよ。 それに君も……ってあれ?
あれだけの傷が回復してる。 うそだろ!?
ここに運ばれてまだ10分と経っていないのに……」
「10分!? ど、 どう言う事だ…!?」
そして慌てて部屋のドアを開ける。
「医務……室…! そんな、
昨日に……昨日に戻ってる…
それともあれは夢だったのか…!?」
「アッシュ君、 一応薬出しておくから……って
まだ君も安静にしておかないとー!」
話は全く耳には届いていなかった。
すぐにマスタールームに向かうアッシュ。
「これで…全てがわかる…はず……!!」
勢いよく扉を開けた。
「マーディンさまぁ!!」
「ア、 アッシュ! 貴方、 医務室に運ばれる程重傷だったと聞いていますが……
一体そんなに慌ててどうしたのです?」
「ここにいるって事は…やっぱり夢だったんだな!」
「夢………?」
「あ……い、 いいや何でもないんです!
傷はもう大丈夫なんでぇ!!
し、 失礼しましたぁ〜!!!」
「アッシュ!!? 今日の稽古は……今日はやめておきましょう……
しかし、 一体なんだったのでしょうか…」
そのまま自分の部屋に向かうアッシュ。
「やっぱりあれは夢だったのか……。
それにしてもリアルな夢だったな〜」
頭のパズルもまだ未完成とはいえ、
とりあえず夢と言う事で納得した。
そして自分の部屋に着いた。
「なんかでも不思議だなぁやっぱり夢なのか……?」
そう言うとベッドに入りそのまま眠りについた。
しばらくして、 辺りはすっかり夜になっていた。
アッシュの寝息が聞こえる程静けさに包まれていた。
すると部屋に呼び鈴が鳴り響く。
意識がもうろうとする中玄関の扉を開けた。
「アッシュ。 あ、 やっぱ寝てた? ごめんね起こして」
「別にいいけど…。 それでなんだよ……りるてぃ、 こんな………!?
り、 リルティ!!!?」
大声で叫んだアッシュの声に耳をふさぐリルティ。
「な、 な、 なによ〜!
んもぉ! びっくりするじゃんよ〜!!」
「わ、 悪い。 で、 何だっけ…?」
「…うん、 ちょっといい?」
「(な、 何か夢でも同じ事あった様な…)」
リルティを部屋に入れソファーに座った。
彼女の表情を確認するアッシュやはり夢と
全く同じ表情をしていた。
「(まさかジェノの事とか言い出すんじゃないだろうな)」
「実は、 ジェノの事なんだけど…」
「!?
……い、 今なんて?」
「? ジェノの事で話があるって言ったんだけど……
どうしたの? 顔色わるいじゃん。」
「(一緒だ…。 デジャヴかこれ……)
ジェ、 ジェノの事って?」
「うん、 あいつの言った事気にしなくていいから!
でもわかってあげて欲しいんだ……」
「(夢と全く同じだ…。 会話まで…)」
「あいつはまだ小さい時にまも……」
「魔物に家を襲われて家族をなくしたんだろ?」
「!? な、 なんで知ってるのよ!!?」
「やっぱりそうだ……。
夢が…夢が現実になってる…」
「ア…ッシュ……?」
「……なんなんだこれは…どういう…」
「ちょっと何か変だよアッシュ……」
アッシュはソファーから立ち上がると、
腕を組んで何やら考え出した。
「なぁ、 リルティ……
例えば…1日前とかに戻ったりできる術って
聞いた事あるか?」
「な、 何だよ急にぃ〜」
「いいから!!」
「う〜ん……1日…前?…」
人差指をこめかみに添えて記憶の中を探り出したリルティ。
目は宙をさまよい続け、 口は少し歪んだ。
「……聞…いた事ないなぁ〜
ねぇ、 それがなんなのさぁ〜?」
「い、 いや、 特に何もないんだ。
なんとなく……」
「なんとなくって……。
なんか冷めちゃったな〜 今日はもういいや
アッシュ、 じゃあ帰るね。」
「あ、 あぁ! ……なんか悪い…」
「きっと疲れてるんだね。 じゃあ明日!」
「あぁ! あした…………………
え? 明日…!?」
アッシュは夢の内容をもう一度細かく思い出してみた。
「(明日は…魔物が襲って来て
パニックになるんだったな…
これだけ夢と同じなら明日魔物が
ディルウィンクエイス内で暴れまわってるはず…)」
そう言いながら眠りにつくアッシュ。
そして夜が明けた。
「!? もう朝!?
時計は……よし、 夢の時間よりも早く起きれた」
カーテンを開け外の様子を見るアッシュ。
鳥の鳴き声が聞こえる程
魔物の気配すら感じない。
「静かだな……。 魔物はいつ襲って来るんだ……?」
とりあえず外に出て周りの様子を探りに行くアッシュ。
「あれ…? 別に…異常ないみたいだな……」
気がつくとマスタールームに来ていた。
「(一応やっぱりマーディン様だけには
報告するべきかもな…)」
部屋の前まで来ると扉が少しだけ空いていた。
光が漏れている。
「(でもなんて言えばいいんだ?
夢が現実にな……る…ん…!!!!!?)」
アッシュが中に入ろうとした時だった 部屋の中から話し声が聞こえる。
マーディンと誰かが話をしている。
「……はい。 仕方ありません……
ただ……そう…ですか……
魔物を使って、 街を襲撃させるしかないですね」